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大騒ぎになってしまった

東月錫也はそっと溜め息をついた

あー、どうしよう。このままほっといたら月子と哉太が無理をしてしまう

だけど、今の俺には何もできない・・・

錫也はその騒ぎを、一本の木に座り眺めていた

誰も気づかれないように

いや、誰も気づかなかった















警察まで来ての大騒ぎ

月子と哉太の顔色は真っ青だった

今でもあの部屋の光景が思い浮かぶ

考えたくはなかったが、錫也は今頃どうなっているんだろう

現在警察が錫也を探しており、探してから約六時間

証拠一つも出てこない、最悪の事態だった

荒れていた家具には犯人と思われる諮問は無く、何も見つかっていない

これでは錫也はいつまで経っても見つからない気がする。何も出てこない状態が続けば、きっと警察はこの事件を放棄するだろう

そんなことは絶対に嫌だ。そんなことがならないように・・・

月子は立ち上がった

「おい、月子?」

「私、一人で探してくる」

「お前今何時だと思って――――」

哉太の言葉を無視し、月子は走り出した

「月子!!」

後ろから哉太が自分のことを呼んでいる

ごめんね、哉太。私これ以上待てない

月子は闇の中へ溶けていった











「バーカ・・・」

哉太はそっと溜め息をついた

一人で錫也を探しに行ってしまった月子

俺だってお前と一緒の気持ちなんだ

お前一人で全部やろうとするなんて、ほんとずるいぜ

哉太は月子の後を追った

走り出した










錫也、ねぇ錫也どこにいるの?

月子は走り回っていた

雪で滑りやすい。だけど、今はそれも関係ない

ただ今は幼馴染を探すこと。それだけだったのだが

「あ!」

暗くて分からなかったせいか、自分が進んでいる先が崖だとは思わなかった

止まろうとしたが、雪のせいでブレーキがきかない

このままじゃ落ちる――――!

月子ギュッと目を瞑った

だが、急に誰かが後ろから月子の腕を掴み落ちなくて済んだ。月子は助かったのだ

誰だろう。後ろを振り返る前に相手が喋った

「ほんと、お前は危なっかしいな」

「あ・・・」

涙が出た

自分が探していた人。料理が得意幼馴染の声

「すず、や・・・」

「おいおい、泣くなよ。あ、哉太が来たみたいだぞ?」

「月子ー!」

哉太が呼んでいる。きっと自分がここにいることは気づかないだろう

「哉太ー!私はここー!」

「月子!?」

哉太がこちらに来るのを確認し、錫也を見た

今まで彼はどこにいたのだろう。聞きたいけど、なぜだか聞いてはいけない気がする

「つき・・・錫也!」

「哉太」

錫也がにっこりと微笑む。いつもの彼の笑顔だ

哉太が「心配したんだからな!」と言うと、錫也はただ「ごめん」と言った

「さてと、二人ともこんなところにいたら風邪引くぞ?帰ろうか」

「うん!」

三人で仲良く帰ることにした

錫也が見つかって本当に良かったと思う




だけどその喜びは、ほんの少しの間だけ―――










星月学園の門の前に来た

「ふぅ、やっとついたぜ。よし入ろうぜ」

「門限破ったから先生達に怒られるよねー」

「・・・・」

月子と哉太が話している中、錫也は何も言わなかった

錫也の様子が変だと気づいた二人は錫也を見る

なんだろう、すごく苦しそう

どこかへ行ってしまうように

「錫也平気?」

「・・・あ?うん、大丈夫」

「大丈夫じゃねーだろ」

「・・・・そうかも」

錫也が困ったような笑みをする

本当に苦しそうだ。二人はもっと心配になる

錫也が変なことを言い出した

「・・もう時間みたいだ」

「「え?」」

「何が?」と哉太が言おうとしたとき――――

「おーい!」

天文科二年担任の陽日直獅の声がした

直獅の足音がこちらに向かってくるのがわかる

直獅が二人の目の前に来て「どこいってたんだ!」と怒鳴る

相当心配していたんだろう。二人で謝った

「だけど、錫也は見つかったんですよ!」

「え?」

直獅がびっくりしたような悲しいようなよくわからない表情をした

どうしてそんな表情をしたのか今の二人にはできない

「ほら、後ろに・・・・・あれ、錫也?」

先ほどいた錫也がどこにもいない

辺りを見わたす。どこにもいなかった

こんな雪道なのに物音たてずにどこかいけるのだろうか。あと、直獅は錫也を見ていない

普通は不可能。となると、どうなっているのだろう

「・・・言いたくないんだが」

「陽日先生?」

すごく悲しそうな直獅。何かつらいことでもあったのか

だけど、自分達に言う必要はあることなのか

「東月のことで・・・」

言葉が詰まる。相当言いたくないらしい

月子も気になっていたが、一番気になっていたのは哉太だ。

なんだかすごく嫌な感じがする。聞いてはいけないような、いいようなよく分からない

それでも気になる。それが嫌な結果でも

「せんせー。早く言ってください」

「東月は―――――」

































もうこの世にはいない














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