唯一望むコト。
 



「好きです!」
_____確かに今目の前でそういった目の前の彼女。


知り合って約一年が経つだろうか。彼女は僕のメイド兼料理係。いつもよく働いてくれる子だ。
そもそもどうして僕がメイドなどを雇ったのか、と話し出すと、簡単に沈みかけた太陽は再び上ってしまうだろうから詳しくは説明しないが、"花嫁探し"をしていたがコレがなかなか見つからない日々が続いていた。折角"僕のエリス"を見つけても僕が誓いの接吻をしたその瞬間、その娘は僕の理想の花嫁から大きく遠ざかってしまうのだから。西も東も、北も南も、雨にも負けず、風にも負けず懸命に探しても、理想から遠ざからない花嫁は見つからない。
なので、急がば回れ、一時休憩と云うことで別荘で休養をとっていたのだ。



さて、最初に戻るが、今 目の前で彼女は僕に「好き」だと____世間一般的にいえば告白したのだ。


「僕もきみが好きだ」

「…本当、ですか…?」

ふわり、彼女の頬が桜色に染まる。
嗚々、惜しい。その肌の赤みさえ無ければ君はもっと美しいだろうに。



「君は美しく芯のある女性だ。掃除も上手ければ料理の味も旨い。隅々迄気を利かせる素晴らしい女性だ。
___だから、何処の出家だろうが気にしないし、其所迄望みはしない。……でも、唯一つ、望むことが在る。僕が君を愛する為に唯一つだけ。 …それでも良いかい?」


多くは望まない。唯、唯一望むこと。


「愛する王子の側にいる為ならば、どんなことでも致します。」


「良かった。君がそう言ってくれて嬉しいよ。 ……ならば、」




嗚々、君はどんな顔をするだろうか? その頬を素敵に青白く染めてくれるだろうか?







「死んでくれ」


そう言って僕は彼女の首に手をかけた。







(君が死んでくれれば僕は"君"を愛せるからね。)



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