10~12



10、上田と下関C
「下関君」
「は、い」
「廃棄の中華まん。時間そろそろなんだ。一緒に食べる?」
「いただきます」
「じゃあピザと餡と、一個ずつ。はい、餡まん」
「え」
「あれ?いつも餡まん食べてるから好きなのかなって思ってたんだけど」他のに変えようか、と窺う瞳に首を振った。いえ、寧ろ。

「…大好きです」

言えば彼は安堵したように笑う。彼の隣は、心地良い―付かず離れずの距離。温さに誰しもが彼を、庇いたくなる気持ちが分かってしまう。
だから、さて。
(あの金の亡者を傷付けた手とかいつかは伸びてくるであろう災厄をどうにかせねば)


11、亀山と下関A
「迷惑です」入ってきた瞬間に釘を刺す。何人かたじろいだが尚足を踏み入れる彼女たちを脳内で罵って、愛想笑いを剥がした。
心中で金に貪欲な彼女を思う。決して彼女が悪いことは無いのに。
「どうして、彼女を」
「下関くんが迷惑していると思って」
「その心遣いこそが、」
「何よ私たちは貴方を想って」
苛々、する。
爆発寸前の感情に、理性は崩壊一歩手前。ギリギリの綱渡り。
「…」ああ、抑えて居たけれど。もう、いいか。

「あんさ、お姉さんたち」

凛とした声が真っ赤な情景を裂いていく。何とタイミングの良い―亀山りり。
「邪魔なんだよね、不細工共がわらわらわらわら。男に群がって、さあ」
「何を、」
「あのさ、力不足なんだよ。あんたたちみたいのじゃ」
邪魔なんだよね、依存と嫉妬は醜いよと毒たっぷりに囁いて。奥からは怠惰の兎、電話の子機を片手に「警察呼んだんで」とは、また。


12、上田と下関D
「聞いたよ」
凪ぐような口調に肩を揺らした。見上げるように窺う俺へ、彼は瞳を優しく細めて囁く。

「頑張ったね」

ああ、その一言だけで。

***
ふわり。幸せだと感じてしまう下関の駄目な思考回路。
お疲れ様、と上田よりの労りの言葉で漸くの。期間は開きましたが、《LOWSON》に到来した嵐は終了です。




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