つつがない日々
------------------------------------------
04/07

クラス替えがあった。運悪く、今年も3人のクラスはばらばらだった。サクラちゃんは「どうせ家ではずっと一緒なんだから学校でくらい違ってもいいでしょ」って項垂れる俺の頭をぐしゃぐしゃかき回した。そうだけど。サクラちゃんだって、名簿見てちょっと悲しそうな顔してたじゃんか。
「じゃあね、ふたりとも」
セーラー服の襟を翻して悲喜こもごもの同級生が散っている廊下を進むサクラちゃんは、後ろから見ても美少女とわかる小さくて形のいい頭をしていて、腰も足首も薄くて細い。彼女のことを追いかける目は俺たちだけじゃなくて、廊下中にたくさんあった。
優越感がないわけではないけど、嫌になっちゃうよな。

サクラちゃんが新しい教室に消えてからさあ俺もと思って横を見ると、サスケはもういなくなっていた。

***
委員会決めも片がついて、昼休みになるとクラスメートたちはざわざわと絶妙な緊張感を引きずりながら弁当を食べるために席を動かし始めた。男子はそりゃ気楽なもんだけど、女子は最初のランチタイムに誰と一緒になるかで、その後のグループやら、パワーバランスが決まってくるのよ、とサクラちゃんが朝めんどくさそうに呟いていた。そういう話を聞くと、やっぱり3人一緒のクラスだったらめんどくさいことも何もないのになと思う。

お弁当の包みを開けると、ひらりと一枚のメモが出てきた。
「きのうはごめんね、今日は部屋に行ってもいい?」
ひやりと心臓を撫でられたような心地がした後に、今度は顔に熱が集まっていく。サクラちゃんの字。ふと思い当たってお弁当箱を開けてみると、案の定ミニトマトが4つも入っていた。

2人は俺が気づいていないと思っているのかもしれないけど、サスケとサクラちゃんの間に何かあるっていうのくらい、一緒に暮らしてればところどころでわかってしまう。隠されているのももやもやするし、そこにあるものが隠さなきゃいけないようなことなんだと思うと胸を絞られるような気持ちになる。想像してサイテーな気持ちになってやるせなくなる。くやしい。だけど3人の日々はこの先も続くし、自分からやめるつもりもないのだった。

「なにそれ、彼女から?」
一緒に弁当を食べてたクラスメイトのやる気のない絡み方は、無責任なものだ。そんなところ、と適当に投げ返すと言葉が喉につっかえて、かえってむしゃくしゃした。噛み潰したトマトから、どろりと青くて酸っぱい汁が溢れた。
(つづく)



2018/6/1-


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -