CIEL MAIL
▽ 空白のポスト [1/20]
 これは、とある空の世界に住んでいる、ひとりの女の子の物語。少女の名前は、リコル・レピュ。少女の役目は、空の世界の手紙を、地上の世界へ送り届けることでした。そして、地上の世界の手紙を、空に送り届けるのですーー。

「さあ、今日も手紙を運ぶんだよ。リコル」
 彼は空の神様、ウラノス。その昔、ウラノスは、空の上でひとり寂しく、過ごしていました。あまりにも寂しかったので、地上に手紙を送って、人間たちを空の世界へ招き入れているのです。
 ただし、その手紙を受け取れる者は、汚れなき心を持つ、純粋な者のみ。結果、人々は空に限りなく近い、崖の上で過ごすことになったのです。

「はーい。わたぐも、行くよ!」

空の世界で

 彼女こそ、本作の主人公。リコル・レピュ。リコルにとって、ウラノスは、父親のような存在でした。とっても明るく元気な女の子。トリコロールカラーが特徴的です。彼女は、不幸を知りません。
 彼女をまとう世界は、空の神様ウラノスによって守られているからです。空の世界に住まう者はみな、幸福しか知らないのです。
「今日はどんな手紙が届いてるんでしょう。ワクワクしますね!」
 “わたぐも”と名付けられた、彼の体は雲でできています。いつもリコルのそばにいる、相棒です。リコルのことを、いつも見守っているのです。ウラノスは、リコルのことが心配なので、わたぐもと一緒に同行させていました。

 いつものように、リコルとわたぐもは、ポストの中を見に行きました。するとーー。そこには、手紙などは一通もなく、空っぽだったのです。
「まあ、こんな日もあるよね」
「残念ですー」
 今日の配達はお休みです。リコルは、明日からまた頑張ろうと、空の世界に帰りました。
「今日ね。ポストの中身が空っぽだったの。いつもだったら、『僕の犬は、天国でも元気にしていますか』とか、地上から手紙が来るのになあ」
「そういう日もあるさ」
「ぼくと同じこと言ってるよ。ウラノス」
「なんたって、私たちは、家族だからね」
 いつから空の神様と過ごすようになったか、リコルはあまりよく覚えていません。ただ、真実を知る勇気は、リコルにはありませんでした。知らない方が、幸せなことなのかもしれません。彼女にはそれが、なんとなく分かっていたのです。

 ところがどっこい。次の日も、そのまた次の日も、ポストの中身を確認してみましたが、手紙はありませんでした。これはおかしい! そう思ったリコルは、ウラノスに相談することにしました。
「誰かがいたずらをしているのかもしれないね」
「そんな人、本当にいるのかなあ」
「地上の者の中には、悪い者もいる。お前は、人を疑うことも覚えたほうがいいかもしれないね」
 リコルたちは、手紙が来ない原因をつきとめることにしました。

 リコルは、地上に行き、ポストの前を見張ることにしました。
「よーし。見張り番、がんばろうね!」
「手紙を盗む、不届き者をこらしめましょう!」
 リコルとわたぐもは、ポスト前の草むらに隠れて、誰かが来るまで待ち続けました。けれどもーー。いつまで経っても、手紙を盗むような人はいません。それどころか、不思議なことに、ポストに手紙を入れる人さえ、誰もいないのです。
「あっれー。おっかしいなあ」
「もしかすると……。本当に、誰も手紙を送らなくなったのかもしれませんね」
「そんなあ。どうしてなの?」
「リコルさま。ここはひとつ、地上の者に、聞き込みしてみませんか?」
「聞き込み調査だね! 待ってて。ぜったい、原因を突きとめるんだから!」
「リコルさま……。燃えておりますね」
 そんなこんなで、リコルとわたぐもは、地上の者に聞き込み調査をすることにしました。


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