紺碧の故郷
ウラノスとマソは神であることをやめることにしました。
そして、わたぐもが言うように、神の力を使って、リコルとカナルを元の世界へ帰してあげることにしました。けれども、リコルたちが元の世界へ帰ったところで帰る居場所はあるのでしょうか。リコルとカナルは、それが心配でした。
「元の世界ではなく、また違う世界に生きればいい」
その声は、リコルとカナルが初めて聞く声でした。
しかし、ウラノスとマソには、馴染みのある声です。
彼は、死の神のタナトスでした。
そのすぐ隣には、死神を名乗る少年、クルスがいました。
「そっか。もう行ってしまうんだね。やっと友達ができたと思ったんだけどな」
クルスは残念だな、とリコルに言いました。
「えーと、どういうこと?」
リコルは、タナトスとクルスが話している意味がわからず、聞き返しました。すると、それに気付いたウラノスは、リコルとカナルに説明しました。
「お前たちがいた国籍とは、違う場所に生きればいい。そこがお前たちの本当の居場所となろう」
ウラノスがいう本当の居場所とは、神として空から眺めていた世界の中で、そこがリコルとカナルにふさわしい場所だと感じていた場所でした。
「そこで、お前たちは、今の名前で新たな生を刻むんだ」
「言っていることがよくわからないよ。ウラノス。ぼくはまだ、空の世界にいたいというのに、どうしてそんなことを言うの?」
ウラノスの言葉に、聞き返すリコル。そんな様子を眺めていたマソは、地団駄を踏み、口を挟みます。
「ええーい! そんなこともわからんのか! これは、わしたちの贖罪じゃ。理不尽な死に巻き込まれたお主らを、救済するためのな」
「おれたちを救済? マソとウラノスは、どうするんだ?」
カナルは、不思議そうに言いました。ウラノスとマソは、微笑んでいるだけでした。それは、まるで子を想う親の顔でした。
***
それから彼らは、どうなったのでしょうか。リコルとカナルは、紺碧の海のとあるリゾート地に流れ着きました。そこで出会ったのは、人間の姿となった、ウラノスとクムラス、マソでした。神たちは、神をやめ、人間になったのです。いいえ、人間に戻ったのです。死の神、タナトスは、空の神と海の神が力を使い果たして消えてしまう前に、リコルとカナルが住まう世界へと、その魂を転生させたのです。それは、死の神なりの、理不尽な死を招いてしまった、お詫びでした。
「はじめまして、リコル。ここが、私たちの本当の故郷。今日からお前たちは、私たちの家族になるんだよ」
おわり
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