CIEL MAIL

不幸の手紙


リコルたちは、手紙を読んでみました。そこには、「死ね、消えろ」と言った汚い言葉がたくさん書かれていました。
「ひどい……」
「これでは、手紙を返されてしまうのも、仕方ありませんね。そもそも、もう死んでいますけど」
でも、どうして?とリコルは思いました。カモメ姉さんが、こんなこと、手紙に書くはずがないことは、リコルにはわかっていました。カモメ姉さんは、リコルの地上での大切なお友達です。カモメ姉さんは、確かに少し怖いけど、人の悪口を言うような人ではありません。
「リコル、嫌なことがあったら、いつでも相談に乗るからね。いい?」
「あはは、嫌なことなんてないよ」
「あなたって、いつも幸せそうね」
リコルは、カモメ姉さんに言われた言葉を思い出しました。そうだ、このことをカモメ姉さんに伝えなければいけない。真実を確かめなければいけない。
「カモメさまに会いに行きましょう」
わたぐもは、そう言って、リコルもそれに頷きました。

「あら、リコル。手紙は受け取ってもらえたのかしら? って、なんでその手紙を持っているの」
「ごめん、カモメ姉さん。手紙、突き返されちゃった。これは本当に君が書いたことなの?」
カモメ姉さんは手紙の文面を読んでみます。
「こんなの、彼に送るわけないじゃない!」
カモメ姉さんはカンカンです。
「そうだよね、ごめん。でもぼく、確かめないといけないんだ。君が書いたものでないというなら、これはいったい誰が書いたものなのかな」
「そんなの、わかるわけないわ。誰かが手紙を書き換えてる、とか。どうしてそんなことするのか、わからないけど。これじゃまるで、不幸の手紙ね。あなた、手紙を届ける前に、文章をよく読んだほうがいいわよ」
2次災害になる前にね、そう言ってカモメ姉さんは地上の世界の空のお仕事に戻りました。

カモメ姉さんの言う通り、もう1通の手紙は中を確認してから渡すことにしました。そう思ったのですがーー。
「あれ? それってもしかして、私宛の手紙かしら」
「えーと……」
手紙の宛先人である、天使のアンジュです。確認しようと思った矢先に本人が現れてしまっては、本末転倒です。仕方がありません。リコルは、アンジュに手紙を渡してしまいました。…………。
「手紙、ありがとう」
この反応は、もしかして、問題がなかったのかもしれません。そうホッとするリコルでしたが、現実は甘くはありません。天使のこの後の言葉を聞いて、リコルはやっぱり手紙を渡してしまったことを、後悔してしまうのです。
「でもね。わたしのこと、みんな嫌いだったんだって。死んでせいせいしたって。だからね。わたしも、みんなのこと、嫌いになっちゃった」
リコルには、返す言葉もありませんでした。そんなわけない、違う、そういった思いがぐるぐると頭の中に渦巻いています。また、アンジュは泣いてしまうのかもしれないと思うリコルでしたが、アンジュは、なぜか不敵な笑みを浮かべてリコルに顔を近づけながら、こんなことを言ったのです。
「幸せを運んでくるんじゃなくて、不幸を運んでくるなんて、ひっどーい。手紙の配達なんて、やめちゃえば? 話は、それだけ。バイバイ」
「…………」
「リコルさま……」
リコルはずっと俯いて、顔を上げることができません。わたぐもは、そんなリコルを見守ってあげることしかできませんでした。せっかく、リコルが手紙を運ぶ理由を思い出せたのに、どうして、こんなことになってしまったのでしょうか。


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