リク拍手文 | ナノ

残暑見舞って


季節は夏
町内には蝉の声が響き渡り、夏の風物詩とはこんなにも主張が激しいのかと彼女は眉をひそめた。
梅雨はとっくに明け、ジリジリとした日差しが刺すような刺激を与える…気がする。
いやきっとそうに違いない。そうでなくては今の自分の状況は説明がつかない。

「出た、君のそういう曖昧じゃないところ悪くないとは思うけどね」
「おいチキン!とはってなんだよ!ぼかした表現はやめっ・・・痛ッ!!ちょっと!」
「勝手に日焼けしたのが悪いんでしょ」

ふん、と拗ねたように鼻で笑うヒバリ。
目の前の少女は寝間着姿で半べそをかきながら、ヒリヒリと小麦色になった肌にクリームを塗っていた。
そしてまたヒバリも手の届かない背中に手を這わせていたのだが、その手つきはいつものように小動物を触るような気をつかったものではない。
彼はそう、幼馴染の彼女に対してちょっと怒っていた。

「いやだってヒバリ群れるとこ嫌じゃん!前回海行った時散々だったじゃん!そりゃ誘わんでしょ」
「…君、前回海行ったとき何があったか覚えてるのかい?」
「………ザリガニに?手を?はさまれた」
「はいダウト」

ウグ…と黙ってしまった目の前の少女にヒバリは自分を誘わなかった理由について、ある確信を得ていた。
心の底ではそうでないことを祈りつつも、いや本来であるならばあり得ないことなのだが、こと彼女に関しては可能性はある。いやそうとしか考えられない。

「君さ、普通誘った人間を当日に忘れる?」
「だから配慮だって……ウッソウソごめん痛ッ!ヒバリ爪立てんといて!!!!!嘘つきました!!!ヒバリ
を忘れまし〜〜〜〜〜ッ!!!!!」
「携帯に連絡しても出ないし、挙句散々遊んで黒焦げになって帰ってくるし」
「え〜〜気付かなかったそれはゴメン」

これは咬み殺されても文句は言えないなあと少女は頭の隅で考える。
そういえば事前に海に行こうと誘ったとき、大してヒバリは乗り気ではなかったしまぁいなくてもいっかと思案した結果なのだ。
意外と私はヒバリが思うよりも策士なんだとニヤケてしまう。

背中をさすられながらふと軒先の近くのバイクに目がいった。
ヒバリが乗ってきたバイクだが何やら今日は荷物が多いらしい。ちらりと見えるのはビニール製の…あれは、ビーチボール…!?

「そんなに楽しみにしてたんだ…」
「策士が聞いて呆れるね、まああれは草壁のなんだけど」
「いやママンは誘ってないんだけど」

来年は忘れてなかったらきっと誘ってあげよう、そう策士は決意した。

「君それ去年も言ってたよ」
「去年もかぁ〜〜〜」


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