046 黒曜編番外・五歳の小さな嫉妬心A
お師匠様。
この手紙が二枚にわたって書いてしまってごめんなさい。
どうしても伝えておきたいことがあります。 お師匠様にそっくりなヒバリさんと、その隣にいる――さんという人についてです。
私がヒバリさんの後について行っている途中、ヒバリさんを見失ってしまいました。 沢田さんと一緒に居たリボーンにヒバリさんの部屋番号を教えてもらって、廊下を歩いていたらある一つの部屋からあの人の声とヒバリさんの声が響いてきたのです。
心が、すこし締め付けられるような感じがしました。
不思議にそのヒバリさんの声はフウキイインの人たちと一緒に居るときよりも、明るく聞こえました。
そっとドアの隙間からのぞくと、ヒバリさんと――さんがベットの上に座って、さっき買っていた緑色のアイスを食べていました。
――さんがアイスをスプーンですくったかと思えば、それをヒバリさんがパクリと食べてしまいます。 それに怒った――さんはヒバリさんに体当たりをして、二人はベットの上に倒れこんでしまって。 ――さんは手の内にあった緑色のアイスをその拍子に中身をぶちまけてしまって、二人の髪の毛にべっとりとくっついてしまいました。
爆笑する――さんと、渋い顔をするけれどもどこか楽しそうな笑みを浮かべているヒバリさん。
それを見た瞬間、私の胸はチクリと痛みました。
お師匠様、この感情は一体何なのでしょうか。
――さんがヒバリさんから離れて欲しい、と思う私は弟子失格なのでしょうか。
お師匠様、教えてください―――
**
ちひろ。 何でアイスを買ってきたのに、君は目を覚ましてくれないんだい。
そう問いかけても起きるはずもなく、ヒバリは持っているビニール袋に目を落としてため息をついた。 彼女の好きなものを冷蔵庫に入れようと体を曲げれば、六道骸にやられた傷が疼く。
医療用のベットへと横たわって、自分の腕を枕の代わりにすれば、祭りのときのちひろの膝枕を思い出して腕枕を止めた。 どうにも自分の腕じゃ硬いのか、なんとなく物足りない。
彼女がしてくれた膝枕よりも。
早く、目を覚まして――
目をつぶったままでうなされているのだろうか、時々眉をひそめる彼女の顔をヒバリは覗き込んだ。
――ねぇ、君は一体その瞳に何をうつしているんだい?
こつん、と自らの額を目の前にいる愛しい小動物の額に、軽く小突くように当てた。 体温と体温の温かな熱が、伝われ、伝う。
「…ちひろの目には、僕がどう映っているんだい?」
さあ、彼女が目を覚ますまで…あと数秒…
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