044 夜中って10時ぐらいになったらお腹がすくよね。
「―――い?」
ぱちり、と目を覚ませばチキンの顔がドアップ。 …何故に?
『…おはよーございます咬みきった…じゃねーや髪切った?』 「どこをどう見たらそうなるんだい」 『嘘だよ、YOUの頭はフサフサさ。あと何十年かしたら知らねーけどな。つーかここどこよ』
ゴンッと奴の額に頭突きをくらわせてやれば、その顔に痛々しい生傷がチラリと見える。どーしたヒバリンよ。喧嘩にでも負けたか? むくりと白いベットから起き上がれば、身体中がギシギシと痛い。ヒバリが布団の上に乗っているせいだ。
「ここは並盛中央病院だよ。ねぇ、君…六道骸に何もされなかったかい」
ろくどー?…パインのことか。
『…(私の財布が)襲われた。くっ、思い出しただけでも腹が立つぜ。こんどリベンジしに行こーぜ!!』
絶対アイス&二百円の仇を取ってやらァ、と肩を叩いてやるとムスッとした表情になる雲雀恭弥(○歳)。
ンな顔しても怖くねーぞチキン。なぜなら今てめーの手元にはトンファーが握られてな…あったよ!! 何してんだお前。 ちょっと、何ベットからおりてんの。何で窓に手をかけて外に出ようとしてんの。何でトンファーから棘みたいなのが出てんの。
『おいおいヒバリン。いいのかい?そんな事をしている間に君の好きなお昼ご飯に出てくる病院のハンバーグ定食を頂いちゃうけど。』
そう言ってみれば、ぴたりと足を止めるヒバリ。 踵を返す彼のパジャマから見える白い包帯の種類、聞いたことがある。確か骨を折ったときに巻くやつだ。 パインにやられたのか。
「……負けたわけじゃない。ちゃんと咬み殺し返した。」 『ハイハイ』
咬み殺し返すってなんだよ。
まあそんなことはどーでもいい。問題は私のお腹が限界を迎えてしまうということだ。 今はチョコを見たらはリバースしそうな気がする。別のものを食べよう。 ガチャリと冷蔵庫をあされば、抹茶味のアイスとチョコ味のアイスが仲良く二つ並んでいた。
『チキン――ママンはー?』 「草壁も病院を出た後にやられたらしくてね。確かまだ入院してるんじゃないかな」
じゃあこれは、一体誰が―― ふとヒバリを見ると、傷だらけの顔をフイッと横にずらして視線を合わせてくれない。
…わかりやすいなぁ。
そんな少しだけ、ほんのちょびっとの彼の優しさが嬉しくて、頬が自然に緩む。 せっかくだしおやつの時間にはちょっと早いけど、食べてやるか。
『ヒバリもアイス食べる?私はこんどは抹茶味がいい!!』 「僕も抹茶。」 『…チキンには病人を労わるという気持ちはないのかい?』 「そのままそっくり君にその言葉を返してあげる。そもそもちひろ、怪我してないでしょ」 『えっウソッ…マジだ、どこも痛くない。やっぱりウソーヒバリンの今の言葉でブロークンした心が痛いー』 「…。」
これはある一日の出来事の話――
黒曜編、Fin
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