たった一人の君を探す旅

 042 見ろ人がゴミのようだって一度でいいから言ってみたい




042 見ろ人がゴミのようだって一度でいいから言ってみたい

『おや、こんな所に綺麗な(おいしそうな)ものが…』

“…よだれが出ているな貴様。()の中の欲望を隠し切れていないぞ”
『マジでか』

いやそれにしても立派なたてがみみたいなもふもふの毛ですね。触っても大丈夫かなアレ。汚れたりしないかな。なんで色が水色なのかわかんないけど、ふさふさしてそうだしふさふさなんだよね?

“…傷がつかなければ、よかろう。”

ワォ、ヒバリじゃないけどワォ!!

人の心の中を覗いてるぜ、アイツ。不法侵入者め、この並盛巫女代表(一名)として制裁を下してやろうか!!やらないけどね!!今、幣もってないし。
私ってなんてカインドなの?!親切すぎて鼻水出ちゃう!!

そっとその鹿の首のあたりのもふもふに手を伸ばしてみれば、ふわりと軽やかな触り心地。
これはアレだな。ヒバリの頭のふわふわと同じだ!!

“満足したか、並盛の巫女よ”

『いえいえ、まだ癒しが足りてません…何で巫女って知ってんの?つーか今更だけど、何であんたペラペラ喋ってんの』

“……。”

無視か!!


“…私はお前を知っている。幼少のころからずっとな。”
「―僕は君を知っているよ。幼いころからずっとね。」


………?

何?今どこかのチキンさんと声がダブったように聞こえたんですけど。
ああ、そろそろ私の耳も腐ってきたということか。なるほど。

つーか何?こんなもふもふなのに、私を知っていると?!(もふもふ関係ない)ストーカーかおめーは。

この角折ってやろうか、立派に枝分かれしている二本の触角を!!


バッシャァァァァァン!!


グッと奴から生えているそれに力を込めてやれば、長いその足で蹴り飛ばされてしまう。

くっ、なんて威力だ。

…角を折ろうとしたのに危うく私の骨が折れるわ。ガチの骨ね、あばら骨の方。
慣用句の方じゃないよ。

“話を戻そう。この空間は今の貴様の精神世界の中…ああ、わからぬという顔をしているな。先ほど貴様はチョコレートによって溺れる、夢のようなものを見ていたはずだ。”

ふむふむ、パインのアレか。結局あれは夢だったのね。
脳裏に奴のドヤ顔が映し出されたので、すぐさま脳内の黒板消しでかき消してやる。ハッ、ザマァ!!

“アレは奴の一種の能力によるものだ。本来、幻覚とは脳内に直接作用し、視覚をコントロールする。”

脳内?コントロール?ロールケーキ?What?

“もう少し、読解能力をつけるがいい。巫女よ”

うん、やだ!!

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