122 プリンとゼリーの違いは紙一重でないことは確か
「みなさん…ありがとう」
真っ暗な闇の中で、あの少女の声が聞こえた。 そう言えばずっと私に言いたげだったのは結局なんだったのだろう…ふと真っ暗な世界で考える。 まあ急ぎだったらとっ捕まえてでも言うだろうしそこまで重要なことじゃなかったんだろうな…そうだよね?そうであってくれ…てか起きたらまた会えるから大丈夫か…おやすみ…
「…て…起き…ちひろ」 『ハッ!グッモニ!』 「なんで略したのかは聞かないけど、終わったよ」 『白蘭は?』「死んだ」
ヒバリの顔がアップで目に入る。起こしてくれたのはありがたいけど近すぎる、なんだこいつ。 寝ぼけ眼をぐしっと手で擦れば赤くなるから、と目元をべろりと舐められた。は??誰? 草むらで隠れていたからか周りの人には知られていない様子、あっ嘘だわスクアーロがこっちをガン見してた。
「…」 『いや何も言わないんかい!!!!!!』 「…こういう時に知らんフリするのが大人ってやつだぁ覚えておけちひろ」 『チキンあいつ咬み殺していいよ』
ヒバリはガン無視している。もう一度言うけどなんだこいつ。もしかしてお風呂のこと怒ってる?家に骸を匿ってんのバレてんのかな?いやだってまさかあんなことになるとは思わないじゃん、9割チキンが悪いじゃん。
「おいちひろちょっとこい」
下まつげペガサスことディーノが私を手招きする、なんだとついていったら恭弥をなだめる方法だと耳打ちされた。
『それ本気で言ってんなら草』「こら!どこで覚えてきたそんな言葉!」『いいのか?こちらとら現代っ子ネットの申し子だぞ』「君、大してパソコン使えないでしょ」 「げっ恭弥」
跳ね馬に何言われたか知らないけどロクなことじゃないから耳を貸さないほうがいい、と言われ襟を掴まれてズルズルと引っ張られる。そう言えばユニ、彼女はどこだと周囲を見回すがどこにもいない。彼女のファミリーだった人間もなんだか様子がおかしい。
『ヒバリ、もしかして「それを防ぐためにユニは命をかけたのです」!』
大きな広場に戦いの後であろうクレーターができている。そこでダメツナ達とリボーンと同じような小さな赤ん坊が話し込んでいた。聞き耳を立てていればどうやらユニは命をかけ炎を灯し過去のマーレリングを封印したんだとか。そうか、もう会えないのか。少し悪いことをしたなと胸が痛む。
『話ぐらい聞いてやればよかったなぁ』 「おいちひろ、お前にユニから伝言を預かってるんだ。ちょっとツラ貸せ」
過去へ帰れるぞ!やったー!とみんなの士気が上がったところで、ツナと頭に乗ったリボーンが声をかけてきた。えっ?と不安そうなツナの顔を見る限りリボーンの独断か、ユニが彼にしか話をしていなかったのか。いいよ、と言いかけた瞬間、幣からチェルヴォが飛び出してきた。
“アルコバレーノの話は聞く必要がない、ユニ本人の口から聞くべきだろう” 『おい急に出てくんな、本人がいねえんだから仕方ねーだろ』 「えっ…!ちひろちゃんの匣兵器って喋んの?!」 「…そうかツナは知らなかったのか、俺も黙って見てたが他の奴の匣兵器とはワケが違いそうだ。説明してもらおうか。おそらくユニの伝言と関係してくる。」 “…ついてこい”
流石のジビエもリボーンとの口喧嘩には負けたようだ、いやこれ口喧嘩なのか? しぶしぶとチェルヴォは森の中へと歩き出す、それに続くツナとリボーン、私。それに無言のヒバリ。んん?チキンまでついてくんの?いいのか?なんか重大な秘密が暴かれそうな予感がするんだけど。
“我の匣兵器化には10年後のあやつも関係している、まあいいだろう” 「兵器化ってことはお前はもともと作られた存在じゃなかったんだな?」 “左様、我はそもそも並盛の地を監視する存在であり、並盛の意志だった”
とんだ厨二な話になってきたと戦慄する。やっべーよチェルヴォマジで言ってんの?もはやそんなの神じゃん。 森をゆったり歩いていたら並盛の川が流れる河原についた。もう先には進めない、いや川に沿って歩けばいいんだけど、チェルヴォがそこでピタリと歩みを止めてしまったのだった。 長い話になりそうだと腰を下ろそうとした瞬間、チェルヴォが光の速さで背後に回りズドンと頭突きを決める。えっ何…そんなに話の途中で座られるのが嫌だったのか…
「ちひろちゃん!」 「!待てツナ」
あまりにも急な衝撃でそのまま放り出されるかのごとく弧を描き川へと落ちていく。あ〜これ完全に落ちる!と冷たい衝撃を覚悟してぎゅっと目を瞑った瞬間。
どるぅん!
『は?』 風景とは似つかわしくない、衝撃と感触が、私を包んだ。
back
|
|