book短A | ナノ


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※にょきた!
※土方変態注意報












「あー!」


とある休日。

ソファに座ってのんびりテレビを見ていると、先ほど俺の腕を抜け出してトイレに立った総司の、でっかい叫び声が聞こえてきた。


「土方さん!土方さん!」

「なんだ?」


俺はのんびりと返事をする。


「あれ!あれ取ってきてください!」

「……あれって、もしかして来ちまったのか?」


俺は、少し考えてから言った。


「………うん、残念ながら」


総司の声が心なし悲しそうだ。


「まぁ、いいから早くお願いします」

「嫌だって言ったら?」

「〜〜っ意地悪言ってないで早く!!」

「はいはい」


全く、少しくらい恥じらいはないものなのか。

苦笑しつつ、棚の一番下の段からいつもの紙袋を取り出して、総司に持って行ってやる。

行きがけにちらりと中身を覗いたのはご愛嬌だ。

俺に覗かれないように厳重に封をされているのを無視してがさがさと破って、残りを確認する。

あぁ、だいぶ少なくなってきたな。


固く閉められたドアをノックすると、がちゃりと鍵の開く音がした。

何の遠慮もなくドアを開けると、総司は顔を真っ赤にしてぎゃあと濁点付きの悲鳴を上げた。

そしてばっと前屈みになる。


「っいきなり全開しないでくださいっていっつも言ってるのに!」

「はは、悪い悪い」

「もう!全然悪いと思ってない!」

「ほらよ、持ってきてやったぞ」

「…ありがとうございます」


紙袋からわざわざ取り出してやろうとしたら物凄い剣幕で出ていけと怒鳴られた。


「この変態!エロじじい!」

「じじいってなんだよ!」

「ていうか、なんで封が破れてるんですか!土方さん中見たでしょ!!?」

「俺に持ってこさせるお前が悪い」

「やだもう!土方さんのバカ!どアホ!」


全く、これから数日間は我慢しなきゃならないこっちの身にもなってくれよ。

なんて思いつつ、ぎゃあぎゃあ騒ぐ総司に免じて大人しく外に出る。

やれやれ、今夜は味噌汁でも作ってやるとするか。



それからトイレを出たらしい総司がお風呂場でなにやらがさごそやってるので見に行くと、こっそりパンツを洗っていた。


「総司」

「ぎゃ!ひ、土方さん!」

「何だ、パンツ汚しちまったのか?」

「〜〜っ!」


総司に思い切りシャワーをひっかけられた。


「うわっ何すんだよ……!」


全身びしょ濡れになって、俺はその場に立ち尽くす。


「土方さんのどアホー!出てけー!土に帰れ!」

「うわ、ひでぇ言い方だな!別にパンツくらい見たっていいじゃねぇかよ。普段もっと恥ずかしいもんをいっぱい見てるじゃねぇか」

「そ、そういう問題じゃないし!いいから早く出てってください!」

「俺が洗ってやろうか?ん?」

「こんのど変態色魔!スケベ親父!」


総司に思いつく限りの言葉を並べて罵倒され、しまいには無理やりバスルームから追い出されてしまった。

目の前でバタンと閉められたドアに、はぁと嘆息する。

まぁ、少し悪かったかな、なんて思いつつ、がしがしと頭を掻く。

知っている、女子がアレをやたら気にすることくらい。

でもな、世の中には使用済みの○○を舐めたがるような男もいるくらいで。

まぁ、俺にはそこまでの変態趣味はねぇが。

それよりも、今日は思い切り甘やかしてやらないと、と気合いを入れ直し、俺は濡れた部屋着を着替えに行った。



しばらくして真っ赤な顔でリビングに戻ってきた総司は、俺と二人分くらいの距離をあけて、ぼすんとソファに座り込んだ。

すかさず俺が距離を詰めると、総司が不機嫌そうに俺の身体をぐいぐいと押し退ける。


「なぁ、」

「…来ないでください」

「なぁ、悪かったよ」

「ふんだ、死んでくれて構わないですよ」

「……本気か?」

「………………………本気じゃない」


消え入りそうな声で呟く総司に、自然と笑みが漏れる。

茶色い頭にちゅっとキスを落とすと、俺は流れっぱなしになっていたテレビに意識を戻した。

そのまま暫くじっとしていると、総司が腕の中でやたらもぞもぞと動くので、俺は心配になって総司の顔を覗き込んだ。


「どうした?痛むのか?」

「…う、ん……ちょっと」


総司はものすごく痛がりだ。

人によって重さが違うというのは周知の事実だが、こんなに痛がる奴は総司が初めてかもしれない。

……なんて今までの女と比べるようなことを言ったら、総司に張り飛ばされそうだが。

可哀想に、と思いながら、身体を抱き寄せてお腹をさすってやる。


「あ、…それきもちい…」

「ん?そうか?じゃあずっとこうしてるよ」


喉をごろごろ鳴らす猫のように、総司が目を細める。

総司のお墨付きももらって、俺は優しく総司のお腹を暖め続けた。

それでもやはり痛むらしく、時々うんうん唸っては身を捩ったり、顔をしかめたりして耐えている。

俺も、総司を見ているばかりで、もうテレビなんか見ていない。

あーあ、代わってやれたらいいのに、とは思うが、俺には一生やってこない代物だ。


「大丈夫か?マッサージでも、してやろうか?」

「……マッサージより、キスがいい」


痛みの所為か素直な総司に、お望み通りバードキスを落としてやる。


「薬、飲むか?」

「ううん……いらない。一回飲んじゃうと、薬なしじゃ耐えられなくなるし」

「じゃあ、何かあったかいもんでも飲むか?」


味噌汁がいいんだぜ、と総司に勧めてみた。

総司が痛がるから、何とかならないものかと、俺もいろいろ調べたのだ。

ホルモンの関係上、豆乳とか、大豆を摂取するのがいいらしい。

だが、総司の気には召さなかったようだ。


「ホットミルク飲みたいです」

「分かった、ハチミツ入りのな」


総司をそっとソファにもたれさせてから、キッチンに行ってミルクをあっためる。

あっためながらカウンター越しに総司の様子を伺うと、総司は落ち着きなく、あっちへふらふら、こっちへふらふら頭を揺らし、落ち着く場所を探している。

早く戻って抱き締めてやろう、なんて自分を急かしながら、程よく温まったミルクにハチミツをにちょーと垂らし、指についたのを舐めてから、ソファに戻った。


「はいよ」


まず自分が座ってから、総司を股の間に座らせ、マグカップを渡す。


「ありがとうございます」

「火傷しねぇようにな」

「しませんよーだ、だいたいこの温さで火傷なんかできるわけ……」


文句をタレながらミルクに口をつけた猫舌総司が、小さくびくりと震えたのを、俺は見逃さなかった。


「だから言ったんだ」

「う、るさいな……土方さんは、ちょっと黙っててください…」


それでも強がって平気な顔をしてミルクを飲もうとする総司の手から、俺は黙ったままマグカップを取り上げると、自らの口に中身を流し込んだ。

それから、何事かと所在なさげに俺を見ていた総司の顎を掴んで上を向かせ、小さく微笑んでから口を塞ぐ。


「は、ンン……ん、」


応えるように薄く開いた総司の口に、多少ぬるくなったミルクを少しずつ流し込む。

こくり、と総司の控え目な喉仏が上下して、口の中のミルクがなくなったのを舌で確認してから、俺は唇を離す。

すると総司は上を向いたまま、俺の胸に頭をぐりぐりと押し付けて、「もっと。」と小さく呟いた。


「自分で飲まねぇのか?」

「だって、土方さんに飲ませてもらった方がいいもん」

「おまえ…」


俺は下半身が疼くのを必死で我慢しながら、底にハチミツがたまらないようにマドラーをかき回して、もう一度ミルクを口に含むと、総司に与えた。

唇を合わせながら、マグカップを持っていない方の手で総司の下腹部を撫でてやる。

嬉しそうな顔をしてミルクを飲み下す総司に、ご褒美とばかりに濃厚な口付けを送り、舌を吸うと、総司は物欲しそうに膝頭を擦り合わせた。


「……欲しくなっちまったのか?」


口の中にミルクがなくなって、マグカップをローテーブルに置いてから言うと、総司は口をキュッと結び、頬を真っ赤にして目を逸らした。


「だって……」

「はは、そんなに気持ちよかったか」


俺はくすりと笑って、あやすように総司の額に口付ける。


「まぁ、ソレ終わるまでは我慢してくれよ。俺も生理中の女を犯すだなんて大罪は働きたくねぇし」

「な!黙って聞いてれば人のことをビッチみたいに!」

「なんだよ、総司が、欲情したんだろ?」


なぁ、生理中でも濡れるのか?なんて耳元で囁いたら、総司に顔を拳骨で殴られた。

しかも、手加減はない。


「っ……痛ってぇ!!!!」

「ふん、自業自得ですよ。僕がお腹痛くてこんなに苦しんでるのに、からかう土方さんがいけないんです」

「悪かったよ」


素直に謝って、総司の前で交差させた腕にぎゅっと力を込める。


「あ、あ…!押さないでってば!」

「わ、悪い………」


総司が痛そうに顔を歪めるので、罪悪感に駆られ、髪に小さなキスを何度も落とす。


「……いいですよ、だって、僕、幸せだし」

「しあわせ?」


突然の総司の言葉に、俺はこてりと首を傾げて総司の顔を覗き込んだ。


「うん、だって、痛いの我慢すれば、いつかは土方さんの子供産めるでしょ?」

「…………!!!」


俺は暫く動けなかった。

総司が、俺の子を?

俺と、総司の子を?

想像したら、柄にもなく顔がカァッと赤くなった。


「あんれ、土方さんなに驚いてるんですか?」

「い、や………」


ヤベぇ。こんな顔恥ずかしくて見せられねぇ。


「………もしかして、嫌でしたか?」


シュンとして寂しげな顔になる総司の首筋に、俺は慌てて顔を埋めた。


「ばーか。嫌なわけがあるか。好きな奴に子供を産んでもらえるのは、男の夢だ」

「…!ほんとですか?!」

「あぁ」


俺は恥ずかしくて顔を上げられない。

が、総司は純粋に嬉しいらしく、ふふふといつまでも笑っている。


「なんだ、何でいつまでも笑ってんだ」

「えー、だって嬉しいんだもん」


予想通りのセリフに、心がむず痒くなった。


「土方さんこそ、どうしていつまでも顔を上げてくれないんですか?」

「ちょっと、照れてんだ」

「え、土方さんでも照れたりするんだ」

「悪いか、馬鹿」

「ううん、意外ー」


意外って………、と俺はいささか拍子抜けした。

こいつは俺がいつもどれだけドキドキしてるのか知らないのか。


「ねぇねぇ」


上機嫌のまま、総司が首を捻って俺を覗き込んでくる。


「なんだよ」

「僕、一人目は土方さん似がいいです」

「…んなこと俺に言われてもなぁ」


それに、一人目って、一体何人作る気なんだ。


「えー、土方さんの遺伝子強そうなのに。駄目ですか?」

「駄目だ。総司似がいい。じゃねぇと俺が拗ねる」

「えーやだ!そんなの僕だってやきもちいくら焼いても足りなくなる!」


子供が産まれたら、お互いを想い合う時間が減っちまうんじゃないかと、少し心配になった。

だがまぁ、総司と家庭を持てるなんざ、願ってもない、俺の理想中の理想だ。

俺は心の中で幸せな未来予想図を描いて、満ち足りた気分で、もう一度総司の髪に顔を埋めた。



2012.06.24

→ちょっと長ったらしいあとがき




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