book短A | ナノ


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総司と電車で登校することになった。

昨日の夜新八たちと飲みに行ったため、車を学校に置いてきたからだ。

平日だし来ていないだろうと思って家に帰ったら総司がいて、車がないし明日の朝は送ってやれないから早く帰れと言ったのに居座られ、結局明け方近くまでイチャついてしまった。

おかげで仲良く電車通勤・通学だ。

まぁ、寝不足で運転するよりは眠れるしいいかと思ってもみたが、駅員が無理やり押し込んでも溢れてくる人の山を見て、一気に気分が萎えた。

これは眠るどころの騒ぎじゃない。

ちょっとしたサバイバルゲームだ。





「お前、俺が送らない日は毎日こうなのか?」

人に押し潰されそうになりながら辛うじて聞くと、総司も押し潰されそうになりながら「そうですよ」と言った。

……これからは総司を守るために極力毎朝送るようにしよう。

それきり会話もままならず、俺は何とかして総司を人の波から守ろうと、体をもぞもぞ動かし、腕を出して総司のことを引き寄せた。

ついでに重くはなかったが、総司のスクールバッグを持ってやる。

せめて隅に行けたら良かったのだが、生憎車両のど真ん中まで押し流されてしまった。

サラリーマンの汗の臭いとOLの香水の臭いとで鼻がひん曲がりそうだ。

それに人いきれも加わって、窒息死寸前。

CO2濃度がすごいことになっていそうだ。

何か救いはないものかと辺りを見回すと、総司の頭が見えた。

何の迷いもなくそこに顔を埋めて思い切り息を吸い込むと、家のシャンプーのいい匂いが鼻腔に充満する。

少しだけ生き返って顔を上げると、総司は真っ赤な顔で俯いていた。


「電車のど真ん中でなにやってんですか」

「いや、ちょっとオアシスを……っ!」


その時電車が派手に揺れて、周囲の環境がガラッと変化した。


「大丈夫か?」


真っ先に総司の無事を確かめると、総司はこくんと頷いた。

その仕草が無性に可愛かったが、正直それどころじゃない。

俺は瀕死だ。

まず、二の腕の柔らかい部分に、隣の女子高生が見ている参考書の角が食い込むようになってしまった。

スーツ越しながら地味に痛い。

つーか空気読めよ。この混み具合で参考書を広げるんじゃねぇ。

この、「今日はどうしても落とせないテストがあるから、何が何でも今詰め込まなきゃならないんです」的な空気がムカつく。

一教師として言わせてもらうと、テストの準備は前日の夜までに済ませておくべきだ。

これにはイライラバロメータが振り切れた。

睨んでやりたかったが首が回らない。

イライラバロメータが煙を上げた。

それから、腹部に誰かの肘か何かが押し付けられている。

これは間違いなく脾臓破裂で死ぬ。

脾臓ってイマイチ何やってるとこだか分かんねぇけど、破裂したら即死すんだぞ。分かってんのかこら。

うりゃうりゃと、肘か何かを押し返してみた。

が、ビクともしない。

ヤバい、これは本当に内臓が飛び出て死ぬかもしれない。

そこへ更に追い討ちをかけるかのように、誰かが肩にもたれかかってきた…………と思ったらこれは総司だった。

総司ならいい。

むしろ頭を撫でてやりたいところだが、俺の両手は総司の背中に回されたまま、総司と誰かの間でプレスされてしまっている。

そこでふと疑問が湧いた。

俺と総司はこんなに密着しているというのに、どうして俺の腹部に肘っぽいものが当たってるんだ?

まさか幽霊か?

恐る恐る顔を下に向け、僅かな隙間から腹部を見下ろすと、それは肘ではなく総司の手の平だった。

何だ、総司か。なら許す。

恐らく、密着しすぎたせいで手のやり場がなくなってしまったんだろう。

何とか隙間を作ってやりたいのはやまやまだが、四方八方から人が押し寄せてきていて手を一ミリも動かせない。

まぁ、総司になら別に脾臓を破裂させられたって構わねぇか、と思ったところで、あまりの暑さに首筋を汗が伝っていくのを感じた。

総司に垂らしちゃ悪いと思ったが、総司は現在頭を俺の肩に埋めている。

むしろ顔が首に当たっているかもしれない。

何とか避けてくれ、と首を反対側に伸ばそうとしたら、不意に首筋に総司の鼻が当てられた。


「!?」


そのまま思い切り息を吸い込まれ、思わず鳥肌立つ。


「なにしてんだよ!?」


小声で聞いたが、返事がない。

聞こえなかったのかと思ってもう一度口を開けた瞬間、再び電車が大きく揺れた。

そして、何か温かくてぬめっとしたものが、首筋を這った。


「っ!?」


咄嗟に大声で叫びそうになったのを、頬の内側を噛むことでどうにか我慢する。


「そうじ…!」


さすがに慌てて総司をたしなめたが、視界の端に綺麗に上げられた口角が見えただけだった。


「!?!?!?」


間髪入れずに、今度は肘だと思っていた総司の手の平がワイシャツの上を這い回り始めた。

これは確実にヤバいと頭の中で警鐘が鳴り、慌てて体を離そうと試みるが、どうしても密着したまま身動きが取れない。

そのうちに総司の指が乳首を見つけ、そこを執拗に弄り出してしまった。

しかも、耳元で聞こえる総司の呼吸が、ハンパなくエロくて荒い。

完全に発情してやがる。


「はぁ……土方さん…」


――ふざけんじゃねぇぇ!

俺は近年稀に見る狼狽ぶりで、もじもじと体を動かした。

これって……これってもしかしなくても、俺、今痴漢されてんだよな?

しかも、恋人(年下)に痴漢されてんだよな?


「総司っ!いい加減にしろっ」

「無理です」

「んなっ……」


俺が手を出すならまだしも、総司から仕掛けてくるってのはどういう風の吹き回しだよ。

ありえねぇだろ!

そんなことを考えている間にも、総司の行為はどんどんエスカレートしていく。

俺は総司に半勃ちの逸物を擦り付けられ、乳首を弄っているのとは逆の手で、俺の萎えた息子をやわやわと揉み込まれた。

何とか阻止したくても、四方八方からぎゅうぎゅうに押されまくっているため、全く身動きが取れない。

しかも無理やり体勢を変えようとする度に、女子高生の参考書が肉に食い込んできてかなり痛い。


「土方さん……いい匂い」

「おま…っ…」


そして相変わらず、総司は盛っている。

昨日散々ヤっただろうが!というセリフが喉まできて、再び胸中へと戻っていった。

ソファで一回、風呂で一回、洗面所で一回、ベッドで数回。

そりゃあ新しい希望の朝が来ちまってもおかしくはねぇ長さだよな。

だがしかしそれを今、公共の場で言うわけにはいかない。

二人して公然猥褻罪的なもので捕まりでもしたら、さすがに笑えねぇだろう。


「総、司!」


俺は総司の耳元で懇願するように囁いてみた。

すると、なんてこった、総司の手の動きが益々激しくなった。


「ハァ……土方さんの声、グッときちゃいます…」


くるなぁぁぁぁ!!!

俺はもがいてもがいてもがきまくった。

可哀想だとは思ったが、総司の足を踏んでみたら「もっと…」と言われた。

総司が性的マゾなのを忘れていた。

何とか顔を離して睨み付けることで牽制しようとしたら、今度は「ゾクゾクします」と言われた。

最早、為すすべがない。

総司の手はスーツ越しに俺のち○こを揉み続け、息遣いは荒くなる一方である。

背水の陣となった俺は、いよいよ覚悟を決めることにした。




―|toptsugi#




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