土沖大量生産企画! | ナノ


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「土方さん・・・、近藤さん・・・会いたいな・・・。」
前世の記憶を受け継いで生まれ変わったのは嬉しかったけど、僕の周りには新選組のみんなはいつまでたっても現れず、過ごすこと15年。

僕も、もう中学3年生・・・受験生だよ。前世で志半ばに離ればなれになってしまって、生まれ変わったら会いたいと思う人達に会えず、やさぐれていた僕は義務教育とは言えとも学校をさぼりがちになっていた。

教師も僕には手をやいていたけど、今のご時世、本気で怒ると後々問題になるからって、見て見ぬふりして軽く注意するくらいだ。

・・・土方さんだったら、もっと『総司、この野郎!!さぼんじゃねぇ!!』とか言って、僕の事を思って真剣に怒ってくれるんだろうな。・・・恋人だった土方さんのことを考えたら、また悲しくなってきちゃった。

本当は高校だって興味ないけれど、中卒じゃ就職だって困るし、仕方なしに家から通える高校のパンフレットを見ていた。幾つ目かのパンフレットをみていた矢先・・・

「こ、近藤さん!?」
薄桜学園のパンフレットを見ていたら、学園長の挨拶のページで近藤さんの写真も一緒に掲載されていた・

ああ・・・!やっと近藤さんを見つけた!新選組の剣として近藤さんを守りきれなかった自分が悔しくて許せなかったし、今度こそ、近藤さんの役に立ちたいとずっと思っていた。
僕が入る高校は薄桜学園しかない!!

薄桜学園は偏差値が高くて、レベルも高いから、先生にはしきりに他の高校を薦められたけど、誰にだって邪魔はさせない。本気になった僕を甘く見ないで欲しいな。

成績の順位も下から数えた方が早かった僕が、上位5位以内に入るようになったのはそう時間はかからなかったし、薄桜学園も余裕で合格圏内に入った。ふふん。僕だってやれば出来る子なんだよ。・・・面倒くさいから、やらないだけで。

そして、受験日当日・・・更なる奇跡が僕を待っていた。
何と、僕がいる教室の監督教員が土方さんだった。僕のこと覚えているかな・・・。

土方さんのことが気になって集中できなくて、問題が解けなくなっていた。このままじゃ、だめだってわかっているんだけど、土方さんが手が届く距離にいるのに触れられない現実に焦っていた時、消しゴムを落としてしまった。僕の馬鹿・・・。

するとそれに気付いた土方さんは近づいてきて、「ほら、気をつけろよ。」と消しゴムを拾って僕の手に渡してくれた。

僕のことなんか覚えてない素振りで又歩いていった土方さんを見て、絶望を感じた時、消しゴム以外に何か握っていることに気づいた。手のひらを見てみると小さなメモがあった。

試験中なので怪しまれないようにこっそり見ると「総司・・・会えて嬉しい。お前ならやれる。入学式の後、中庭にある桜の木の下で待っている。」と書かれていた。

土方さんは僕を覚えていてくれたし、ちゃんと僕の存在に気付いてくれたんだ!
そのことだけで、僕は嬉しくてたまらなくて・・・泣きそうになってしまった。

土方さんをみると、親しい人しかわからないだろうけど、土方さんの雰囲気が柔らかくなって、僕を見つめながらそっと頷いてくれた。

僕は俄然やる気と集中力が出て、問題を次々解いていった。今度こそ土方さんと近藤さんの側にいるんだ。これは、その為の一歩。

努力の甲斐があって無事、薄桜学園に入ることが出来た。平助や一君もこの学園を受験していたらしく、感動の再会が出来た。佐之さんや、新八さん達も教員でいて、また新選組のみんなと共に一緒の時間を歩めるのだと、意気込んでいたら、何と芹沢さんやあの風間までいてこれには唖然とした。・・・これから行く先、波瀾万丈かも?

そうこうしているうちに、土方さんとの約束の時間が来てしまった。待たせちゃうと行けない。あれから会いたくて、たまらなかったけれど、今日まで我慢し続けた。ふふ・・・、びっくりしてくれるかな。

「総司はまだ来てねぇか・・・ホームルームしている時間か・・・?今年の桜は満開に咲いているな・・・。」
俺も恋仲だった総司との再会を心待ちにしていて、約束の時間よりも早く中庭についてしまった。早く、来い・・・、総司。やっとお前と共に生きられるんだ。この戦いのない平和な時代で。

「土方さんっ!あっ、ここでは先生ですね。土方先生。」
俺の処へ駆け寄ってくる足音と愛しい総司の声が聞こえてきた。

振り向くとそこには、女子制服を着た総司が立っていた。
「あ・・・?」

一瞬、時間が止まった。見間違いか?目を擦ってもう一度総司を見ても、変わらない。
だって、受験の時、総司は男の格好だったんだぞっ?

「あはは。面白い顔〜。やっぱり騙されてましたね。今生では、僕女の子に生まれかわったんですよ。前世の記憶がある分、男であった自分に誇りを持っているし、普段は男の格好してるから、みんな騙されてくれるんですよね。」
悪戯大成功といわんばかりに総司は目が点な俺を見ながら爆笑して、機嫌が良い

「たくっ・・・。お前と言う奴は。まあ、男だろうが女だろうが関係ねぇ。総司だから、俺は何度でも惚れるんだ。」
呆れつつも、心から総司を慈しむ微笑みを浮かべた。こういうじゃれ合いも久々だった。前世で総司が病に倒れてからというもの、何気ない日常が掛け替えのない物だと痛感していたから、総司とまた過ごせる時間が嬉しかった。

「・・・っ!!この・・・タラシ!・・・でも、僕だって何度だって貴方を好きになるし・・・土方さんにだってこの思いは負けないんだから!」
俺の顔をみた総司が、真っ赤になって言い返してきた。可愛い奴だ。クスクス笑っていると、ムッとして総司の機嫌が悪くなった。

「今、僕は女の子なんで、衆道じゃない分、周りの目を気にしなくて良いんですよ。島原行く度、女の人が土方さんに色目を使っても、その場じゃ牽制できなくて随分悔しい思いしてたの知っていますか?まあ、卒業するまでは教員と生徒なんで、いちゃつけませんけどね。」
と過去に相当不満に思っても言えなかったことを、ここぞとばかりに言い始めた。

「馬鹿か、お前。俺が遊女なんかに目くれてなかったし、ずっとお前を見つめていたこと知っているだろうが。」
指先で総司の額をつつき、髪を優しく撫でた。俺たちは相思相愛だが、まだ総司は高校生になったばかりだ。また総司とゆっくり関係を築いて、大切にしていきたい。

「〜〜っ!!大人の余裕ですか!!もう知らない!」
完全に拗ねて背を向け、帰ろうとする。

「待てっ!俺が悪かった。」
慌てて、総司の手を掴み、総司の機嫌を直そうとした矢先、ギュッと総司が抱きついてきた。

「ふふふ、冗談ですよ。」
上目使いで見つめ、可愛らしい笑みを浮かべた。この天然小悪魔がっ!自分の魅力わかってねぇだろうがよ!


「今年からはお前が入学して・・・、斎藤や藤堂も他の新選組の奴らも入学してきて・・・。またあの頃に戻ったみたいだ。前出来なかったことをして思い出を沢山作ろうな。」
顔を真っ赤にして呆然としている総司の手を繋ぎ、歩き始めた。

「はい・・・っ!」
と我に返った総司が嬉しそうに返事をする。

「僕、剣道も実はずっとやっているんですよ。土方先生、剣道部顧問ですよね?僕入部してあげます。そして、先生を負かしてみせますよ。」
と輝いた表情を見せる。こんな生き生きといた総司をみるのは、何時ぶりだろう。


今という時間を大切にしながら、今度こそお前との未来を勝ち取るんだ。もう、離してやらねぇし、何からだってお前を守って見せる。


―それからの僕つは、あいかわらずな毎日を過ごしている。


「そ、総司!ちゃんと、胴着の前しっかり合わせろって言ってんだろ!昔と違うんだぞっ!」剣道部での稽古中、口うるさい身だしなみについて、注意してくる。

「うるさいな。これくらい普通ですよ。土方さんって、ムッツリなんですね。」土方さんの小言に、からかいながら幸せな毎日を送っている。そんな、僕らを呆れているけど、微笑ましい様子で、見つめている一君と平助。

みんなとまた、巡り会えた奇跡に感謝だ。この幸せな毎日が何時までも続きますように。




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