土沖大量生産企画! | ナノ


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<脳内イメージ>
【爆音推奨】『「マジLOVE1000%」が熱血ソングだったから歌ってみた』の熱さと真剣なバカ騒ぎっぷり
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「よーしてめえら。これから夕方までに片を付けるぞ。気合い入れていけよ?間に合わなかったら全員飯抜きだ」


明日から夏休みという日。クラブ活動も今日だけは特別に休みという絶好のフリーデイのはずだった。他のクラスや学年はとっくに下校し、もう学校に残っているのは土方のクラス以外には職員しかいない。

無駄とも思えるほどに青く突き抜けた空に白い雲がぽかりぷかりと浮かんでいる。蝉があちこちでジャンジャンと鳴き喚き、暑さを増幅させていた。日陰にいても倒れそうなほど暑い午後1時。


体育倉庫横の日陰に集められた土方組は、全員体操服姿で首や頭にはタオルを巻いているという出で立ちだった。「だーりィ…」「あちい!」と年相応の反応を見せてはいるが、どこか楽しげでもあった。


「1〜4班は切り出しと組立。5班と6班は椀と箸と素麺だ。それぞれ班長の指示に従え。んじゃいっちょやるぜ野郎ども!」

「おう!」

威勢よく拳を握り、暑苦しくも爽やかな体操服男子達が、それぞれ持ち場へと散って行った。各班には事前に担当が割り振られ、それぞれメモや設計図を手にした班長の指揮の下、作業を開始した。



「いやー、若人ってのはいいなあ源さん!」

「そうだねえ」

「俺も参加したいなあ!」

「……やめときなさい」

校舎の一角の学園長室で窓の外を眺めながら麦茶を片手にチラチラと顔色を伺っているのは学園長の近藤。

窓の外の生徒達と土方を微笑ましく見守り、近藤ににこりとダメだしをする昔なじみの井上に、近藤はがっくりと肩を落とした。




太陽と共に動く影を追いながら、汗塗れで蠢く男子達と担任土方の努力の結果、まだ十分日のあるうちに、素晴らしく立体感のあるそうめん流しの仕掛けと大量の素麺、竹のいい香りのする食器ができあがった。

「よーし、じゃあ流すぞー。お前ら準備はいいかー?」

「おーう!!」

流れの途中でジャンプする素麺をキャッチすべく群がる野郎ども、敢えて急流で腕を競う野郎ども、最後のざるの手前で手堅くゲットしようという野郎ども。土方は、そんな生徒たちに目を細めながら素麺を流し続けた。



「はい、先生」

楽しげな歓声が向こうの方で上がる中、総司はめんつゆを入れた竹椀と竹箸を土方に差し出した。

「代わりますから食べて来てください」

「あ?ああ気にすんな、お前こそしっかり食って来い」

「僕もうおなかいっぱいなんで。ね?」

素麺を流しながら声を潜めて押し問答。

1学期は散々古典の授業をサボり、小テストに目いっぱい落書きをし、中間・期末テストの答案にはとある俳句と挿絵を描きつけた人物とは思えない申し出に土方は苦笑いした。

「んじゃ折角だから」

暫く無言で、差し出された物と総司の顔を交互に目をやり、土方は素麺の入ったざるを総司に渡して椀と箸を受け取った。

「ありがとな」


土方ははしゃぐ生徒たちに「俺のを寄越せ!」と割り入った。意外と掴めねえもんだな、という土方の椀に、周りから生徒たちが取った素麺を入れてやったり、慣れてきた土方が「返すぞ」と取った素麺を入れてやったりするのを、総司は素麺を流しながら嬉しそうに眺めていた。


「あれ!?そーじ!追加持って来たぜ!」

素麺班長の平助が、大きなざるを抱えてやって来てニカッと笑った。

「うん、ありがとう。素麺が歩いてるのかと思った」

「うるせえよ!」

総司もふふ、と笑い、ざるを受け取った。

「平助も食べておいでよ。もうそっちも終わりでしょ?」

「ああ!もーなんで俺が素麺班なんだよー!よーし素麺班!!ついに俺達の時が来た!!食うぜ!もう食って食って食いまくっちゃおうぜ!!」

「おー!!」

数人の素麺班員に声をかけて竹椀と竹箸を握り、仕掛けに群がる野郎どもに場所取り合戦を仕掛ける平助に素麺班が続いた。

総司はやれやれ、と肩を竦めると、よいしょっとざるを抱え直した。

「さ!じゃんじゃん流すよ〜!」と総司が声をかければ「よっしゃこーい!!」と野郎どもが吠えた。そんな生徒たちを、土方は嬉しそうに眺めていた。…のを総司はちょっとやきもきしながら見ていた。




たかが素麺、されど素麺だ。土方がこの日のために取り寄せたという素麺は普通に食べても十分旨いが、汗水たらして組み上げた仕掛けで取り合って食べたそれは格別だった。


楽しく食べて満腹になった野郎どもは、椀と箸を持って仕掛けと一緒に記念写真を撮り、また各班長の指示の下、分解撤去と洗い物や片付けに取りかかった。

ちょうど辺りも暗くなってきたが、まだ気温は高かった。ホースで水を撒いていた生徒が「噴水〜!」とホースの先を摘まんで真上に向ければ、手の空いた野郎どもは我先にとその下に入り、案の定どいつもこいつもあっちもこっちも水浸しになり、足元は撥ねた泥水でどろどろだ。

「コラア!!てめえらそんな足じゃ靴履けねえじゃねえか!!そこへ並びやがれ!!」

土方の怒声が響き渡り、体育倉庫の近くにあった木製の平均台の上に全員を立たせ、膝下を狙ってホースで水をぶち当てた。水勢に押されて落ちる生徒には「やり直し!」と命じ、足がきれいになった生徒は乾くまで平均台の前の側溝に立たせた。

「先生!これ痛てえよ!!」

側溝の上は裸足で歩くものではない。が、上がる苦情もどこ吹く風で土方は楽しげに笑っていた。

「余計なことしやがった罰なんだから我慢しやがれ!」

「ぎゃはは!!足の裏網目ついたぜ!?」

どこまでも調子のいいクラスだ、と笑いながら土方は暮れゆく空を見上げた。




「んじゃおめえら、これからがメインイベントだ」

円陣を組むようにして集まった野郎どもに、土方は極秘任務でも伝えるように声のトーンを落とした。

「おおー!!」

「ここからは個人戦だ。いいか?二人ずつ南校舎の正面玄関から入ったら、分かれてそれぞれ順路通りに進め。片方は北校舎の第一理科室、片方は特別棟の音楽室でくじをひき、そこに書かれたものを探してここまで持ってくるんだ」

言っている内容はバカバカしいものだったが、隊長よろしくびしびしと指示を出す土方に、野郎どももつられて声を潜めた。「一人で!?」「理科室!?」と抑えめにどよめく野郎どもに土方はにやりと笑いかけた。

「なんだ?おめえらタマついてんだろ?ただの借り物競争だろうが。よし。うだうだ言ってても始まらねえ。出席番号順に二人ずつ行け。5分経ったら次のヤツだ。いいな?じゃ、平助、ここは頼む」

えーまた俺かよ!!とごねる平助に、ズルイズルイと小声で騒ぐ野郎どもに対し、土方は実に楽しげだ。恐らく、土方の授業を受けたことのある者でもこれまでに見たことがないほどだろう。

「んじゃ、みんな行っちまってもここで一人で待ってるか?」

うっとたじろぐかわいい野郎どももいれば「えー!?」「先生は!?」と小さな抗議も上がった。

「俺は校内を巡回する。おめえらが万が一腰でも抜かしたらいけねえからな。呼んだら迎えに行ってやるが、俺と顔を合わせた時点でそいつは失格だ。古典の宿題を倍にしてやる」

言い終わるなり「横暴だ!!」「鬼教師!!」と声がかかるが、土方は全く意に介さない様子でパンパンと手を叩いた。

「いいか野郎ども!ここで根性見せてみろ!くじの中には当たりもある!それが何かは当たったヤツだけが知ればいい!」

「おおー!」

「行ってこい相川上田!!」

「よっしゃ!」「頑張れよ!!」と、本当にノリのよいクラスである。土方に名前を呼ばれた二人は意気揚々と校舎に向かって行った。その背中を目で追う野郎どもはそわそわと落ち着かず、「怖くねーよ!」と小競り合ったり、「ちょ、今のうちにトイレ行っとこうぜ?」と誤魔化したりして、自分の順番までの時間を過ごしていた。



「そーじぃ、きのしたぁ、時間だぜ〜」

平助にそう声をかけられ、次の二人が残りの野郎どもに手を振りながら校舎へと向かった時、ぎゃああああ!と校舎の奥から悲鳴が聞こえ、残りの野郎どもはびくりと飛び上がった。


実は、今日のイベントは土方のクラスのPTC(保護者参加型学級活動?)というやつで、竹の調達から処分、細工をする道具類を揃えたり、順路の紙を貼ったり、途中で脅かしたりと、それぞれの得意分野と可能な範囲で保護者が裏方協力していたのだった。

まさかそんなことになっているとは露ほども思わず、校内には土方のクラスしかいないと思っている野郎どもはびくびくと怯え始めたが、時間が来ると死刑宣告のように平助に名前を呼ばれて、一人また一人と旅立って行った。




―|toptsugi#




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