「…99ッ……100…!!ッハァ!」


バタンと甲板に大の字に広がる。


「ふぅ…」


わたしは一応2番隊の戦闘員。だけど、おそらく…、いや確実にこの船の中では最弱だ。
みんなの足手纏いにはなりたくない。だから少しでも筋力をつけようと筋トレに勤しんでいる。

でも腕立て伏せも腹筋も100回やるのがやっとで、こんなの筋トレと言えるのかとも思えてくる。


「徐々に増やしていけばいいよね」


自分に言い聞かせるように呟いてわたしは立ち上がった。

あれだけの筋トレだけでもわたしの喉は渇きを訴え、カラカラだ。お水をもらいに行こうと食堂への道を歩いた。










「名前」


書庫の前を通り過ぎようとした時、声が聞こえて足が止まる。

それはわたしが恋する人のもので、呼ばれたのはその人が愛する人。

悪いとは思いつつも開いたままの扉から中の様子を覗くと、本棚に向かい本を取り出して中をペラペラ捲る名前さんの姿と、それを後ろから覗き込むエース隊長の姿があった。


「何してんの?」
「マルコに頼まれてた調べものだよ」
「ふーん…」


なぜかふて腐れたようなエース隊長の声に、どうしたの?と名前さんの声も続いて聞こえた。


「マルコばっかずりィー」
「え?」
「…名前はおれのなのに」
「エ、エース?」


顔を真っ赤にした名前さんが慌てた様子で振り返った。
エース隊長の表情はここからじゃ見えないけど、きっと、名前さんにしか見せない顔をしてるんだと思う。


「あいつ名前に頼みごとしすぎ、ルイトに頼めばいいじゃねぇか…」
「ルイトくんも忙しいんだよ…、それにこれは航海術の知識がいるから…んっ…!」


名前さんの言葉が遮られ、彼女の手から本が落ち、バタンと音が鳴った。


「……んんっ…ふ…」


名前さんが本棚に押し付けられ、エースさんの背中に隠された。


わたしは一瞬目を見開いて硬直したが、すぐに速足でその場を去った。


見たく…なかった……。













「んっふ…!エッ、エースッ!!」


彼の肩を両手で思い切り押して距離をとる。しかし、彼の手はわたしの頬に触れたまま離れない。

それに、エースの寂しげな表情に、不覚にもキュンとしてしまった…。


「……苦しいよ…」
「じゃあ苦しくないようにする」
「ちょっ…」

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