「あぁ!?名前がいなくなっただと!!?」
「おれがトイレ行ってる間に…!ほんとすまねぇ!!」
「謝って済む問題かよい!!」
エースと名前が出かけて数時間後、もうとっくに昼も過ぎ、隊員の訓練の相手を終え、そろそろ夕飯の準備を始めようかという時、エースが甲板に飛び乗って来た。
そして第一声が「名前がいなくなった!!」だ。
その場にいた奴ら全員が立ち上がりエースを囲う。
すぐに話は船中に回りマルコが目の色を変えて甲板に飛び出してきた。
「どういうことだ、ちゃんと探したのかよい!」
「探したに決まってんだろ!中走り回って人にも聞いたけど見つかんなかった」
「マルコ、これは誘拐の線もあるぞ」
イゾウが言った言葉に途端に思い空気になる。
だが十分に考えられる可能性だ。
「赤髪の島だと安心してたが…」
いつのまにか甲板には名前がいなくなったことを聞きつけた船員達でいっぱいになっていた。
マルコが腕を組んで眉間に皺をこれでもかを深く刻む。
しかしだ。誘拐ならあるはずの身代金の要求もないし打つ手がない。
名前が無事なのかすらわからねぇ。
「マルコ隊長!とにかくおれらは島ん中探してきます!」
「たしかに!まだ遊園地しか探してねぇなら、まだ島のどこかにいるかもしれねぇ!」
船員の誰かが声を上げそれに賛同する声が続く。
しかし、この島は赤髪の島で、あまり大勢で上陸するなと言われてんだ。
名前を探すためと言えど四皇同士が約束を破るなんてことをすりゃあ一体どうなるか…。
マルコはそんな船員達を見て、仕方ないというように目を伏せた。
「わかったよい、オヤジと赤髪にはおれから伝える。行ける奴は島を探しに行ってくれ。島の住民を怖がらせるようなことは絶対するなよ」
「「はい!!」」
船員が背筋を伸ばし手を上げた。
そして続々と船から降り島の中を探しに向かっていった。
「僕たちも行ってくるよ」
「あぁ、大事な妹の危機だからな」
ハルタとイゾウが揃って船を飛び降りた。
残ったのはおれとエースとマルコ。
もちろんエースもおれも行ってくる!と飛び出して行ったわけだが。
「マルコ、行きたいんだろ?」
「あ?」
「そわそわしてんのバレバレだぞ」
「……」
気まずそうに黙るマルコにおれはからかうように笑った。
見くびってもらっちゃ困るぜ。お前と何年一緒にいると思ってんだ。
「行ってこいよ、おれが船に残るぜ。名前が帰ってきたらすぐ知らせてやるから」
それにお前なら上空から名前を探せるだろ?
そう言ってやれば「確かにな」とマルコが笑った。
「じゃ、頼むよい。サッチ」
「あぁ、必ず見つけろよ」
「当たり前だろい」
タンッ
マルコが甲板を蹴れば、次の瞬間には青い鳥が空に羽ばたく。
「相変わらずキレーだな」
おれも呑気なフリをしてねえといけねえくらい名前がいなくなったことに焦ってるようだ。
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