「悪いがおれにも原因はわからない、グランドラインの不思議な現象としか…」
「元に戻るのか!?」
「それもわからないとしか……」
「そうかよい……」
医務室の椅子に座りマルコの服の袖を掴む不安気な名前に視線が集まる。
さっき話したけどどうやら記憶もその当時のものしかないようで、エースのことはもちろん知らないし、おれのことだって怖がって避けている時期。
なんだろう。心にポッカリ穴が開いたように寂しい。
医務室を出て両手を首の後ろに回す。
「さーてどうするか」
「どうするも何もしばらくこのままだよい」
「だよなー」
ちらりと名前に視線をやると、怯えた様子は変わらず、マルコの傍をピタリと歩いていた。
「てか名前、今何歳だ?」
「ひっ……10歳…」
「てことは…10年戻ってるわけか」
ってん?名前がここに来たのって8歳の時だろ?2年経った10歳のころにはだいぶ打ち解けてた気がすんだけどなぁ。
「なぁ、名前?おれのことわかるよな?」
「……サッチ…だけど…違う」
「何が!?」
すぐに顔を背けられた。ねぇ何が違うの!?お願い教えて!?
おれ、名前に避けられるの結構堪えるんだけど!?
「マルコ……」
「ん?」
名前の呼びかけにマルコは優しげに応える。その笑顔久々に見た気がするぜ。
「この人…」
「……おいエース…」
「んぁ?」
まじまじと舐めるように自分を見つめているエースに名前が困ったようにマルコを見た。
うわ、可愛い。頼むからおれにも可愛い顔見せて。
「大丈夫だよい名前、こいつは仲間だ。エースお前も自己紹介しろい」
「あ、あぁ」
マルコに促され、エースは名前の前に立った。
普段からエースと名前にはそれなりの身長差があったが、今回はいつもの比じゃない。名前がすごい見上げてる。
「おれはエースってんだ、よろしくな、名前!!」
ニッといつもの笑顔を見せるエースに名前はあっけにとられたようにその様子を見ていた。しかし、すぐに安心したように微笑んだ。
「よろしくお願いします」
エースはやはりエース、あっという間に名前から笑顔を引き出しやがった。
おれたちが10年かけて積み重ねてきた絆もあっという間に飛び越えて恋人っつう立場を勝ち取った男だもんな当然と言えば当然か。
エースはきっちり名前の隣を確保し、マルコとエースに挟まれている名前はもう最強の護衛を付けているようにしか見えない。
「あ、いたわ!名前!」
扉が開く音と名前を呼ぶ高い声。おれたちが振り返ればその人物はすぐにわかった。開いたのは医務室の隣にあるナース室で出てきたのはミラノ
名前の姿を見たミラノはニコリと綺麗に笑い、名前も見知った顔に逢えてうれしいのだろう、ぱぁっと顔を明るくさせた。
「ミラノさん!」
ミラノが名前に駆け寄る。
そして、かわいいー!と抱きしめたかと思うと今度はおれたちを見て若干睨みを利かせてきた。マルコが片眉を上げ怪訝な顔をした。
「全くもう!この子の服とかちゃんと見てあげてください!」
「「「あ……」」」
不思議そうにこちらを見上げる名前の服装。それは大人名前が着ていた服そのままで服のサイズに変化はない。
つまり、若干よれよれっとして何とか肩で引っ掛かっているTシャツもずれ落ちるのは時間の問題だろうというほどだった。
誰も気づかなかったのだからこれだから男は!とミラノに怒られても誰も反抗は出来なかった。
「名前、いらっしゃい、洋服見繕ってあげるわ」
「えっと……」
ミラノにそう言われた名前は、行ってもいい?と聞くようにマルコを見た。
「行ってこい、食堂で待ってるよい」
「うん!」
ミラノに手を引かれ名前はナース室に入って行った。その直後ナース室からは、かわいい〜〜!!と船底中に響く声が聞こえた。
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