いしや〜きいも〜おいもっ



とある休日、この声が聞こえリビングで寛いでいたおれたちは思わず飛び上がった。




「「名前ッ!!焼き芋食いたい!!」」




ルフィとともに、キッチンで夕食作りにいそしんでいた名前のもとへ向かった。



「え〜、今食べちゃったら夕飯食べられなくなるよ」



だが名前は、手を止めてこちらを見たものの、ダメダメ。と首を横に振った。それにおれがえー。と肩を落とすと、隣りで弟がケロっとした声で言った。



「なーに言ってんだ名前!おれたちが飯残したことあるか!?」
「え…っ!」



このルフィの正論におれも名前も、目を開いて驚いた。
こいつは、ほんとたまにだけ核心をつく。



「ぜーったい晩飯残さねえし!ちゃんと美味しく食べるからぁ〜!!」



頼む〜!!と名前の腹あたりにしがみついて懇願する弟に、名前が困ったようにおれをみた。おれも口パクで、頼むよ。と言えば、名前は、はぁ。と諦めたように溜息をつき、わかった。と、諦めたように言った。



「ほんとかぁ〜!?名前好きだー!!」
「う、うん!わかった。わかったから、は、離れて〜!」



苦しい〜!と声を上げる姉を見て、おれは名前からルフィを引きはがした。



「じゃあ、ちょっと待ってね」
「おうっ!!」



料理中だったため、名前は一度手を洗ってエプロンで拭くと、鞄から財布を取り出した。



「はい、エースに渡しておくね」
「おぅ、美味いの選んでくるな」



二千ベリーをおれの手に乗せ、頼んだ!と笑った名前におれもニッて笑う。



「って、もう声聞こえなくなってるけど大丈夫?焼き芋屋さん行っちゃったんじゃ…」
「大丈夫だ、こいつの鼻があるから」
「おう!任せろ!」



行ってくる!と玄関へ走り、靴を履いた。いってらっしゃい。と手を振ってくれた名前に応えて、手を上げた。



玄関前、2人で軽く準備運動をする。ルフィなんて、ぴょんぴょん飛んだり、シャドーボクシングしたり、何の準備だと思いたくなるほど。


「よし!ルフィ、どっちだ!」
「あっちだ!」



勢いよく右を指したルフィに、さすがだぜ。と頭を撫でてやればシシッと嬉しそうに鼻を掻いた。



「行くかっ!!」
「おうっ!」



ダッ!!2人人同時に走り出す。ルフィの鼻を頼りに、角を曲がったり、していたところで



「あら、エースちゃんルフィちゃん!2人でお出掛け?」
「おう!焼き芋買いに行くんだ!」
「あら〜、いいわねぇ、気を付けるのよ〜」
「おう!」
「おばちゃんも気を付けてな!」



隣んちのおばちゃんに遭遇したが、名前に挨拶はちゃんとするようにって言われてるから、軽く話して別れた。



「あれ」
「どうした?」
「芋の匂いが…、あれ?」



鼻をスンスン効かせているが、眉を寄せるルフィに、おれも首を傾げた。

まさか、焼き芋の匂いが消えたか…?



「とにかく急ぐぞ!」
「おう!」



また走り、暫くしたところで、焼き芋屋のトラックを発見した。




「おーい!焼き芋くれェー!」
「買うぞォー!」



焼き芋屋のおっちゃんは、ミラーでおれたちの姿を確認したのか、トラックを止め、降りてきてくれた。



「ハァハァッ…、これで買える分だけくれ…!」



おれは、膝に手を置きながらおっちゃんに二千ベリーを渡し、ルフィはそのまま道に倒れ込み、大の字で寝っ転がった。


だが、おれが差し出した二千ベリーをおっちゃんは受け取らず、困ったように笑うと、悪いね。と言った。



「売り切れたんだ」
「「なぁっ…!?」」



ほら。と、トラックの荷台部分の焼き芋が入っているところを見せてくれたが、確かに何も入っていなく、微かに焼き芋の匂いが残っていた。



「さっきね、ゴツい人が来て、全部!っつって、買ってっちまったんだ。悪いね、また今度買いにおいで」
「マジかよ…」
「もう焼き芋ねェのか!?絶対にか!?」



おっちゃんに掴みかかるルフィを、仕方ねぇだろ。と引き剥がした。



「えー!いやだ!おれ焼き芋食いてェ!!」



絶対食う!と座り込んだルフィに、ハァとため息が出た。

まったくこいつは…。



「わかった、じゃあよ、スーパー寄ってこうぜ」



なんでだ?と言う風に首を傾げてこちらをみたルフィの頭に手を乗せて撫でてやる。



「さつまいも買って帰ろう、名前が焼き芋作ってくれるかもしれねェ」
「おうっ!」



パァッと顔を明るくしたルフィは、すぐに立ち上がると、スーパー行こう!とおれの手を引いて歩き出した。



「おっちゃんありがとな!」
「いやいや、悪いねぇ」



おっちゃんに次は買うという約束を取り付けて、スーパーでさつまいもを買って家に帰った。



「ただいま……、ん?」
「名前!焼き芋作っ…!」
「この匂いって…」



ルフィと顔を合わせた。靴を脱ぎ捨て部屋へ上がると



「「焼き芋ォーーー!!」」



でっけぇ皿いっぱいに盛られた焼き芋が目に入り、思わず叫んでしまった。ルフィの奴なんか、もう頬張ってやがるし。
おかえりー、とキッチンから名前の声が聞こえた。



「もしかして、名前が買って来てくれたのか…?」
「ほんとか!ありがとな!」
「あっ、ううん、わたしじゃないよ〜」



ガープじいちゃん。


名前の口から発せられた名前におれとルフィの背中に冷たいものが流れた。



「お前ら…」


恐る恐る振り返る。



「じ、じじぃ…!」
「じ、じいちゃん…!」

「わしが帰って来たというのに、お前ら気付きもせず焼き芋に食いつきおって!まずはじいちゃん大好きじゃろうが!言ってみい!」



「だ、誰が言うかそんなこと!!」
「じ、じいちゃん大好き…っ!」
「おいルフィ!ビビんな!」
「エース…、お前さんも早く言わんと…」


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