ふっと意識が浮上する。
だけどまだ瞼が重くて持ち上げられない。身体の上に乗っている布団を引っ張ってかぶり直すと、どこか安心できる香りに包まれた。
「ン……」
「起きたか?」
「ン…!?」
ゆっくりゆっくりと布団から顔を出すと、ベッドの横に腰に手をあてて仁王立ちしているエースがこちらを見下ろしていた。
「エッ、エース!?」
驚いて起き上がると、途端に頭にキーンとした痛みが広がった。
「いた…」
「ったく、何やってんだよ」
差し出されたエースの手を掴んでベッドから起き上がると、水飲む?と手渡され、受け取ってゆっくりと口に含んだ。
ここはエースの部屋なのかな。昨日同居中の彼と喧嘩して追い出されて、一人で飲んでいたところまでは覚えてるけど…。これは一体どういう状況なんだろうか…。
「エース」
「ん?」
「なんでいるの?」
「っはぁ!?名前が呼んだんだろ」
「えっ、わたし!?」
「そうだよ、夜中の2時に」
「う、うそ!ごめん…」
「いや、いいけど、気にすんな」
ポンと頭に手が乗せられる。軽く撫でつけられるとなんとなく心が安心した。
わたし、いつもエースを都合よく利用している気がする。彼の気持ちに応えないくせにこういうときだけ頼ってる。
それにひどいこともした。2時間近く待たせてドタキャンすれば呆れて嫌いになってくれると友達に言われたままのことを実行した。だけど、エースは笑って許してくれて、本当に申し訳なく思った。
「…ごめんエース、わたし帰るね」
「は?お前家ないのにどこに帰るんだよ?」
「それは…、でもエースに迷惑かけられないよ」
「おれはいいから、困ってんなら頼れ」
グッと腕を引かれ、引き寄せられたかと思うと、エースに抱きしめられていた。頭の上からエースの声がする。
「おれはお前が好きなんだよ、頼られて嫌なわけねぇだろ」
キュンと胸が締まる。初めて会った時から言われている言葉。この言葉を言われると毎回胸の奥がうずく。
「それにさぁ、無意識にでもおれを呼ぶってさ、名前もおれが好きなんじゃねぇの?」
ドキンと胸の音が響いたんじゃないかと思った。
「まぁいいけど、やっと彼氏と別れたんだろ?お前、覚悟してろよな」
「えっ!?」
「さっ、飯食おうぜ」
離れていく体を寂しく思いつつ、リビングへ入る背中を見ていると顔に熱が集まった。
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