「あれ?」


目を開くと見慣れない天井があった。

頭にはクエスチョンマークしか浮かばない。

一度整理しよう…

えっと…マルコ先輩と海に行って、ラブーンと会って、海に入って、絡まれて、マルコ先輩が助けてくれて…

ってことは……。ここどこ!?


体を起こしてみると、どうやらわたしはベッドに寝かされていたみたい。


「マルコ…先輩?」


なぜかマルコ先輩が上半身裸で眠っている。

寝てるっていっても、横の椅子に座って、ベッドにうつ伏せて。

なんで服着てないんだろう…?って!


「えっ!!?」


わたし、服変わってる…!?
これは完全に男物のスウェット、わ、わたし、スカートはいてたよね…!!

と、わたしが大きな声を発したせいで、マルコ先輩が目を覚ましてしまった。
先輩は欠伸をすると両腕を上に上げ、ぐぃっと伸びをした。


「あぁ…名前、もう大丈夫かよい?」
「は、はい…。わ、わたしってどうなったんでしょうか…?」
「覚えてねェのかよい?」


はぁって呆れたように吐き出されたため息に申し訳なさが募る。
助けてもらった所までは覚えてるんだけど…。


「お前が震えてたから、背中叩いてたらそのまま寝ちまってよい。とりあえず帰ってきて、ここはおれの部屋」


なんとなく予想はしてたけど、やっぱりマルコ先輩の部屋かぁ。寝室は入ったことがなかったから気が付かなかった。


「あの…それで…き、着替えも…マルコ先輩が…?」


そう聞くと、途端に顔を赤くしたマルコ先輩は、あああ!と手を顔の前で振った。


「服も海水で濡れてたし、そのままだと風邪ひくと思ってよいっ!」


今度はわたしの顔が赤くなるのが分かった。それを見ると、また申し訳なさうな顔をするマルコ先輩


「悪かった…」
「い、いえ!気にしないでください!こちらこそありがとうございました!」


マルコ先輩はわたしの為にやってくれたんだ。もしかしから風邪引いて夏休みを楽しめなかったかもしれないじゃないか!マルコ先輩は悪くない!


「それより…折角の予定だったのに、すみませんでした…」
「名前は悪くねェよい、おれの方こそすまなかった」
「なんでマルコ先輩が謝るんですか!わたしが…」


しばらくお互い頭を下げ合い、顔を合わせ笑い合った。


「名前の服は洗濯しておいたからよい、帰る前に着替えろい」
「はい、ありがとうございます!で…なんで先輩は上、着てないんですか?」


そういうと思い出したように自分の体をみたマルコ先輩。そして、あぁ。と納得したように呟いた。


「連れて帰る時、名前びしょ濡れだったからよい、俺のシャツもだがないよりマシだと思って羽織らせて、帰ってからもいろいろやってたら着るの忘れちまってたな」


ポリポリと頭を掻くマルコ先輩にわたしはベッドの上で頭を下げた。


「ほんとにすみませんでした!わたしはもう大丈夫なんで、早く服着てください!」
「あぁ、気にすんな」


わたしは足を床につけ、ベッドに座って、マルコ先輩がクローゼットからシャツを取り出し羽織るのを眺めていた。

マルコ先輩は前に刺青してるんだなぁ…。エースも背中にオヤジさんのマークを彫ってたはず、中学の頃「カッコいいだろー!」って自慢されたもん。
あの時はすっごく驚いたけど、今じゃいろんな人がやってるしね。わたしは怖くて無理。
たしか、エースはオヤジさんのマークだって言ってた気がする。マルコ先輩のもそうなのかな?少し違う気がするような…?


「名前?」
「へっ?」
「どうした?」
「あっ…」


わたしがあまりにも先輩の裸をガン見してるもんだから先輩が不思議そうにわたしを覗き込んでいた。


「その、刺青。エースのとは少し違うけどどっちもオヤジさんのマークなのかなって…」
「あぁ、これかよい」


わたしの質問の後自分のお腹を見ると、ニッと笑った。


「エースのも、これも、オヤジのマークだよい。カッコいいだろ?」
「ははっ、はい」

オヤジさんの話をする時はこの人も少し子供っぽさが出ているなあ。

「ックシュ!…ズズッ」


突然のマルコ先輩のくしゃみ。
レアだ…!じゃなくて!


「先輩、風邪ひいたんじゃないですか!?」
「あぁ…そうかもしれねぇ。ちょっと頭がボーッとするよい」


これ、完全にわたしのせいだ…!


「でもまぁ、大丈…」
「すぐ寝てください!」


わたしはマルコ先輩の腕を引っ張り、さっきまで自分が寝ていた所へマルコ先輩を寝かせた。

わたしのせいで、先輩が風邪ひいちゃった…。

ベッドに寝転んでわたしを見上げてくる先輩に向かって言う。


「先輩、良い人すぎます!もっと自分の身体のことも考えて下さい、わたし看病しますから、先輩は休んでて下さい」
「でもお前、明日からW7だろい?今日は早く帰らねェと」
「大丈夫です!一日遅らせますから」


暫く黙ったまま見つめ合うと、ハァ。とマルコ先輩が折れてくれた。


「分かったよい、こんなのすぐ治るから、少しだけ休ませてもらうよい」
「はい!」


そう言うとマルコ先輩は大人しく目を閉じたのでわたしは布団を被せ部屋を出た。


先ず…お母さんに連絡しなきゃ!

わたしの鞄は、ソファの上におかれていたので迷うことなく発見出来た。すぐにメール画面を開いた。


《いろいろあって先輩が風邪ひいちゃった。看病したいから、わたしだけW7に行くの一日遅れてもいい?》


メールを送り時刻を確認すると17時11分
わたし結構寝てたんだなぁ。

プルルルルッ

なんでわざわざ電話してくんのお母さん…
わたしはなるべく寝室のドアから離れてボタンを押した。


「もしもし…?」
《ちょっと!どういうことよ!?》
「だからね…」


わたしはこれまでの経緯を説明、すると母は納得してくれたようだった。


《そう…名前の為に…だったら仕方ないわね、ちゃんと看病して来なさい》
「うん、ありがとう」
《ただ、あんた1人でW7まで来れるの?》
「わたしももう子供じゃないんだし、1人で大丈夫!」


海列車に乗ってくだけだもん、簡単簡単


《そう…?なら良いんだけど、運賃は家のテーブルにおいて置くからね。気を付けていらっしゃい》
「分かった!ありがとう」


母との通話を終え、寝室を覗くと、マルコ先輩の規則的な寝息が聞こえ、それにはホッと息を吐いた。

良かった、ちゃんと寝てる。
よし、じゃあわたしは何か食べやすいもの作ろう。

やっぱお粥かな。

マルコ先輩の部屋は何度もお邪魔しているし、何が何処にあるとかも自分の家のように分かってしまっている。


「ふふ、なんか彼女みたいっ」

風邪で倒れちゃった彼氏の看病に来た彼女とか…、なんか憧れる…!!ってそれどころじゃない!!

風邪薬も用意しておこう、ってどこにあるんだろう?

薬は使ったことないからなぁ。

いいや!買いに行こう!









キィッ…


扉の開く音がして、薄っすらと目を開けると、名前か何やらいろんなモノが乗った盆をもって扉を閉めるところが目に入った。

視界がボヤけているし、頭もボーッとする。

名前はおれが起きているのに気付いていないのか、ベッドの横にあるテーブルにお盆を置くとおれの額に手を乗せた。


「あつい…」


そう言うと急いで部屋を出て行ってしまった。
それを見て、下がりかけていた瞼をまたゆっくりと閉じた。

しかしまたすぐ、額に冷やっとした感覚で目が覚め、開けると名前が顔を覗き込んでいた。


「あっ、目覚めました?」
「あぁ…これは?」


自分の額に手をやると何か乗っていた。


「冷えピタです。熱があるみたいだったんで…ふふ、マルコ先輩が冷えピタ…」


そう言うと名前はおれの額を見てクスクス笑い出した。


「そんなにおもしろいかよい?」
「はい!後で写真取らせて下さいよ」
「嫌だよい」
「えーっ。あ、食欲ありますか?お粥作ったんですけど」
「あぁ、食う」


おれが身体を起こすのを名前も手伝ってくれ、あっ。と声を出すと体温計を差し出された。


「一応測っておいてください」
「あぁ」


すぐに受け取り、#名前の言う通りにして渡した。


「うわ!38度もある!」


どうりで頭がボーッとするはずだそれに身体もダルい。発熱なんて初めてじゃないだろうか?


「マルコ先輩でも風邪とかひくんですね」
「たぶん初めてだ」
「え"っ!?エースも病気になったことないって言ってましたけど、マルコ先輩もだとは…」


またエースかい…

でもまぁ、風邪っつうのも良いもんだな、こうやって名前に看病して貰える。
エースは経験したことがないんだ、もったいないねい。

名前はお盆に置いてある鍋から小さな器に粥を取り分け、スプーンに取ると、フーフーと冷ましおれの口の前に持ってきた。


「はいどうぞ」
「じ、自分で食えるよい…!」


名前の手からスプーンを奪おうとするとサッと避けられた。


「今のマルコ先輩には負けませんよ、大人しく食べさせて貰って下さい」


ともう一度口の前に持ってくる。


「……」


グッと力強い目付きに根負けして、黙って口を開けると名前は途端に笑顔になり口の中にお粥を入れてくれた。


「うまいよい」
「良かった!」




マルコ先輩は、お粥を食べ切るともう一度眠ってしまった。

風邪引いたことないって凄いなぁ。

だからあちこち探しても風邪薬どころか薬箱が見つからなかったんだ。

身体丈夫すぎ…!!


と色々考えながらわたしはベッドの横の椅子に座りマルコ先輩の寝顔を見ていた。


「そろそろ片付けようかな」


お盆を持ち部屋を出て時計を確認するとすでに夜の8時半。

いつもなら早く帰らなくては!と焦るところだが、今日は泊まって看病することになっているので気にせずキッチンへ向かう。

洗い物などを済ませ、自分も買ってきたパンをかじった。


今日はいろんな事があったなぁ…。


海に行って、お弁当食べて、濡れて、絡まれて、寝て、マルコ先輩が風邪ひいちゃって…。


「……疲れた」


わたしも早く寝ようと思い、シャワーを浴び洗濯機の中を覗くと、マルコ先輩が言っていた通り、乾燥したての服が入っていた。

わたしはその中に顔を埋める。


「気持ち良い……」


このまま寝ちゃいそう…


「って、ダメダメ!」


こんなところで裸で寝るなんて、朝、発見されたら恥ずかしすぎる!

洗濯してくれた服を着ようと思ったけど、寝るのにスカートはないな。という考えに至り、もう一度マルコ先輩がに貸してくれた服を着た。

そして、水を持ってもう一度マルコ先輩の部屋に来たんだけど、マルコ先輩があまりにも気持ち良さそうに眠っているものだから、起こすのも悪いと思って横にあるテーブルに置いた。

また椅子に座ってマルコ先輩の寝顔を眺める。

あー…やっぱり冷えピタ貼って寝てるマルコ先輩可愛い…


「ふあー……」


わたしも眠くなってきちゃったなぁ…。


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