「まさかマルコ先輩もカナヅチだったなんて…、ぷぷっ!」
水泳大会の後、エースに誘われたわたしは白ひげさん家の宴に参加させてもらっていた。昼間のまさかのマルコ先輩の弱点の発見を話すと、うるせぇよい。と頬をつねられた。それでもやっぱりおかしくて、吹き出してしまえば頭も小突かれた。
「だってマルコ先輩って、勉強も出来るし、スポーツも出来るし、完璧じゃないですか!
そんな先輩が泳げないって…。これが笑わずにはいられるか!って感じなんですもん」
「褒められてんのか貶されてんのか分からねェよい」
ハァ。なんて言いながらジョッキに口を付ける先輩を見てまた微笑む。なんだか、先輩ともずいぶん親しくなった。少し前までこんな風に話すことなんてありえないことだったから。それもエースのおかげなんだ。
「名前ーーー!!」
「はーい」
「こっち来いよ!おもしれェもん見せてやるぞー!」
「はやくはやく!」
名前を呼ばれ振り返るとエースとハルタ先輩は手招きしてこっちだとわたしを呼んでいた。おかしな笑みに怪しいなとも思ったけれども、エースの言うおもしれえおんが気になりわたしは2人のもとへ向かった。
「なにー?」
「へへっ、おりゃ!」
ぐちゃっ!
「……」
な、何これ?
一瞬で視界が真っ白になり、ボロボロとわたしの顔についたものが落ちていく。これが顔面パイと理解したころには2人の笑い声が耳から入ってきた。
「ぶはっ!!名前おもしれェ!!ハハハハッ!ひぃー!腹痛ェ!」
「名前最高!アハハハハッ!!」
やっと視界が開けると、エースもハルタ先輩もお腹を抱えて大笑いしていて、今にも笑い転げる勢いだった。や、やられた…!!
「もう!エースー!!」
「アハハハハッ!いやっ!待てって!」
ぐちゃっ!
わたしはハルタ先輩の持っていたパイを奪い、そのままエースの顔面に投げつけた。まさか自分までもやられると思っていなかったのか、さっきのわたし同様、立ちすくみ顔からパイが零れていった。
「やったな名前ーッ!」
「あははっ!エースの顔真っ白!」
「エースも最高ッ!!アハハハハッ!」
「おいハルタ…お前何笑ってんだ?…おりゃあ!」
ぐちゃっ!
「や、やったなァ〜!」
べちゃっ!ぐちゃっ!
その後…3人共全身パイまみれ。
エースの部屋でシャワーを貸してもらったし、髪や顔は大丈夫なんだけど…。
服がないので、パイだらけのまま家に…。自宅に帰るとそりゃもう怒られました、母に。
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