おれは今、夢を見ているんだろうか…。
「親父、名前が礼をしたいとよい」
「こ、こんにちは…!」
今日は親父の検査が終わってからおれはずっと親父の部屋に入り浸っていた。
そりゃあね、おれだって悩みの一つや二つあるわけよ、それを親父に聞いてもらって、最近の報告やらいろいろしてたわけ、そしたら突然入ってきたこいつら。
仲良く手なんて握って、名前の顔はほんのり赤い。
マルコのやつもここ最近とは違う心の底から笑ってるってわかる。
え、え!?まじか!?
おれはポカンとやつらを見てるってのに、親父は笑顔で名前からのお土産を受け取っていた。
親父にお土産を渡し終えると今度はおれのところへもやって来た名前。
「サッチ先輩、どうぞ!」
「……」
思わず名前の顔をまじまじと見てしまう。こいつ本物だよな……?
じいっと名前を見つめるおれは目の前の彼女の、サッチ先輩?という声で現実に引き戻された。
「あ、さ、さんきゅー」
おれにニコッと笑みを向けると、またすぐにマルコの隣へと戻っていった。
うっそだろ……。
マルコ、あんなにフられる覚悟してたってのに…。
まじか…。
つかこれエース知ってんのか…?
親父に修学旅行のことなんかを話している名前を見ながら考えを巡らせるおれのもとへマルコがやって来た。
「サッチ、ありゃ本物の名前だよい」
「はは、だよな」
「おれも信じられねェがな…」
お前、おれが頑張って励ましてた意味なんだったんだよ。って言いたくなるが、こいつの長年の恋が報われておれもうれしくないわけじゃない。
「良かったじゃねェか」
「あぁ、ありがとよいサッチ…」
照れくさそうに鼻頭を掻きながら言ったマルコが見慣れないものすぎて、軽く発作を起こしそうになった。
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