廊下を歩きながら腕を上げ大きく伸びをする。



「ふわぁ〜〜、う"ぅ…頭痛い…」



宴の次の日はいつもこう。わたしはあまりお酒に強くない。それは自分でもわかっていることだ。だから少しだけにしたのに…、なんで二日酔いになっちゃうんだろう…。
結局昨日も気付いたら寝てしまっていた。
きっと、またマルコが部屋まで運んでくれたんだろうな。いつもいつも申し訳ない…。



そう思いながら食堂の扉を開く。すると、先ず目に入ったのは昨日家族になった彼の姿、船員にここでのルールなどを教えて貰っているみたい。


争奪戦必勝法とか…?


思わずクスッと笑いが漏れる。


この船の食事争奪戦は凄まじいもので、負けた者に食事はない。って感じ。みんな必死で自分の食事を確保するんだけど、わたしは争奪戦には参加していない。



「昨日はよく眠れたかよい?」
「おはようマルコ、昨日はごめんなさい…」
「今更何言ってんだい、飯取ってるぞ」
「うん、ありがとう」



必ずマルコがわたしの分も確保してくれるからだ。それに、マルコがいない時はサッチ。そういう時くらいは自分ですると言ったんだけど、おれにも兄の仕事をさせろと断られてしまった。マルコの向かい側の席につくと、ほら。と目の前に置かれた朝食。


今日も朝から大量…



「どうした?」
「わたし、二日酔いで食欲ない…」
「ダメだ食え、おれが出る前より痩せてるよい、どうせ夜中まで本でも読んで朝飯抜いたりしたろい」
「ゲ…」



なんで分かるの…
ジトッと目の前のマルコを見るが、マルコはなんともないような顔でパンを口にいれた。



「おに…」
「おにでいいよい」



マルコを睨みつつ食事に手をつけようとすると、よっ!と朝食の準備を終えてやって来たサッチがドカッとマルコの隣に座った。



「いやァ〜昨日は楽しかったなァ!おれ途中から記憶ねェけど」
「結局どこで寝たんだよい?」
「朝起きたら甲板だったな」



サッチの言葉を聞いたマルコはため息を吐いてパンを口に入れた、わたしもそれに苦笑いを浮かべてサラダを口にいれる。



「う"…」
「大丈夫か名前、なんか食べやすいもん作ろうか?」



そんなわたしを見て、サッチが心配そうに声を掛けてくれた。すごく嬉しいけど、何も食べられる気がしない。と正直に述べると、わたしの言葉を聞いたマルコは手をとめ、ハァ…とため息をついた。



「明日からはちゃんと食べろよい?」



ほら、貸せ。と手を出すマルコに朝食の乗ったトレーを渡す。



「ありがとう!」
「名前にはほんっとあめぇよなー」



サッチに返事はせず朝食を続けるマルコに笑顔を零すと、マルコは、あ。とわたしを見た。



「仕事全部片付いててびっくりしたよい、それに、部屋も綺麗になってて、ありがとよい」
「あぁ。ううん、いいの。整理した方がわたしもやりやすかったし」
「おかげで暫くはゆっくりできるよい」



マルコの言葉にわたしも笑顔を返す。資料とか整理しただけだけど、喜んでくれてよかった。嬉しくなって、笑みを零しながらわたしもコーヒーの入ったカップに口をつけた。



「「ハハハハハッ!!」」



遠くで上がった笑い声にそちらへ顔を向ければ、彼を中心に大騒ぎしながら朝食を食べていた。



「エースのやつ、たった一日でよく馴染んだな」
「この間まで攻撃仕掛けて来てたやつだとは思えねェよい」
「ふふ、でも、良かったね」



サッチがケラケラ笑いながら言うのにマルコも嬉しそうに返す。

いい笑顔…きっと、あれが本当の彼なんだよね。


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