灰色の世界
今思えば、私の世界は灰色だった。
色彩感覚がないわけじゃない。
ただ、何かを見て"美しい"と感じる事が出来なくなっていたんだ。
父を失って母を失って
そして今度は、自分を失おうとしている
最初こそ神様を恨んだりしたものの、
それすら馬鹿らしくなっていた。
人間にとって一番大切な気持ち
"生きたい"を、
私はどこかに失くしてしまったみたいだった。
毎日がただ過ぎて行って、いつしか笑う事も忘れてしまうんだろうな。
そんなことを思っても、恐怖心すら溢れてはこない。
このまま自分は死ぬんだ。
誰にも知られずに。
誰にも悲しまれずに。
それでいい。それがいい。
自分が死ぬ時位、誰の涙も見たくは無いから。
そう思っていた。
彼と出逢う前までは。- きみのね -
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