聖夜




※エドさん
※現代パロ
※高校3年




聖なる夜は、誰と過ごすの?


「今年もおつかれー!」
「声掛けたら皆空いてるって・・・お前ら暇だなー!」
「うるせー!」
「てなわけでとりあえずかんぱーい!」


「かんぱーい・・・」


誰ともぶつかる事のない、オレンジジュースがなみなみと注がれたコップ。


暇、だってー。
でも結構当たり前なんじゃない?
今は受験に集中したい時期でもある訳だし・・・


クラスの女子達の声が聞こえた。まぁ、ですよねー。
推薦受験じゃないから今はやっぱり頭を勉強の方に持っていかざるを得ないし。

自分の中で、そうやって言い訳を作っている事に何だか切なくなった。
違うの。そうじゃないの。
だって私は―――――――――


「夏川、乾杯。」
「ふへ?」


カチリと軽い音がして、座っていたソファの右側が沈みこんで少々バランスを崩した。
変な声を出してしまったことが凄く恥ずかしい。
だって、今の今まであなたの事を考えていたんだもの。


「エド・・・。」
「リンの家ってこんなにでけーかったんだな。あいつの家って金持ちだったんだなー。」


わわ、私顔赤くなってないかな。こんなに、彼が近くにいることなんてなかったから。


彼を最初に見たのは中学生の時だった。
2年生の時に私がこの街に越してきて、一番さいしょに話しかけてくれたのがエドだった。
よく見せる笑顔とか、真剣な横顔とか、ぶっきらぼうだけど優しいとことか。
過ぎていく時間の中で、私はいつの間にか彼に恋心を抱く様になった。
中3の時はクラスが離れちゃって中々話せなかった。
エドを追いかけて、必死に勉強して入ったこの高校でも1,2年と一緒のクラスにはなれなくて。やっと3年生で同じクラスになれたのに、もたもたしてたら受験の時期まできちゃうし。エドは頭いいから、同じ大学なんか入れっこないし。


「なにやってたんだか・・・」
「ん?」
「あ、な、何でもないの!」


何で今まで勉強してこなかったかなー、と思って!
必死に誤魔化すもんだから、エドが何だそれって笑ってくれた。
それだけのことなのに、一緒に、二人で笑いあってるだけなのに、
そんな時間が苦しくなる程愛おしかった。

やっぱり私は、エドのこと・・・


「あ、オレもう帰んなきゃ。」
「え、もう?」
「おう。弟いるからなー。夏川は?」
「私は・・・」


"いっしょにかえりたい"
開いたくちは、動かなかった。


「じゃな。」
「あ・・・うん、ばいばい。」


ばいばい
こんな言葉、言いたくなかった。卒業式の日にも私は言うんだろうか。
エドの背中がどんどん遠くなっていく。
冬休みが過ぎればまた会えるじゃない。


私は


「あれ、ミナ?あんたどこいくのー?」
「ちょっと用事思い出した!」


部屋を飛び出したはいいけど、リンの家って本当に広い。
玄関がわからなくてうろうろ走り回る。


「やっぱり、だめなのかな・・・。」


そういうことなんだろうか。こんなことで泣くなんておかしいことだけど、なぜか涙が目に溜まった。


「あれ、夏川?」
「はへ・・・?」


私のだいすきな声。視線を上げると、エドが驚いた表情で私の顔を覗き込んできた。


「リンの家でけぇな、迷っちまった。・・・泣いてんの?」
「う、ううん・・・エドに言いたいことがあって。」
「ん?何?」
「・・・またね。」
「え?」
「ばいばいじゃなくて、私はまたねって言いたかったの。また、会って欲しいから・・・。」


意味なんて通じなくて構わない。
ただ、見せて欲しいの

わたしがだいすきな、あなたの笑顔を。


「いつ会う?」
「え?」
「つってもお前も勉強あるもんな。元旦とかは?一緒に初詣いかねぇ?」
「い・・・いくっ!」
「じゃ、これオレのアドレスな。また連絡する。」
「う、うん!」


去って行く背中。それをみつめてても、さっきより苦しくないのはきっと手の中にあるアドレスと見せてくれた笑顔のお陰。


あのね、だいすきだよ


またねを繰り返して、ずっと私はエドの傍にいたいから。






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