バレンタイン




※高一
※遅刻さーせん


「お菓子作って来たよー!」
「きゃーやったー!」


2/14、バレンタインデー。
中学の頃はお菓子持ち込み禁止だった為コソコソとイベントは実行されていたが、今や堂々と机の上に広げられる環境。
皆してチョコを作り、(主に女子に)渡しているのである。

私も例外ではなく、ガトーショコラをクラスの女の子たちにと作って来た。
大き目の箱の中に切り分けられたケーキがたくさん入っている。
甘いものが大好きな可愛らしい女の子たちは次々と中身を一つずつ取り出していった。


箱の中には、一つだけ余った。


ちらりと目線をよこに流す。その先には


「女の子って、バレンタインデーのこと勘違いしてねえか?女が!男に!チョコを!送る日だぞ!?」
「そんなこと言ったらそれも間違ってると思うけどネ。正確には男が女に花を贈る日だゾ。」
「あ、そーなん?」


エド。


渡せる訳ないって、分かってたけど。気付いたら一つ多く作ってしまっていたのだ。
いーもん後で自分で食べるから!

はあと息をついてから自分の席に座った。


「夏川」
「うわっ!」
「・・・人をバケモンみてーに・・・。」
「な、なに!?」
「ノート。」
「は?」
「ノート見して。オレ普段とってねえんだけどさ、次当たんだよね。」


何だ。
・・・何だとは何だ、私!

自分に突っ込みをいれながら机の中から数学のノートを取り出す。


「っていうか、エドはその場でも解けるんじゃない?」
「ばーか"念には念を"!」
「あっそ。」


意外とまじめなんだから。
私のノートを見ながら考え込むエド。たまにみせるその真剣な表情を見るのは、密かな私の楽しみでもある。

授業中はエド、いっつも寝てるからね。


「・・・夏川、ここ違くね?」
「え、嘘。」
「これ。微分。」
「え?合ってるじゃん!だって、ここはこーなって、こうでしょ?」
「違ーよ。こっちはこうだって。」
「何で?」
「・・・だからー」


いきなり彼の顔がぐっと近くなる。なるべく意識しないように、顔を赤くさせないように。
っと、話聞かなきゃ聞かなきゃ。


「・・・で、こっちな、こっちが答えになんだよ。」
「あー、成程。」
「夏川はツメが甘いんだよいっつも。」
「な、うるさい!」
「なんか見返りちょーだい。」
「はあ!?」


"見返り"って・・・


「・・・ガトーショコラしか、ないよ・・・」
「それでいいよ、それくれ。」
「え!?」
「え?」
「・・・ちょ、ちょっと待って。」


がさがさと大げさな音を立てて鞄から箱を取り出す。ゆっくりと蓋をあけると、エドにひょいっと奪われてしまった。


「ちょっ渡す間もなく!」
「おー食いもんに見える。いただきます!」
「・・・ドーゾ。」


うわ一口がでかい。
あっという間に彼はガトーショコラを食べ終えてしまった。
自分が作ったものを食べてる姿って、なんかきゅんとするな。


「美味かった、ごちそうさま。」
「いーえ!こちらこそありがとね!ホワイトデー待ってますから!」
「おー、て、ええまじで!?これカウント!?」
「おーいえす」


・・・渡せるなんて、思ってなかった。
私の想いは全く伝わってないと思うけど。

それでも、それでも


「ミナ!」
「!?」
「ホワイトデー待ってろよ!」


「・・・!」


"好きです"
その時には、きっといいます。









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