きっと、人を思う気持ちは人それぞれ



柚子side



第5話

愚か









とりあえず、転入してから少し経った。
あいかわらず綱吉も可愛らしいし、姫は少しモテたりする。

俺は・・・意外とあの自己紹介のせいで嫌われてたりする。
色々な視線が痛い。

そしてさらには女子達の陰口だ。
本当、弱い人間はこうだから困るんだ。

言いたい事があるのなら素直に言えばいい。なんて弱い生き物なんだ、君達は。

ハァ、小さく溜息をついた




『柚子?』


ハッ

突然聞こえた姫の声に我に返った。


おお、いかんいかん。
今日は確か山本が綱吉に相談する話だったはずだ。



ピーッ


不意に笛の音が鳴る。



「チーム分けは終わったか?」


「あと一人です」


先生の声と、男子生徒の声が響く。
あと一人。残っているのはもちろん、


『綱吉君・・・』

小さく呟く。


彼の表情はどこか諦めた様な、・・・そんな表情。


「いーんじゃねーの?こっちに入れば」

「!」


山本が、カラカラと笑いながらそう言った。


「まじ言ってんの山本〜〜っなにもあんな負け男!」


負け男はどっちだ。言いかけた言葉を慌てて塞ぐ。
どうしても綱吉の事になるとだめだな、誰にも気づかれぬ様に笑った。

「ケチケチすんなよオレがうたせなきゃいーんだろ?」


「山本がそう言うんなら・・・まぁ、いっか」


もう一度、彼は軽く笑った。







カキーンッ!



「いやわりーねー!」


手を合わせ、ケラケラと笑う。
悪い、と言いながらもそんな気配は感じられない。


「ちぇ、お前は片手で打て!」

一人の男子がそう叫ぶ。



「ナイス、山本!」

「イエス!」


「さすが野球バカ!」

わらわらと彼の周りに人が集まり、ワイワイガヤガヤやっている。
僕はただそれを見ているだけ。


「たけしー!」


「ステキー!」


キャーッ、と耳を塞ぎたくなる様な声で、女子が騒ぐ。
あれのどこが、なんて言ったら山本ファンに殺されてしまうけど。

つまらないなぁ、
なんで女子は応援なんだ。俺もやり・・・たくはないが。←

とりあえず女子たちに言いたい。

彼にモテたかったら痩せろ、今すぐ。
努力しなきゃ始まらないんだよ!



「柚子さんてさ、うざいよね」



ボソリと聞こえた呟き。
チラリ、視線を送ると5、6人の女子が集まって何かを話し合っている様だった。
時々、チラリとこちらへ視線を送ってはすぐに逸らす。

また陰口か。





ふと、頭に何かが流れ込んでくる、そんな感じがした







「ゆずってさ、うざいよね」




「早く死ねばいいのに、」



「友達のフリしてあげてるだけだよ、だってあの子友達少ないから」




「消えればよかったのに」




「こっち見ないでよ、クズ」




「ごめんね、あんたの事嫌いなんだ」




「あっは、いたんだ?ごめんね、君影薄いから気づかなかった」




「別にあんたがいなくてもよかったのに」




「消えてよ、早く」













「ねぇ、」









「残念だね、柚子」


























「 さっさと死ねばよかったのに 」

















どくん、




『ハッ、』

息を、吐く

一瞬、息をする事を忘れ、ただ、昔の記憶を忘れようと頭を振る。
彼女たちが、あの時の彼女達と重なって、吐き気がする・・・!!




嫌だ、嫌だ・・・!

僕を、そんな眼で僕を見るな・・・!

僕は何も悪くない!悪くないのに・・・!






僕は、何も、わるくなたっかのに・・・!

ぼくをみないでさわらないでほおっておいてわらわないでおねがいうるさいのだまってうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!





誰か僕を、













僕を、殺してください






どくん、






手首に付いた消えない傷が、また、
俺を苦しめた。




2010/12.23   三春柚子





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