私達はペットですか、そうですか
柚side
第2話
私達はペットですか、そうですか
「行ってきまーす!」彼の声が、頭の中で響く。
『っは、ぁ・・・っそだっっ嘘だっ』
『柚子・・・!?』
頭をぶんぶんと横に振る。
頭が混乱する。
なぜ、なぜ!俺はこんなにもこの世界に来る事を望んでいたじゃないか!
なのに、なぜ
俺は底知れぬ恐怖を抱いている!
綱吉が走っていった方を見つめ、ドクドクを鳴り止まない心臓に手を当てる
怖い。怖い。
彼等は紙の上に描かれていた物。それに憧れたのは自分。
所詮は俺も人間という事だろうか。そんな世界、あるはずないと。心の奥底で思っていたのだろうか。人間を嫌っていた俺も只の人間だった、!
・・・最低だ。
姫まで巻き込んで、この世界を否定して。彼等は確かに存在していたのに。
最低、だ!
パァン!乾いた音が路地裏に響く。
『柚子!!!』
自分の頬を叩いた。思い切り。じんじんと痛む頬に姫が手を当てる。
冷たい。ひやりとした指が、掌が、冷たくて気持ちよかった。
『姫、夢じゃない・・・夢じゃない、よ』
『っうん』
姫が微笑む。よかった、笑ってくれた。
俺も釣られて笑うと、嬉しそうにまた笑った。
『姫、姫・・・っ
やっば、超イテェ』
『うん、だろうね。』
『姫つめたーい』
『馬鹿な柚子が悪いんだよ』
『激しくブロークンハートよ!』
『ブルーベルの真似?あははっ似てない!』
『にゅにゅぅ〜!』
『あははっ!!』
多分真っ赤になった頬をさすりながら姫とそんな会話を続ける。
おかしいな、ずっと画面を通して繋がっていただけなのに。
今はすごく、そんな関係とは思えないほど自然、だった。
嬉しいな。顔が緩みっぱなしだ、な。
『(ありがと)』
その言葉はまだ伝えられないけどね!
そんな私達に、コツリ。靴音が聞こえた。
2010/12.6 三春柚子