試される試供品

「こちらお試しどうぞ」

 ピンク色の少しドロッとした液体にオレンジ色の小さな粒々が入った、小さな紙コップを渡された。

 人が行き交う道の真ん中。
 渡してきたお姉さんは赤い無地のブルゾンを着ている。
 お姉さんの近くにのぼりも看板も何もない。
 渡されたコレが食べ物なのか飲み物なのか塗り物なのか、全然わからない。

 要らないです、と返そうにもお姉さんの姿はもういない。
 人が行き交うこの道は、ゴミ箱もない。
 捨てようにも、捨てられない物を持ったまま帰路に着く。

 家でもまた悩む。
 紙コップの中身が食品であれば、生ゴミ。
 化粧品であれば、燃やせるゴミ。
 匂いを嗅いだが、無臭だった。
 紙コップは驚くほど白くて、連絡先も書かれていなかった。



2018年2月3日 第39回 お題「試す」
試供品を渡されたけどどうしたらいいのさこれ、という経験はございませんか?


  
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