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限られた選択肢に挟まれても


 なんでもかんでも親の言うとおりに動いていたせいか、自分で物事を考えられるようになるまで随分と時間がかかってしまった。
 例えば、朝起きてから着替える時に、半袖がいいのか長袖がいいのか、青がいいのか緑がいいのか、靴下は白がいいのか黒がいいのか。そんなどうでもいいことすらも、いちいち親の意見を聞いていた。
 その行為が恥ずかしいと思えるようになってようやく、僕は家を出た。

 一人暮らしを始めてからは、バイト先で知り合った子と恋人になった。互いの家を行き来して、仲良くなってしばらく経った時。
「君ってさ、灰色の服が多いよね」
 そう指摘をされて、別れてしまった。彼女はきっと、そんなくだらない理由が原因だったなんて、今も気付いていないだろう。

 選択肢の幅を狭めてしまえば、僕だって自分の意思で選ぶことができる大人になった。と思う。たぶん。
 今日は五分丈の灰色のシャツ、靴下は履かない。そんな感じを、一年中。
 彼女と別れてからは、黒と白とシャツが数枚増えた。
 就職して、学生服のようにスーツを着るようになってからは、選ぶという行為が無くなりとても楽だった。これしかない。スーツしかない。決められているものを身にまとうことに、苦痛を感じないせいか、同僚や上司からは「今日もビシッとキマッてるね!」と褒められた。ネクタイのいらない夏のクールビズは、特に好きだった。

 会社が入ってる同じビルの、下の階のコンビニの店員さんと仲良くなり、恋人になった。相手の年齢的なこともあり、このまま結婚する流れになりそうだったけど、僕には彼女に伝えなければならないことがあった。
 僕は、選ぶことがすごく苦手なんだ。
 洋服も、黒と白と灰色しか持ってないくらい。
 年が明けてから、互いの実家に挨拶へ行く前に、彼女に告白をした。
 彼女は神妙な顔をして、しばらく考えた様子だった。
「それって、あなたや私にとって、何かデメリットになるのかしら?」
 あっけらかんとした表情でそう言った彼女と、僕は結婚することを決めた。

 初詣をした後、電車を乗り継いで彼女を僕の実家まで連れてきた。
 彼女は大きな赤い華のついた振袖を着て、髪も綺麗に結い上げて、そのまま披露宴を出来そうなくらい綺麗だった。
 久しぶりに会った親は、派手なアニマル柄の服を着ていて、パーマのかかった髪は一部が紫色で、ほうれい線と目じりのしわが濃くなったほかに変わりはなかった。
「まーしっかりして綺麗な娘さんだこと。うちの息子、なんも自分で選べない子だけど、ほんとにいいの?」
「そんなことないですよ。何億人といる人の中から私を選んでくれた、立派な息子さんです」
 そう言った彼女は、親ではなく、僕が選んだ人。
 これからは僕一人で悩まず、彼女が一緒に悩んでくれる。

【end】
(2015.8.8)
即興小説トレーニングの『ひねくれた反逆』というお題も追加して。

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