140字(twnovel) No.3


 
■Log ; 2013年7月(No.46〜66)

7月〜
66.ハサミ/65.花忍/64.毒4-4/63.毒3-4/62.毒2-4/61.毒1-4/

60.靴の話3…革靴/59.脳内サミット/58.記念日/57.夏祭り/56.腐らない男と腐ってる女

55.氷男/54.コールドスリープ/53.魅力が増す薬(液体塗り薬)/52.魅力が増す薬(液体飲み薬)/51.滅亡の卵

50.謎々/49.不器用/48.浄化/47.足りない/46.遠雷



【遠雷】
遠雷が聞こえている。
徐々に間隔は狭くなって、轟音が近付いてくる。だけど私は、逃げも隠れもしない。その時がやって来るまで。
「好きだよ」
全身が痺れるくらい、走る感動!この恋の予感は100%ハッピーエンド…ですよね、先輩?


【足りない】
絵が描けず歌も歌えないが、ぼくは文字の読み書きはできるから話を書こうと思った。絵を文字にすると文になり、歌を文字にすると詩になるが、文字は絵も歌も表現できるからだ。
でもそれは簡単なようで、楽ではなかった。何度も同じ話を書いてしまう僕は、言葉も足りなかったのだ。


【浄化】
例えば、と君は言う。
「悲しんだり怒ったり泣いたりしたい時があるでしょう?そういう負の感情に囚われた時は、文字にして浄化してしまえばいいのよ。そうすれば念仏なんて、必要ないと思うの」
白い煙が昇る空の下、君は携帯電話に文字を打ち続けていた。何分も、何十分も。



【不器用】
すぐに泣けない人の方が、すぐ泣く人より不器用なのだろう。箸で物を掴めないとか、蝶々結びが下手だとか、お別れの挨拶が言えないとか。そんな事よりも、ずっと深刻だ。
「言葉にならないことも、あると思うよ」
僕の言葉に、小さな背中が震える。君は声も無く、少し不器用に泣いた。



【謎々】
誕生日に何が欲しい?と、ひと月前から聞いていた。
でも答えない。プレゼントもケーキもいらない、変わった人。
「本当に欲しいものは、目に見えないものだから」
誕生日当日、そんな難解な謎々と、婚約指輪を渡された。変わってるにもほどがある。付き合いきれるのは、私だけだね。



【滅亡の卵】
世界は壊れた卵の上に成り立っている。固い殻は大地となり、白身は海になった。黄身を糧に多く生物が誕生するが、卵の産み方を忘れた高知能生物は、その始まりの卵を覚えていない。なぜか。それが新たな滅亡へ繋がることを、恐れているからだろうか。
(#世界もう滅ぼしたい協会 へ提供)


【魅力が増す薬(液体飲み薬)】
魅力が無いものを、魅力があるように見せる飲み薬をもらった。
これを私が書いている物語の主人公に飲ませれば、きっと魅力に溢れた人になるはずだった。しかし主人公が魅力になるどころか、パソコンが壊れてしまった。
なんて事だ!キーボードからは飲ませられなかったのか!


【魅力が増す薬(液体塗り薬)】
ディスプレイの前で、男がにやけている。通販で取り寄せた『魅力が増す薬』を手に、意気揚々とフタを開けると、中身を一気に飲み干した。これで明日からフッサフサだ!
って、それ頭に直接つけるものじゃないの?違うの?あ、ユーガッタメール。ほら、塗り薬って書いてあるよここに。


【コールドスリープ】
「100年後に、また」
コールドスリープした僕たちの約束。それは、100年たっても200年たっても果たされなかった。
はじめの100年間に天変地異が起こり、その後の100年の間に生物は絶滅した。
太陽光発電で維持されるスリープカプセルは、僕と彼女の最後の楽園なのだ。
(14日の#twnvdayへ提供)


【氷男】
ぼくは氷男と呼ばれている。全身が冷たくて、心も冷たいと。
でもそれは誤解だ。
いや、確かに身体は冷たいよ。君と手を繋いだら、離れなくなってしまうけど。冷凍庫の氷を手で取ったら指にくっつくみたいにね。
実はそれ、ぼくの作戦だから。君の手を離したくないんだよ。わかった?
(14日の#twnvdayへ提供)


【腐らない男と腐ってる女】
絶対に腐らない男と、もう腐ってる女が一緒に暮らした。全身がマイナス20度以下に保たれ保冷剤の役割をする男のおかげで、女の腐敗する速度は急激に抑えられた。
しかし男女は常に一緒にいるわけではない。徐々に形が崩れていく女に、男は涙を流すことさえ出来なかった。
(14日の#twnvdayへ提供)


【夏祭り】
#twnvday があった日。町では夏祭りをしていて、ぼくは青いシロップがかかったかき氷を一心不乱に食べていた。やけ食いじゃない。違う。あの子が彼氏といたところ見てしまったからとかじゃなくて。頭が痛くて、涙を堪えているのは、かき氷が冷た過ぎるせいなんだよ。
(14日の#twnvdayへ提供)


【記念日】
「今日は記念日なのよね」
君にそう言われて、僕は140分でプレゼントとケーキとワインを準備した。
記念日を忘れていたことを、こんな事で許してもらえるのか心配だったが、君はニコニコしながらワインに舌鼓する。
「ところで今日は何の日だっけ?」
(7月22日のツイノベ記念日へ提供)


【脳内サミット】
自問自答を繰り返す。僕は、私は。質疑応答が飛び交う中で、自分は少し高い位置からそれを見下ろし、可決と否決を繰り返す。小さな世界の小さな会議。
「昼ご飯はパスタだろ!」
「そうやって、麺類ばっかり。冷凍ご飯が余ってるのよ!」
「はいはい、今日はパスタな気分(ダンッ!)」


【靴の話3…革靴】
決められた時間に同じホームの上に立つと、顔なじみが出来る。ああ、どうも。え?私の顔に泥がついている?わざわざ、ご丁寧にどうも。この人の上司に塗ったら大目玉ですが、私には先があっても目はありませんからね。大丈夫ですよ。


【毒1-4】
僕の口からは毒が出る。死に至らしめるほど強くないが、ほんの少し胸を苦しませるくらいは強い。その毒は目に見えない。無味無臭で、中毒性がある。一定の時間が経つと、自ら毒を欲するのだ。
僕は毒を吐く。吐いた毒を吸い込む。
僕の体は毒に蝕まれ、新しい毒を、僕が生み出す。


【毒2-4】
胸が苦しいから今日はこれで、と君は席を立つ。
僕は彼女に向かって毒を吐いた。
違う。
毒ではない、言葉だ。
でも話している内に言葉は毒に変わっていた。
僕の口から出た毒に、付き合いの浅い彼女は免疫がない。これから少しずつ耐性が出来るかもしれないが、僕はそれまで待てるのか。


【毒3-4】
吐いて、吸って。深呼吸をすると、体の奥の隅々まで、僕は自分の吐いた毒に侵蝕される。頭はボンヤリとして、手足の先は冷たく痺れ、自分の周りに何があるか、誰がいるかもわからなくなる。
吐いて、吸って。
この毒を止めるには、吐くのを止めて吸うのを止めることしか選択肢が無い。


【毒4-4】
唇から吹き込まれる空気。
どうして、と僕は君に問い掛ける。僕は自分の吐く毒に侵されて、動けなくなっていただけだ。
「息をしていなかったわ」
そうだね。呼吸をすると、毒を吐いてしまう。吐いた毒は、君を侵してしまう。
もう終わりにしたい。君には毒を吐きたくないんだ。


【花忍】
芝桜が咲き終わった頃。密集して絡みあった草の下に、拳ほどの穴が掘られていた。草を少しめくると「くせ者!」なんて言われ、顔に土をかけられる。黒装束を纏った小さな忍者。花忍(ハナシノブ)と名乗る。「拙者がお相手致す!」彼の後ろで守られているのは、親指姫のようだった。


【ハサミ】
何でも切れるハサミは、人の縁まで切ってしまう。小指の根元からチョッキンと、赤い糸を切り落とす。でもハサミは切るだけで、赤い糸は回収しない。拾った誰かがその小指から赤い糸を巻き直せば、運命の糸は簡単に繋がる。簡単にだ。その代わり、今後はハサミにお気をつけて。

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