140字(twnovel) No.2
■Log ; 2013年6月(No.19〜45)
6月〜
45.建前
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44.滅びの真理
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43.墓守り
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42.守り人
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41.届く声で
40.しまりすとハル
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39.立て板に水
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38.日夜滅ぼす活動報告
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37.靴の話2…下駄
36.ぐるぐる7-7
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35.ぐるぐる6-7
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34.ぐるぐる5-7
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33.ぐるぐる4-7
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32.ぐるぐる3-7
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31.ぐるぐる2-7
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30.ぐるぐる1-7
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29.靴の話1…サンダル
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28.君が好き
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27.滅ぼす価値
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26.テスト
25.梅雨空の詩
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24.流砂の女神
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23.量り売り
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22.雨傘の行方2
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21.雨傘の行方1
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20.消灯と点灯
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19.梅雨の切れ間に
【建前】
夢を夢のままで終わらせていいと思っている人なんて、きっといないだろう。
僕みたいに諦めてしまうんだ。もう遅いとか、自分の実力では無理だとか。
諦めたらそこで終わりだから、終わらせるために諦めるんだ。
だから今はすごく楽だよ。
僕にはもう追い求めるものが無くなったからね。
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【滅びの真理】
ディスプレイが消える。
何時間も何時間も、同じ姿勢で同じ作業をしていた僕は、メガビットの世界へ飛んだ。
0と1と1と0の交信。
これは真理だ。
アルかナイか、ナイかアルか。
そうだろう、僕もディスプレイも会社もこの世界も。
(#世界もう滅ぼしたい協会 に提供)
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【墓守り】
毎日、お墓参りに来る女性がいます。
庭で咲いた花を持ち、清楚な着物を身に纏った、白百合の花のような人です。
月命日になると、彼女は御布施をおさめます。
私は墓石の前で一礼し、般若心経を唱えます。
失ったものは戻りません。でも空ではいつも、新しい風が吹いていますよ、と。
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【守り人】
親の言い付けを、キチンと守って生きてきた。
門限を守り、約束を守り、貞操を守り続けて60年。
両親が亡くなり、今はお墓しか守るものがなくなった。
ずっとキチン守ってきたのに、私を守ってくれる人は、どこにもいない。
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【届く声で】
小さな小さな変化は、積み重なると大きな変化になるものよ。
空中に舞っていた塵が、足元で大きな綿埃になるように。
ふわふわした汚いそれを、あなたは見て見ぬフリをする。そんなものが、誰かを傷つけるはずもないと。
ねえ、一言だけで良かったのよ。
「君が好き」と、私に届く声で。
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【しまりすとハル】
とーちゃんの足元、チョロ、チョロリ。
しましまリスさん、こんにちは。
ひまわりのタネ、持ってるよ?
ほおぶくろにたくさん詰めて、ともだちみんなで、仲良く食べてね!
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【立て板に水】
不毛な会話は、何も育たない。
話の種は発芽せず、注した水は流れ落ちる。
延々と続く友達の友達の友達が何かした話。
その顔も知らない誰かの悩み事を、聞いたあなたの口から聞かされる私は、感想さえ求められない。
だから今度から、お花を相手にして頂戴。
私じゃお話にならないわ。
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【日夜滅ぼす活動報告】
平日は慎ましく過ごし、休みの日はボランティア活動に励んでいる。
ゴミを拾うのは、焼却して酸素を使うため。
木を植えるのは、夜に二酸化炭素を増やすため。
様々なエコロジーの裏側で、私たちは世界を滅ぼす為の活動をしています。
(#世界もう滅ぼしたい協会 に提供)
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【靴の話2…下駄】
カラーンコローンと槐(えんじゅ)で出来た下駄が鳴る。
薄暗くなった逢魔時に、誰ともわからないものに連れ去られないようにと、子供の母が拵(こしら)えてくれたそうだ。鈴の音が、厄を追い払うのと同じ理由。
後ろの正面にいる僕は、そのせいで君を捕まえられない。
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【ぐるぐる7-7】
彼の友人が、ミイラ男を連れて来た。
体中に巻いた包帯を、私の親友が解くと、その正体は彼だった。
小犬を抱く私に「大丈夫?」と聞く彼。
ぐるぐると、時計の針が逆回転する。
「恋してるの…あなたに」
「そうだったんだ。ありがとう」
そして再び、恋が始まった。
同じ人にも、何度でも。
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【ぐるぐる6-7】
可愛い小犬が、私の傷付いた心を癒してくれる。
そして、こんな私を好きだと言ってくれる人たちも優しさに、ねじれた思考が真っ直ぐに伸ばされていく。
この世界に男女は、あの人と私だけじゃない事実。
だから気持ちを明かそう。
あなたが好きでした。
それからまた、新しい恋をしよう。
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【ぐるぐる5-7】
突然だけど、目の前にいる女性に恋をした。
螺旋階段を駆け上がったかのような気持ちで、僕は告白をした。
「キャンキャン!」
「可愛い小犬…失恋した私を慰めてくれるの?」
もちろん。
もう誰にも君を触らせない。
だから君はもう二度と傷付かないよ。
今日からぼくが、君のナイトだ。
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【ぐるぐる4-7】
告白したけど、フラれたからもう恋なんてしない。
と嘆く親友に、魔法をかけた。
「来て、モテ期!」
魔法の杖をグルグルと回し、近くにいた男子学生からサラリーマンからやんちゃ坊主からオスの小犬まで、みんな彼女に一目惚れ。
でもうっかり、彼女の恋に傷ついた心を治してなかった。
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【ぐるぐる3-7】
友人が包帯でぐるぐる巻きになっている。まるでミイラだ。
どうしてこうなった?と、俺は尋ねると、
「故意のがんじがらめから、恋を感じてるんだ」
と答える。
もう少し詳しく聞くと、女子から告白されたけど、気付かなかったらしい。だから彼女の苦しんだ想いを、体感しているそうだ。
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【ぐるぐる2-7】
彼女は何か、苦しんでいるように見えた。
「大丈夫?」
青くなったり赤くなったりする顔が心配で、僕は毎日話しかけた。
ある時、ずっと無言だった彼女が初めて口を開く。
「恋してるの」
そうだったんだ。じゃあ、そう言ってくれれば良かったのに。
大丈夫、僕が相談に乗るよ。
お相手は?
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【ぐるぐる1-7】
頭を抱えてる。
この感情はなんだろう。胸が苦しくて、吐き気がする。
何度も捨てて、それでも何度も見付けてしまう。
恋。
来い、無心。
無神経な言葉を吐いて、苦しめてしまう前に。
心に抱えた、ぐるぐるとした想いを、あの人にだけは明かせない。
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【靴の話1…サンダル】
死んだ人は靴を履かない。
死んだら足が無くなるから、それとも幽霊がカツカツと足音を立てると怖いからなのか。
玄関に残った祖父のサンダルに、僕は問う。
するとサンダルは答える。
「あっちの世界は土足厳禁なんで、わっちらは行けないんすよ」
そういう事だったんだ。
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【君が好き】
肌を合わせることが日常的になってしまい、愛の言葉を与えずに過ごしてしまった。
普遍的な日常が不変であると思い込んで見逃した、小さな小さな変化から、肌を合わせることも視線を絡めることもなくした僕たち。
でも、この声がまだ届くなら。
「君が好き」と、届け君に。
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【滅ぼす価値】
誰かに選んでもらえることで、私は私の価値を知る。
でもその価値は私を知る人から得られるもので、私を知らない人から得られることのない閉ざされた世界に通用する価値だ。
それでもいい。
私に価値がないと判定する世界になんて存続する価値もない。
(#世界もう滅ぼしたい協会 に提供)
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【テスト】
テストなんて無くてもいいのに、と君は言う。
テストというのは、僕なりの言葉で言えば、他己による自己評価なんだ。自分で良いと思ったところが、本当に良いのか。ただの自分満足ではないのか。そういうのは、自分に問い続けても答えが出ないからね。
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【梅雨空の詩】
ベランダの大きな窓から見える灰色の空。
ガラスについた水滴がツゥーっと流れて、まるでアミダくじのように右へ左へ小さな滝を作るのを、君は飽きもせずに見上げている。
時々それに指を滑らせ、バンバンと叩いて、何かを発見して満面の笑みでこちらを見て。
君は雨の日も楽しそうだ。
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【流砂の女神】
砂漠で水筒を落としてしまった。
それは転がり落ちてすり鉢状の流砂に飲み込まれる。するとそこから女神が現れた。
「あなたが落としたのは、金の水筒ですか?銀の水筒ですか?」
「普通の水筒です」
正直に言うと、容器が金になった水筒を渡してくれたが、中身は水ではなく水銀だった。
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【量り売り】
田舎のコンビニでバイトをしてると、時々シカがやってくる。
「いらっしゃいませー」
「マルメン1つ」
「410円です」
「支払いはモモで」
カウンターに置かれた血の滴る大きな肉塊を、レジ横にある専用の量りで計測する。
「はい、ちょうどいただきます。ありがとうございましたー」
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【雨傘の行方2】
人に渡したものは返って来ない。
だから一方的に与えた気持ちでいると、楽なんだ。見返りなんて求めない。
「先生、この前はありがとうございました」
しっかり畳まれた蝙蝠傘と飴。
彼女にとっては何気ない普通の行為なのだろう。でも僕の乾いていた心にそれは、じんわりと浸み渡った。
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【雨傘の行方1】
午後は止んでいたから、教室に傘を忘れてしまった。
塾が終わって外に出ると、また雨が降り出していた。
「梅雨入りしたばかりなんだから」
隣でパッと開く、蝙蝠傘。
「受験生だし、気を抜いて風邪ひくなよ」
教室では厳しい先生なんだけど、雨の日はしっとり優しかった。
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【消灯と点灯】
電気を消したり点けたりするように、プライベートと仕事、家と外、睡眠と起床をうまく切り替えられたらいいのに。
そう嘆いてぼくに甘えてくる彼女。
僕の前ではそのスイッチ、消してるのかな?それとも点けてるの?
(書き出し拝借→@ns_akg12様より)
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【梅雨の切れ間に】
梅雨の切れ間に、会いに来てください、と書かれた手紙の差出人は妻の父親だ。
ぼくと妻を引き合わせ結婚させてくれたが、その後別居させれたので苦手意識があるけど、悪い人ではない。
何光年も続けてきた勤労の成果が報われたと思って、今度晴れたら天の川を渡り、妻と義父に会いに行こう。
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