140字(twnovel) No.1


■Log ; 2013年3月・4月・5月(No.01〜18)

5月〜
18.新しい惑星/17.フクロウとカゲロウ/16.水平線/15.境界線/14.むくれる

4月〜13.焼肉/12.不安/11.タイタニック/10.歌詠み/09.無題/08.白/07.いえ、偶然です/06.羨望

3月〜05.紫/04.鮒/03.写真/02.手/01.長靴


【新しい惑星】
新しい惑星が生まれた。
そこは私たちの惑星より環境が良く食べ物もたくさんある。
そこへ移住するべく、先住民と交渉した。
ノストラダムスという名の男に私たちの意向を伝えたが、どういうわけか『人類が滅ぼされる』と吹聴された。
まあ、それでもいいけど。
(書き出し拝借…@hyuugahikage様より)


【フクロウとカゲロウ】
フクロウとカゲロウは仲の良い兄弟でした。
ある日カゲロウは、家の中の子ども時代の写真を見て、自分だけ風切羽がないことに気付きました。
しかし兄のフクロウは「お前にはお前の羽が生えている」言いました。
空を飛ぶカゲロウの、七色に輝く薄羽が川面でキラキラ輝いていました。


【水平線】
初めて見た流氷は、水平線の彼方にあった。140度の視界が空と海と陸に分けられて、層が綺麗に分かれたカクテルのように美しい。
僕は手持ちのカメラで撮影したが、現像すると青写真の真ん中に白い線しか写っていない。この目にはしっかり焼き付いているのに。


【境界線】
何でも分かりあうなんて、あなたと1つになるなんて無理なのよ。
そう言った君は、僕の手と合わせて、唇を重ねる。皮膚という境界線で区切られてわかる、君の手が冷たいとか、唇は温かいとか。
明確な違いがある方が、寂しくないと思うことも、あるのかもしれない。


【むくれる】
今年の元旦に寿司でノロにかかり、病院送りになった。
それから半年経って、もう大丈夫だろうと思い寿司を食べたら、ノロでは無いが胃腸炎になった。
そこで僕は、自分の胃腸に問い掛けた。
「生はダメですか?」
胃腸「出してもいいなら」と、浮腫れる彼ら。
返す言葉が見つからない。


【13.焼肉】
「焼肉が食べようよ」と彼女は僕に言った。それはつまり肉食系女子をアピールをしつつ、食後は僕が君をいただきますしてご馳走さまをして良いよという、メッセージがこめられているのだろうか。
なんて考えすぎていたら、肉が焦げた。クラスのみんなで食べる焼肉も、美味しいね!



【12.不安】
キモチがバクハツする。
なにがイイで、ワルイかわかんない。
ただ、イヤだ!
イヤだ、イヤだ!
わあああん!
コトバがわからない。
そう、このコトバをしらない、もどかしい。
ママ、これはなんていうの?
ボクをだっこして。
このイヤなキモチがなくなるまで、はなれないで!


【11.タイタニック】
二人乗りのボートの上で、彼女にタイタニックごっこを強要された。
こんな木製の小さなボートに二人とも立ち上がり、片側の先端に寄れば、沈没はしなくとも転覆するかもしれない。
「池に落ちたらデートが台無しになるよ」
「だから私はいい終わり方だと思ったの」


【10.歌詠み】
それはまるで平安時代の歌詠みのようだった。
小川のように、言葉が上から下へと流れていく。
馴染みの歌人も初顔の歌人も、皆が同じ小川を見て、それぞれの感性で編んだ言葉をそこへ置く。
すると誰かがそれを掬って、新たな言葉を足して詠むと、またその小川にそっと流していった。


【09.無題】
これだ!これを書きたかったのだ!と思って書き上げた小説には、題名が無い。
しかし題名は作品の顔である。どんなに素晴らしい中身であっても、見た目が真っ白なものに興味を持つ人がいるのだろうか。
さんざん悩んだ末に、題名をようやく付けた
「無題」


【08.白】
雪解けが進んだ矢先、季節外れの大雪が降った。ふっくらと膨らんだ蕾の上に、今朝は花と同じ色の雪が積もっていた。この白い息が見えなくなる頃には、こぶしの花の甘い香りを、胸いっぱい吸えるだろうか。


【07.いえ、偶然です】
食パンを食べながら走っていた君と交差点の角でぶつかって、運命的な出会いだと一瞬思った僕だったけど。
「もしかして、これは運命ですか!?」
と先に言われてしまうと、途端に気持ちが冷めて冷静に突っ込んでしまった僕。


【06.羨望】
「私にぴったりの歌がある」と君は言うけれど、その歌詞にあてはまる人物は君だけじゃない。
君の好きなあの真っ直ぐな白い雲も、君に見せるために飛行機が作ったものじゃない。虹も晴天も、綺麗に咲いた桜の花もね。
どんな物からも幸せを吸収できる君が、羨ましいよ。 


【05.紫】
夕焼けは赤いものだとずっと思っていたが、その日は紫色だった。
しかし窓から見える景色に違和感を覚えたのは、なぜか私だけだ。
ほんの数分の、ささいな非日常。
今この空の下に飛び込みたい、初めて見る光の景色をもっと見たいと、私の心だけがざわついていた。


【04.鮒】
川で釣った鮒を、家で飼っていた金魚の水槽に入れた。
鮒は翌日死んだ。
それから何年も生きて、鮒くらい大きくなっていた金魚たちも次々に死んだ。
私は鮒も金魚も同じ魚だと思っていた。
「金魚たちのお友達のつもりだったんだね」
と慰める父に、ごめんなさいが言えずに泣いた。


【03.写真】
仏間の押入に、祖父母の若かりし頃から孫の成人後までのアルバムが保管されていた。一枚ずつ見る余裕は無く、半世紀分を早送りするよう事務的にめくり、一番綺麗に写っている祖母の写真を探す。悲しみや懐かしさに浸るには、もっと時間の余裕が必要だった。


【02.手】ずっとカサカサして固いと思っていた母の手は、久しぶりに触るとふんわり柔らかく、ひんやり冷たかった。
病院のベッドの上で痛みから解放されて安らかに眠る母から、私は静かに離れる。
ずっと私に与えてくれた母の時間を、もう一秒たりとも奪いたくなかった。


【01.長靴】
生まれて初めて長靴を履いた日を、僕は覚えていない。
思い出せるのは、小学生の僕が深い泥水に何度も入り、長靴を内側まで浸水させて怒られた事。
あの日から長靴を濡らすのは外側だけにするよう気をつけているが、上手くいかない。還暦を過ぎた父の靴下も、まだ濡れている。

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