小説2 | ナノ


  うずもれたシーツを掴んで


 一瞬頭の中が白んで意識を飛ばしていた。
 後ろからの突き上げに現実に戻されて、反動でベッドのシーツに顔を擦りながらぼんやりと目を開いた。浅い呼吸で空気をなんとか肺に取り込む。
――ここ…どこだっけ……。
 木目の床に簡素な家具が目に写る。体が熱い頭も熱くてぼんやりとする。後肛が熱く太い塊を咥えこみ快楽を拾っている。それなのに俺にはわからないことがあった。
――意識を飛ばした時に場所も誰に抱かれてるかも忘れたみたいだ。
 最悪なことに前後の記憶が途切れている。そして記憶をまとめようとしても纏められず熱に散らされていく。相手が分からないまま揺さぶられ嬌声が喉を震わせている。相手がわからないまま抱かれるのは嫌だった。ぐっと首を少しだけ捻った。そしたら、短い赤髪が視界の端で揺れていた。
――ああ、そうだった俺……。ここはマスルールさんの……。
 目が合えば獣のように情欲に淀んだ瞳に射抜かれて背筋が震えた。俺と目が合ったからか大きな手が腰を抱え直したのがわかった。
 崩れ落ちていた膝を立ち直さられ、高く尻を上げさせられる。それ以上後ろを振り向いている余裕は俺にはなかった。抱え直されたと同時に容赦なく剛直が内側を抉り、半開きになった口からはひきりなしに嬌声が漏れる。熱くて熱すぎて気持ち良いのか苦しいのかもわからない。
 快楽が過ぎて苦しくて嫌だと喚いたかもしれない。
 マスルールさんの名前も呼んだかもしれない。
 でも、返ってくるのは獣ような息遣い熱い律動、四肢を捕らえられ相手の望むままに貪られ、身体は熱を上げ浅ましく善がっていく。何度熱を注がれても何度果てても狂宴は終わりを見せない。


 最後に目をさましたのはベッドの上だった。身体は鉛のように重く指一つ動かすことすら億劫だ。思考は……あの最中に比べればましだけれどやはり鈍い。そのお陰で一つ見落とした。

 隣に誰が寝ているかを。
 知らず身体を起こして全身に走った痛みに悲鳴が上がる。それは隣に眠っている獣を起こすには充分だった。

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