小説2 | ナノ


  勇気のミチシルベ


【アテンション!!!!】

・実話ネタです。
・アリババ→ジャーファルの描写がメインです。片思い話です。
・シンジャの描写が含まれますが、大体はアリババ→ジャーファルの描写です。

・ジャファアリ好きの方には絶対に読むことをお勧めしません。
・ジャファアリ好きの方には絶対に読むことをお勧めしません。
(逆にジャファアリ好きの人が読んだらセーフかアウトか教えて欲しいっす)

大事なことだから二回言いました。
とても、大事なことです。

・そして、繰り返し言いますが実話ネタです。会話もほぼ一緒な感じです。
・そして、あなたの地雷話である可能性は高いです。苦情は受け付けないので、覚悟して読んで下さい。
・でも、よくよく読み返してみると笑える話なんじゃないだろうかって思えてきた。むしろ、笑って。


以上が大丈夫な方は次にお進みください。











 あの人は、とてもすごい人だった。
 仕事ができるだけじゃない。細かい気配りもできて、何よりその心遣いが俺にはすごく嬉しかった。
 いつからか尊敬が憧れに変わって、その後ろ姿を見ている内に気付いたら視線が追いかけるようになって。

 これは恋慕だ。でも、俺は臆病だったから――何を話したらいいかわからなかったから、声をかけることがなかなかできなかった。

 あの人は俺がアラジン達と気まずくなった後もずっと俺のことを気にかけてくれて、それがどれだけ俺の支えになったことか。感謝の言葉は何度言っても足りないくらいだと思う。でも、俺も――とうとうシンドリアを旅立つことになった。もしも戻ってくることができなかったらと思うと、居てもたってもいられなかった。
 決意はできた。後はどんな結果になろうとも、言った方が心残りはなくなる。気持ちを伝えないまま別れてもやもやするのは嫌だった。
 旅立つ一週間前だった。俺はとうとうジャーファルさんを呼び止めて告白した。

 うまく言えたかはわからない。必死だったし、どもっていたかもしれない。
 商売の時はうまく回る舌もこの時ばかりは顔も真っ赤にして、頭は真っ白で――でも、ちゃんと気持ちは伝わったと思う。顔を上げれば、驚いたように目を丸くするジャーファルさんが目の前にいた。
 驚きながらも、少し時間を下さい。ちゃんと真剣に、考えさせて下さい。そうジャーファルさんは言ってくれた。その日は、そのまま別れた。
――時間を下さいって――。期待してもいいのかな?
 すぐに振られると覚悟していた手前、意外だった相手の行動に俺は驚いていた。少し期待してもいいのかも――そんな思考すら浮かんでくる。
 そして旅立つ三日前、日が傾きかけた頃だった。
 アラジン達に隠れて続けていた荷物の準備も大体終わっていた。俺はジャーファルに声をかけられた。
「アリババ君。今夜……夕食を一緒にたべませんか」
 突然の申し出だった。あれから何も動きが無かったから、いっそこのまま返事も貰わずに旅立つのかもしれない。恋心は伝えられて、このままその結果が自然消滅する結果。それでもいいかもしれない。とすら思っていたのに。
「は、はいっ。……お願いします」
 日が落ちた後、宮殿の外で待ち合わせということになった。
 緊張しながらその場所に向かっていたけれど、これからどう話をしたらいいかなんて全く頭に浮かばない。その時間にその場所に着くと、ジャーファルさんが先に待っていた。
「それでは、行きましょうか」
 服は彼が一着しか持っていないと言われている私服だった。見たこともなかった姿にちょっと驚きながら、先を歩いていくジャーファルさんの後をついていく。
 連れて行ってもらったのは市街地の中にある小さな居酒屋の一つだった。
「ここの料理は美味しいと聞いているんですよ」
 個室がある小さなお店だった。ちゃんと一つ一つの部屋が扉で閉じられていて、静かに話をすることができる。多分、そんなお店だから今日ジャーファルさんは選んでくれたんだろう。
 席についてジャーファルさんは一言、言った。
「先に、本題に入りましょうか」
 ぎくり、と自分の体が震えたことがわかってしまう。
「あの……先に話しちゃうんですか……?」
「……ええ。こうゆうことは先にはっきりさせた方がいいと、思うので」
 席について飲み物とお通しが運ばれて――、閉じられた静かな空間でジャーファルさんはゆっくりと口を開いた。
「最初に、言うんですけれど。ごめんなさい。貴方と付き合うことはできません。でも、アリババ君には本当に感謝しているんです」
「…………そう、ですか。……あ、いや! ジャーファルさんはそんなに気にしなくていいんですよっ! 俺振られるかもーって思っていたんですから!!」
 目元に涙が滲みそうになるのをこらえながらなんとか笑顔を繕う。うまく笑えているだろうか、そんなことを考えながら。
「アリババ君……」
「ほんっとーに気にしなくていいんですって! はははは……その、やっぱり、好き、な人とか……いるんです、か?」
「……はい。そのことに関しては、本当にアリババ君に感謝しているんです」
「……感謝?」
「はい。これも……本当にアリババ君に申し訳ないって思うのですが、貴方が私に告白してくれたことで、私も勇気をもらえたんです。それで――」
 一度言葉をジャーファルさんはきった。その瞬間に、言おうか言わまいか悩んでいる、僅かな躊躇がみてとれた。
「それで、私はその人に告白できたんです。それで……付き合うことになりました」
 その言葉の意味を飲み込むまで、ちゃんと理解するまで、感謝の意味、それをよくよく噛みしめて。うん、時間がかかった。
――なんて……言えばいいんだろうな。
 皮肉にも程があるだろ。自分が好きな人が、俺が告白したから、誰かに告白したなんて――。それで、しかも付き合うことになったなんて……。
「貴方が私に告白してくれたことで、その……勇気をもらえました」
「その…………」
「相手はシン、です。貴方も知っているシンドバッドです。ずっと、好きでした」
――俺、今ちゃんと笑えているのかな。
「そう、ですか。…シンドバッドさん、なんですね」
 振り返って思い出せばよく話していて近くにいる姿。遠くから見ている時に主従以上の感情を持っていることにも、もしかしたら俺は気付いていたのかもしれない。それくらい、密接な関係だったから。
「ジャーファルさん、シンドバッドさんとすごく近くにいますもんね。良く話しているのも見かけますし、なんだか……まぁ納得です!!」
 好きな人の幸せを願うなら、喜ばないと。それでジャーファルさんは幸せなんだから。
「………………………」
「………………………」
「…………もー! ジャーファルさんが先に本題入っちゃったから、気まずくなっちゃって会話が続かないじゃないですかー!」
「……すみません」
「いいからご飯食べましょうよー! それにシンドリアのこととかアラジン達のこととか聞きたいんで色々と教えて下さいよ!!」
「はい、わかりました。……そうですね、何から話しましょうか」
 一緒に席につきながら、会話はしているけれど、後で思い返しても何を話していたかなんて――俺はあまり思い出せない。きっと、今ちょっとぎくしゃくしてしまっているアラジン達のことを聞いていたんだと思う。





 最後まで涙はちゃんとこらえた。別れて緑斜塔の帰路について、ほっと息をつく。潤んでいたかもしれねーけど、絶対流さなかった。頬は濡れてない。よかったんだ。よかったんだこれで。
 どうせ振られるかもって思ってたんだから。
――あ――でも……。
 なんだよこれって叫びたい。なんだよ、この皮肉。この展開。
 俺が告白したから、ジャーファルさんがシンドバッドさんと付き合うことになった?? 俺が告白しなかったら、ジャーファルさんはシンドバッドさんと付き合うことにならなかったの??
 こんなのってありかよ。なけなしの勇気を振り絞って、気持ちぶつけて……。
 確かに俺だって気持ちの区切りはついたかもしれねぇよ。でも、わかんねぇよ。どうしたらこーなっちまうの?
 俺にはジャーファルさんは届かない人だったんだ。立ち場も違うし、頻繁に言葉をかわせたわけじゃない。いつも遠くから憧れて見ているだけだった。惹かれているだけで、行動に移せなかった。
 もっと距離が近かったらこうならなかったのかも……? でもそんなこと今更考えたって仕方がない。思い返せばジャーファルさんの気持ちが見えてたんだって思えて、もうどうすればいいのかもわからない。
 色々と頭の中で憶測や妄想が飛び交うけれど、現実はどうあがいたって変わりゃしない。わかってる。わかっている、わかっているんだよ……っ!
「あ――――っ!!! くそっ!!!!」
 夜中だって言うのに、小声でも言わずにはいられなかった。むしゃくしゃして仕方がなかった。どうすればいいかもわからない。



 気持ちも持て余しながら自室に向かう途中、思わず足が止まって理由もなく俺は空を仰いだ。

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