小説2 | ナノ


  雪の女王


 白く雪が積もっていく。この土地にもようやく冬の季節が来たのだ。
 土地に足を踏み入れわずかに感じた気配に玉艶はその美しい相貌をすっと細めた。
「……ふふふ。どうやら運命は私に微笑んだのね」
 ここではないけれど、この近くのどこかに小さく感じる気配。同じ精霊のモノ。けれども、それは今この土地に足を踏み入れた玉艶達、雪の精霊とは異なり確実に炎の息吹を宿していた。
 玉艶が笑えば周囲に雪が舞う。
――ああ、いけないいけない。このままでは殺してしまうわ。
 感じている火の精霊は弱っている。寒気に包まれればその灯火は消えてしまうだろう。しかし、それでは手を回した意味がない。せっっかく火の王の血筋をこの手中に収める機会が舞い込んだのだ。血筋とソレが持つ力を手にいれる為に、計画は慎重に進めなければならない。予言はそれとなく語られているのだから。
「母上、どうされたのですか?」
 後ろから付いてきていた白龍が大きな青い瞳を丸くして上機嫌な母親を見上げて首をかしげる。何も知らない純粋な子供。そう、予言では白龍が連れてくるのだ。緋色の涙を流す子供を。
「白龍はこの土地に来るのは何度目かしら」
「まだ三度目だったと思います。でも、一度目と二度目はあまり記憶がありません」
「そう。それじゃあきっと楽しい発見が色々とあると思うわ。私達はまだやることがあるから行けないけれど、白龍は先に野や街をかけてみてきてはどうかしら」
「いいのですか!?」
「ええ。さぁ、行ってらっしゃい」
――そして、運命の子供と出会うのよ。
 玉艶が微笑むと嬉しそうに白龍は頷いて走り出した。
 その背中を満足そうに送り出して玉艶は手元に水晶を取り出して覗き
こんだ。その水晶には大地を駆けて行く白龍の姿が映っていた。
「全てはアジェンダのままに」
 きっと白龍は運命の子供と出会うだろう。
 同じ種族の精霊に疎まれ取り残された王の血筋と。



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