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  メリークリスマス


 空気が澄んでいてすごく暗い空だ。
 都心に行けばイルミネーションがさぞかし綺麗なんでしょうね。
 知ってますか? この日はセックスする人が一番多い日だって。
 あなたもきっとそんな思いを胸に出掛けたんでしょうね。だって今日は貴方が彼女を作って初めて迎えたクリスマスだ。

 彼女、どうしているんでしょうねぇ?
 あなたのケータイ。さっきから鳴りっぱなしだ。
 メールも来てますね。ああ、ラインもですか。既読がついているのに一向に返事しない貴方をどう思うでしょうね?
『仕事が忙しい? だから返事できないのかな? でも一言くらい返してくれても』
 そんなこと、思っているかも知れませんね。彼女の下に、今日あなたが行かないことも知らないで。
 まさか共通の知り合いに捕まって縛られて転がされているなんて思いもしないでしょうね。
「ン゛ーッ!!ン゛ーッ!」
 何か言いたいことがありそうですね。どうしてこんなことを? とでもですか?
 心配しなくていいですよ。
 ここには誰も来ませんから。
 誰もあなたを助けには来ないですが、それはあなたのあられもない姿を見られないで済むということです。
 どうして俺がこんなことをするのか? 理由はきっと言った所で理解はえられないでしょうね……。気が向いたら、教えて差し上げますよ。
 ほうら、こうしている内に薬が効いてきたみたいですね……。
 どうしたんですか、アリババ殿。そんなに身体を震わせて……、ああ、触られるだけで気持ちイイんですね。縛られて車に押し込められて押し倒されて良いようにされているっていうのに、アンタは気持ちイイんですね……。アンタが淫乱で嬉しいですよ。
 安心して下さい。まだ夜は始まったばかりですから。
 ゆっくりと愉しみましょう? もっと気持ち善くなりましょう??
 そうすればきっと今頃寒くて寂しくて震えている彼女のことも沢山のしがらみも何もかも忘れてしまいますよ。


 ああ、なんて素敵なクリスマスだろう。
 俺は全てを失ったと思っていた。何もかもこの日に失うのだと。
 でも違った。
 全てを手にいれられるんだ。全てを奪って踏みにじってぐちゃぐちゃにして。
 こんな快楽が他にあるだろうか。
 届かないと諦めていた全てが今はこの手の内にある。


 素敵な顔ですよ、アリババ殿。今まで見たどの表情よりもいやらしくて官能的で男を惹きつけてやまない……、ほらもっと感じて下さい。もっと乱れて下さい。
 存分に乱れて気持ち善くなったらその猿ぐつわを取って差し上げます。
 そうしたら今度は声を聞かせて下さいね……。
 俺はあなたの全てを憎んでいる。そして、愛している。
 あなたの全てをさらけ出して見せて下さい。
 あなたの全てが欲しい。
 あなたは最高の……プレゼントですよ…、アリババ殿。

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