闇に消える B


微グロ、少々流血、小エロ注意










「悪ぃな、鍵壊しちまって」
まだ怯えている奈々に向かって申し訳ない気持ちで一杯になる。最近情緒不安定気味の奈々にとっては鍵を壊して賊に侵入されたような気分なのだろう。
「心配だから、やっぱ俺、今日泊まってくわ」
幸い鍵穴が甘くなっただけだからまだロックすることは出来る。明日変えてやらないとな。度重なるトラブルで俺は自分で交換できるようになっていた。
替えの錠にスペアキーは二つ付いているが、奈々は二個とも渡さないと承知しない。俺は密かに合鍵を作るかどうか毎回悩んでいた。というのも、もし奈々がそれを知ったら、一生俺のことは信用してくれない気がしたからだった。
「奈々を驚かせちまったもんな…ごめんな」
小鳥のように震える奈々が愛しくて堪らず抱きしめようとすると、身を引いて俺の腕から逃れようとした。そこまで嫌がられているのかと思うと切なくて、俺は唇を噛みしめた。
「俺だって本当はこんな手荒なこと、したくなかったんだぞ」
奈々の瞳が俺の言葉の真偽を確かめるかのように俺を突き刺す。
「なあ、奈々はそんなに俺のことが嫌なのか?」
奈々が目を伏せる。長い睫毛が揺れている。こんなときの奈々はどんなに俺が懇願しても何も話してはくれない。
「なあ…奈々、何かいってくれよ」
奈々が顔を上げ俺の瞳をじっと見つめる。楽しかった頃の思い出が走馬灯のように脳裏を流れていく。こみ上げる想いに俺は抗えない。
「奈々っ…!」
堪らず俺は奈々の肩を掴むとそのまま床に押し倒して馬乗りになる。奈々の震える瞳が扇情的で、芯から沸き立つ熱が身体中を駆け巡った。俺の中で何かがぷつりと切れた。

俺の可愛い奈々。
誰よりも愛しいのに。

なのに俺は奈々から全力で拒否されている。自分で自分を嘲ると自然に笑みがもれた。
俺は目の前の白い首筋に唇を落として強く吸い上げる。間違いなく痕が残るだろうが構いやしない。奈々が目を閉じ俺の仕打ちにじっと堪えているから、俺の中の被虐心がむくむくと頭をもたげる。俺は奈々の肌に歯をたてた。滲み出す人肌の温もりある液体を舐め取ると奈々の短い吐息が聞こえた。
「悪ぃ、興奮しちまって…つい…」
焦点の合わない目で俺を見つめる奈々は、獣欲を一層刺激する。身体中を駆け抜けた熱が一点に集中する。知らず知らずのうちに笑みがこぼれていた。

俺は奈々が可愛い。
誰よりも大切に思っている。奈々がそう思っていなくても。
例え二度とその腕が俺の背に回されることがなくても。
「だから奈々は俺の傍にいりゃいいんだ」
俺は誰に言う訳でもなく呟いた。

「大事にしてやる」

俺は抵抗も何もしない奈々を抱え上げベッドまで連れていくと、そっと寝かせてやった。奈々から邪魔な服を剥ぎ取ると俺は奈々の華奢な身体にのしかかる。
先程とは打って変わって優しく唇を落としてやる。触れる奈々の身体は冷んやりとして心地よかった。


---了---

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