それはちょっとした興味本位だった。
某SNSサイトで「童貞殺すセーター」と話題になっている、背中が大きく開いた妖艶なセーター。それが洗面所の棚の奥から出てきたのだ。
普段は使わない棚から出てきたので、おそらく隠していたのだろう。それなのに、どうして見つけてしまったのかと言えば、いつもの棚にタオルがなかったから。背伸びをしながら、上の段へ手を伸ばしたら落ちてきた。
そのうち着させるつもりだったのだろうか。
何故隠してあったのかは謎だが、こういう服は彼も好きそうだ。
タオルで頭を拭いた後、すぐ脱ぐつもりで着てみる。ちょっとした好奇心で、特に深い意味はない。
タートルネックのセーターから、袖と後ろ身頃だけざっくり切り抜いた感じのデザインで、背中がスースーする。お風呂上がりで下着を身に付けていないせいもあるが、これではお尻が隠れきらない。首の後ろからは長めのリボンが垂れ下がっており、それはさながらプレゼントのようだ。
女の子が着てたら確かにムラムラするだろうな、なんて思いながら服を脱ぐ。――――はずだった。
「純〜、いつまでお風呂に入っ……て……、じゅん?」
「ち、違っ……これは!」
ノックも無しに突然入ってきた正和に、慌てて否定し、前と後ろを隠すように手をあてる。どうにか言い訳しようと口を開いたが、言葉に詰まり何も言えない。
彼も動揺していた様子だが、一足先に余裕を取り戻して、ニヤリと笑う。
「そんなヤラシイの着て……誘ってるの?」
「いや、その……た、棚から落ちてきたから……!」
「だからって着ないよね、普通」
俺の全身を舐めるように見た後、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「つ、ついったーで……話題になってたから、つい」
「……ツイッターなんかやってたの?」
「っ……」
しまった……!
正和に知られて困るような呟きはしてないが、やっていると言うこと自体が、面倒なことになりそうだ。
「ふーん……」
「や、あの……皆やってるからやってるだけで……」
「まあ、いいや。それは後で教えて」
「ま、正和さ……ひゃあっ!」
後ろに回った彼を不思議に思い、名を呼んで振り返る。すると、はみ出たお尻をむにゅーっと揉んできて。思わず出た変な声を隠すように、慌てて口を押さえた。
「ねえ、なんでパンツもはいてないの?」
「だって、ぁ……お風呂、入ったから、っ」
双丘の割れ目から指を忍ばせ、蕾をツーッとなぞられて、体が跳ねる。逃げようともがくが、腰に回された手はビクともしない。
「やらしー。このまま入っちゃいそうだね」
「何が……!」
「何って……ナニが? 分かってるくせに〜」
彼は臀部を撫で回した後、垂れ下がったリボンをめくり上げ、背中をそろりと撫でる。ゾクゾクッとして背を仰け反らせれば、その背中にチュッとキスが落とされた。そのままベロリと舐められて小さく喘ぐ。 正和の手つきも煽るような厭らしい触り方へと変わり、否が応でも欲情させられる。
「ぁっ……はぁ、ぅ……」
「……純って本当変態だよね」
「俺は、変態なんかじゃ……あっ、あ」
彼は脇からするりと両手を忍ばせて、平らな胸を鷲掴みにし、大きく数回揉んだ。人差し指の先で乳首をクニクニと捏ね回されて、腰がビクビク跳ねる。
「やらしい格好して、息もこんなに荒くして……変態でしょ」
「はぁ、ぅ……それ、やっ……だめ、っ」
胸の尖端を指先でカリカリされると、電気が走ったようにビリリと快感が伝い、下腹部に熱が溜まる。爪の先で引っ掛けてピンッと弾くようにされれば、蕾の奥がキュンとひくついて、腰が揺れるのを抑えられない。
「んっ、はぁっ……あうう……」
背中を下から上へねっとり舐め上げられて、甘い吐息を零す。彼はしばらく乳首を弄った後、右手だけ服から抜いた。ひと息ついたのも束の間、自身を握られて軽く扱かれる。
「あっぁ、やっ……正和、さっ」
「ちょっと胸いじっただけで、こんなヌルヌルにしちゃったの?」
揶揄うような口調で意地悪げにそう言って、鈴口を指先でグリグリする。左手も流れるような動作で下方へ移動させ、自身をそっと握られる。
「ふっ……あっぁ、んっ」
先走りで濡れた先端を、握っている方とは反対の手のひらで包むように優しく触れる。いつもとは違う動きに、期待と不安が入り混じり体が強張った。直後、彼は手のひらで捏ねるように動かし刺激する。ぬるぬるに濡れそぼった先端を、くるくると捏ね回されると、手の窪みや、指の付け根の膨らみ、少し硬い関節が無作為に当たって、快感が全身を駆け巡る。
「ふっ……あっぁ、だめっ、だめ、……ん゛ーーっ!」
体中に電気が走ったみたいにゾクゾクして、気持ち良くて、おかしくなりそうだ。ビクビク震えて、「嫌だ、嫌だ」と首を振るのに、彼が聞き入れてくれる気配はない。
「あっぁ、あっ、あっ」
先端を捏ね回しながら、器用に指で裏すじを刺激され、頭の中が真っ白になる。膝がカクンと折れて、彼の背にもたれかかれば、先端を弄る手に一層熱が込められた。
「あっぁ、あぁ゛、っ! も、ゆるし……ひっ、あぁ」
びくん、びくん、と全身を揺らして絶頂を迎え、ようやく手が止められる。
「ドライでイったの?」
彼はクスッと笑って、もたれ掛かるなと言わんばかりに、足でクイッと体を押してくる。
「純。ちゃんと立って」
「はぁっ、ぁっ、ぁ」
絶頂の余韻で体はビクビクと揺れ、目の前はチカチカする。うまく力が入らなくて、彼の背にもたれ掛かったまま動けない。
「じゅーん」
ガクガク震える足を軽くはたかれるが、敏感になった体は、それさえ快感だと認識して、ゾクリと震えた。
やっとのことで自分の足で体を支えれば、耳にふーっと息を吹きかけられて肩を揺らす。そのまま、耳朶をなぞるようにして舌がちゅるりと入ってきて。感じやすくて弱い耳を犯すように責められれば、腰の力が抜けて、自力で立つのは難しい。
そのうえ、自身を握る手が再び動き出し、先端を重点的に責めらて、淡々と快楽の波にのまれていく。
「あっぁ、やっ、こねこね、しないでぇ! あううっ、っ」
はっ、はっ、と浅い呼吸を繰り返し、意味もなく口をパクパクさせる。やめさせようと掴んでいた彼の腕に爪を立て、背を仰け反らせた。
「ふふ、可愛い。……やめてほしい?」
コクコクと頷いて、必死に懇願する。行き過ぎた快感は、苦痛でしかない。
「はっ、やめ、くださっ……あぁああん」
「なぁに? よく聞こえなかった。もっと?」
「違っ、う……も、やっ、やだぁ……っ、ん、ん゛ーーっ」
ニチャニチャと厭らしい水音を響かせながら、先端を捏ね回し、鈴口をグリグリされれば、堪える事なんてできなかった。欲望を爆ぜさせて、体を大きく震わせる。
「まって、待っ、あぁっ、イってる、からぁ」
絶頂を迎えても尚、弄り続ける正和。次第に意識が霞んできて、頭の中は快感でぐちゃぐちゃになる。
「やっ、あっぁぁ」
鈴口から透明な液体が勢いよく出て、洗面所の床を濡らした。頭の天辺まで突き抜けるような快感に立っていられなくなり、膝から崩れ落ちる。彼が支えてくれていたから、ぶつける事はなかったものの、床にへたり込んだまま動けない。
体に力が入らなくて、指一本動かすのも億劫だった。
「あーあ。床びしょびしょ」
「はぁっ、はぁ……ごめっな、さい……っ」
「潮吹きしちゃうくらい良かった?」
荒い呼吸を繰り返す俺の顔を覗き込んで、頬をするりと撫でた。いまだに、びくん、びくん、と体を震わせる俺は、それさえ快感だと認識して下腹部に熱を溜める。
「ふふ、可愛い。おいで」
そう言って俺のことを抱き上げる。再び浴室に連れて行かれ、力の抜けきった俺を容赦なく責め立てたのは言うまでもない。
«Back