「ん……」


シエルはゆっくりと目を開けた

地割れに落ちてからどのくらいの時間が経ったのか

そんな事を考える前に、自分が今寝ている場所の冷たさに飛び起きた


「えっ…何ここ?」


冷たい石畳。牢屋のような部屋。シエルの知らない場所だった


「…………」

「…………」


男性2人の話し声が聞こえた。その声は徐々に近付いてくる


「だから、お前が一緒に来なくても相手は女の子なんだろう?」

「何度も同じ事を言わせないで下さい。女の子とは言え、突然現れたんですよ? 危険では無いと言い切れません」

「武器を持っていなかったんだろう。大丈夫じゃないか」

「…貴方はどれほど楽観的な思考をしているんですか」


話し声の主達は、シエルの居る部屋の前で足を止めた

茶髪で眼鏡の青い軍服のような服を来ている男性と金髪でラフな格好をした男性が、部屋の中に入りシエルをジッと見る


「君か、突然軍本部のジェイドの部屋に現れたのは」


金髪の男性はシエルに言う
何の事だが、さっぱり分からない

シエルは先程まで森の中に居たのだから


「こちらの質問に答えて下さい。貴女に拒否権はありません」

「…分かった。で、何が聞きたいの?」


この状況に拒否権があるとは思わない

軍服の男性の視線が、圧力を掛ける


「貴女の名前は?」

「シエル・トラルディ」

「所属は?」

「…妖精の尻尾」

「フェアリー…テイル?」

「聞いた事が無いな」


妖精の尻尾の名前を知らないなんて、とシエルは首を傾げた


「妖精の尻尾を知らないなんて、此処はフィオーレじゃないの?」

外国なら知らない可能性もある。そう思って聞いたのだが、男性たちの表情は先程と変わらない


「フィオーレ、とは?」


軍服の男性が聞く

いくら外国でもフィオーレの名前も知らないのだろうか


「フィオーレ王国。あたし達のギルドがある国なんだけど」

「…聞いた事のない国名ですね」

「…は?」


シエルは目を丸くした
いくら外国でも酷いと思う
「なあ、フェアリーテイルってのは何なんだ?」


金髪の男性が尋ねる

今更その話題に戻るのか


「魔導士ギルドよ」

「魔導士と言うのは?」

「…魔法を使える人、かな」


魔導士も知らないのか、そんな事を考えながら簡単に答えた


「魔法? 譜術ではなく?」

「ふじゅつって何?」


シエルの質問に2人の男性は互いに顔を見合わせた

ここでは一般常識なのだろうか


「…貴女もその魔法とやらを使えるんですか?」

「使えるわよ。あたしも魔導士だから」

「見せてもらっても?」

「良いけど…」


シエルは掌に風の渦を作ってみせた

いきなり攻撃魔法を見せて敵意があると思われたくない


「…それが魔法ですか?」

「地味だな」


男性たちは思っていたのとは違う、という様子でシエルの右手を見つめている


「…派手な方が良かった?」


派手、と言えば攻撃魔法しか無いのだが


「出来るんですか?」

「馬鹿にしないで」


軽い挑発に乗った。シエルはそう思いながら右手に風を纏った

一番始めに覚えた魔法。それを見せる為に


「そこ退かないと怪我するわよ?」


一応攻撃魔法なので、男性たちに忠告する。怪我をさせて文句を言われるのは嫌だ

男性2人は素直に横に避けた


「行けぇ!」


シエルは風の斬撃を壁に向かって飛ばした

いつもより、威力を弱めて飛ばした筈だったのが。部屋の扉と壁、風は隣の部屋まで到達した


「うわぁぁぁ!!」


男性の悲鳴が、隣の部屋から聞こえた

シエルと男性たちは、その部屋へ足を踏み入れた


「これは…」


そこには、真っ二つに割れた机だったモノと腕を押さえている軍服の男性、破れた紙と今も舞っている紙

何が起きたのか、シエルは察してしまった

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