シーブル村から岬まで、何とかシングがソーマを使い魔物を退治しながら辿り着いた

ヒスイはソーマに慣れていないシングに疑いの目を向けていたのを、ルベラは気付いていた

けれど、何も言わず何もせずにただ3人の後を追った


「ここがソーマを奉った祠だよ。でも、扉は思念術で封印されているんだ」


シングは祠を示しながらコハクとヒスイに言った
コハクは頷くと祠に近付く


「“大丈夫”……って“彼女”が言ってる」

「彼女…?」


ルベラの呟きに気付かなかったのか、祠に近付いたコハクは目を閉じる

祠が光り、扉が開いた。そこにはアンクレット型ソーマ・エルロンドがあった


「アンクレット……これって女用のソーマなのか?」

「うん、オレの死んだ母さんの……たったひとつの形見なんだ」


ヒスイがエルロンドを手に取る。シングが頷いて答えた


「そっか、きみのお母さんもソーマ使いで…もう亡くなっちゃってるんだね」


コハクがヒスイからエルロンドを取ると握り締めた


「きみのお母さんもって事は、貴方達の母親も?」

「ああ、俺らがガキの頃にな」


ルベラの問にヒスイは頷く
少しは記憶があるのだろう


「わたし達の母もソーマ使いだったらしいんだけど、形見のソーマは、今どこにあるのか分からないんだ…」

「そう…なんだ…」


シングは一瞬表情を暗くするが、すぐに笑顔を見せる


「でも、オレは寂しくないんだ。優しい姉ちゃんと、やたらうるさいジィちゃんがいるからね! きっと、コハクも同じだろ?」

「あははは、うん! わたしも、全然寂しくないよ。超〜〜変なお兄ちゃんがいるから!」


シングとコハクがお互いに笑う
ヒスイは複雑そうな表情で2人を見つめていた


「複雑そうね」

「当たり前だ!」


ヒスイはルベラに怒鳴るとシングとコハクの間に割って入った


「なごんでる場合じゃねぇだろーが!? さっさと、このソーマを借りるか奪うかしねーと……」


コハクはヒスイに思い切り蹴りを入れた


「“奪う”って何よ、お兄ちゃん!? 助けてもらってるのに!」


ルベラが見ただけで2回目の蹴り
ヒスイは苦しそうに蹲った

ルベラは溜め息を吐いた


「…っ、ああっ!」


気配を感じ振り向いた時はもう遅かった

思念術が直撃したのだ


「きゃあぁぁぁっ!」


膝を付いたルベラの横で今度はコハクに思念術が直撃した


「姉ちゃん! コハクっ!」


コハクはその場に倒れた

ルベラは思念術を放ったであろう人物を睨んだ


「心配するな、殺しはしない。アレの“眠り”を覚ますまでは……な」


そこにいた赤紫のローブを着た女性がいた

ルベラは荒い呼吸のまま女性を睨み続けた


「お前、姉ちゃんとコハクに何をしたッ!?」

「待ってシング!」


シングはソーマを解放すると女性へと走って行った

剣を女性へと振り下ろす。女性は簡単にそれを避けて後退した


「ほう、ソーマ…か」


女性はシングに話を続ける

ルベラは立ち上がろうと必死で身体を動かしていた


「…その形状、見覚えがあるぞ。オマエ、ゼクスの血縁者…か?」


女性はアステリアを見つめて静かに聞いた。ルベラはその様子を見つめる


「だったらなんだ!」

「別に。オマエを殺して生きているならゼクスも殺す。それだけ……だ」


女性は思念術の展開を始める


「シング!」

「あ…!?」

「ぐわぁぁっ!!」


女性の思念術はシングではなく、ゼクスに当たった

ゼクスがシングを突き飛ばして庇ったのだった


「ゼクスか? 老いたな。だが喜べ。もうこれ以上老いる事は……ない」


女性は倒れたゼクスに足を乗せた

そして再び思念術を展開させる


「やめ……ろ……お前……オレのジィちゃんに……何しやがんだぁぁーーーッ!!」


シングが叫ぶと異様な気配に包まれた

女性やゼクス、ルベラにはそれが分かった

シングは女性に向かって走り出した


「ダメ! シング!」


ルベラは無理矢理立ち上がるとシングに向かって走った

ベルト型ソーマ・ローレルを解放し、シングと女性の間に入り2人を止めた


「……っ、姉ちゃん!?」

「早くおじいちゃんを連れて逃げて」


ルベラはシングに叫ぶ

シングは戸惑うようにルベラを見つめる


「ソッコーで逃げんぞ!!」


コハクを背負ったヒスイがシングに言う


「私は後から行くから!」

「う、うん!」


シングはゼクスを背負うと、ヒスイと共に走って行った


「その身体で動けるとは……ワタシと戦うつもりか」

「貴女とやり合うつもりなんか無い」


ルベラは素早く女性から離れると思念術を展開させた


「……っ」


発動した思念術は眩しい光で、女性の視界からルベラが外れた

ルベラはその瞬間に走り出し、シング達の後を追った

ゼクスとコハク、そしてシングの無事を祈りながら



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