「あれは、ギルガリム。さっきも言ったけど、世界を喰らう魔物なんだ。もっと正確に言えば、世界を喰らう世界…名はギルガリム」
「オイラの世界ヤウンもニアタの世界パスカも、アイツに喰われたんだ」
添えるようにモルモも言う。予想通りに全員が驚いた表情だ
「世界が世界を喰らう!? そんな事ってあるの?」
口を開いたのはリフィルだった。信じられないのも当然だろう
「オイラも信じられなかったさ。けど…ヤウンは喰われたんだ。僅かな世界樹を残して全て!!」
「モルモは、残された時間の中で、僕の世界…テレジアに助けを求めに来た。僕が生まれたとき、テレジアは半分以上が喰われていた」
フィオは静かに話を続ける
「ギルガリムは…再生する為にマナが欲しかったんだ。世界が生まれ変わる為に、他の世界のマナを糧にしていた」
「ギルガリムも世界というなら…その世界にも…?」
今度はフィリアが聞く。聞きたい事は山ほどあるだろう
「いたよ。ギルガリムのディセンダーが。ユーリとエステルは会った事あるよ。サンゴの森で」
「あいつが…?」
「そうだったんです?」
ユーリとエステルはその時を思い出したのだろう
何の説明も聞いていなかった、あの戦いの事を
「そう。ギルガリムのディセンダー、ウィダーシン。僕は彼を倒して、ギルガリムに取り込まれていたマナを宙(そら)へと還した」
「それから、世界は生まれ変わった。我々の世界、パスカはテレジアのディセンダーと我らがディセンダーのお陰でより良い世界へと変われたのだ」
ニアタは少し嬉しそうに言う。彼女を思い出しているのだろう
「この世界に来たとき、マナを感じて不思議に思ったんだ。パスカのマナに似ている、テレジアやヤウンのマナにも少しだけ感じる、そしてギルガリムのマナも少し感じるって」
フィオは一度言葉を止め、右手を握り締めた
「それは、僕が宙(そら)に還したマナが、お互いに混じりあってしまったから…。ギルガリムは完全に消滅していなかった。他の世界のマナに混じる事で生き残っていたんだ」
完全に消滅させられなかった事。それは自分の詰めが甘かったからだろう
「僕がこの世界に呼ばれたのは、ギルガリムを消し去る力を持っているから」
「エリーじゃ消せないの?」
ギルガリムの話に怯えているのか、両隣にいるイリアとスパーダに“聞けよ”という目で見られているからか、ルカは怯えている
「…無理だと思う。ギルガリムのマナも含めて、グラニデのマナだから。だから…僕じゃないと出来ない。そう判断したから、グラニデの世界樹は僕を呼んだんだよ」
「あたし、何も出来ないの?」
手伝えないのか、という意味だろう。しかし、エリーには大仕事が残っている
「ウィダーシンやギルガリムに対しては、ね。でもエリーには、ゲーデを助けるっていう大きな役目がある。あいつらの事は、気にしなくていいよ」
フィオはエリーに笑って返事をした
あれは自分がやらなければならない事だから
「大体の話は分かりました。残り2つの課題に対してどう対処するか、作戦会議です!」
チャットが意気込んで言うと、ハロルドは装置を片付け始めた
そして、全員船内へと戻って行った
フィオとモルモは、ギルガリムを暫く見つめていた