穢れ流しの場は、何もない広い場所だった
以前は、セルシウスが居た場所
その中央に、フィオはアンテナを置いた
「カノンノ、大丈夫?」
「こんな負を自分の中に宿して、ゲーデは苦しかったんだよ…」
カノンノは小さい声で続ける
「色んな負が、いっぺんに押し寄せて…。でも、どうしていいか分からなかったんだ。だから、何かにぶつけるしかなくて。でも、それが…悪循環を生んでるんだ……」
エリーの力で、負は浄化出来る。しかし、今のカノンノを包んでいるのは、カノンノ自身の負だけではない。だから、どうする事も出来ない
「ゲーデは、世界中の負を1人で背負っていた。次々と生まれる負…、生み出す人間を憎む事で、自分を保っているんだ…」
今のフィオには、誰かを憎む事で自分の存在意義を確かめているゲーデの気持ちが少し分かる気がした
「憎む事で自分を保つなんて…間違ってる」
エリーがポツリと言う
問題となっている負も、ゲーデも、この世界の一部なのだ
「あたしは…ゲーデを助けてあげたい」
救う事が、彼女が生まれた理由なのだろう
「私も…この負も…変わりたい…」
カノンノがそう呟いた瞬間、カノンノの身体が光に包まれた
エリーが負を浄化する時と同じような光
「これは、マナ!? 負が、マナに変わった…!」
セルシウスは驚く
負自身も変わりたいと望んでいるのだと、カノンノは言う
「今まで穢れ流しで流されていた負も、きっと世界樹の中でマナに生まれ変わっていたのかもしれないね」
「世界樹って凄いんだね。たくさんの負を一身に受けて…。あんなにも身がちぎられそうな負を抱えながら、絶対に拒まない。全て受け入れてくれているんだ」
光が収まり、カノンノの身にはマナが溢れている
「世界樹は、私達がいつか、負と向き合って越えていくのを、信じてくれているんだ」
「世界は…人を見捨てたりしない。最後まで、人を信じてるんだ。僕たちディセンダーも…信じているように」
「そうだね。あたしも…負と同じようにゲーデも変われるって信じてる」
エリーは、此処にいないゲーデに向けて、そう言った。フィオも、同じ事を思った