自分が呼ばれた理由が、はっきりした

この世界をテレジアのように喰われる事なく、彼を倒す

フィオはそう決意した


「……」


獄門洞で再開した彼女は、この世界に受け継がれた記憶

本人ではないが、彼女と話せた事は素直に嬉しかった


「きゃっ」


突然、甲板に悲鳴が響いた

コレットだ
転んだ拍子に干そうとしていた洗濯物を落としてしまったようだ


「大丈夫?」

「えへへ。やっちゃった」


コレットは笑いながら起き上がる

一緒にいたナナリーとパニールも、いつもの事とは言え、心配そうにしている


「こりゃ、洗濯し直しだね」

「ごめんね、ナナリー」

「良いって。パニール、干すのは任せて良いかい?」

「ええ。フィオさんもいますし、直ぐに終わりますよ」


にっこりと笑顔を向けるパニールに、フィオは頷くしかなかった



「すいませ〜ん」


洗濯物を干していると、荷物が届いた

差出人はアニスの両親だ


「また美味しいお野菜を送って来てくださったんですね」

「パニール、今回は何にする?」

「そうですねぇ。野菜嫌いの皆さんでも、食べられるお料理にしましょうか」


パニールはちらりとコレットを見た

コレットを始め、野菜嫌いなメンバーは少なくない


「ただいま〜」


元気なアニスの声が聞こえた。エリーやルーク達もその後ろに居る
モルモはしっかりとティアに抱かれている


「お帰りなさい、アニスさん。ご両親から、またお野菜が届いてますよ」


パニールは来たばかりの荷物を指差した
アニスは表情を若干曇らせた


「これで、美味しいラタトゥイユパイを作りますね」

「…うん、お願い」


アニスは笑顔を作って頷いた

パニールの促しで、アニス達はホールへと入って行った


「ねぇ、フィオ」

「どうしたの、エリー?」


何処か遠慮気味のエリーに、フィオは首を傾げた


「フィオは家族ってどういうのか分かる?」


エリーがどういう意図で聞いているのか、フィオにはわからない
フィオは少し考えて口を開いた


「前にパニールに僕とモルモは兄弟でしょって言われたんだ。モルモは僕が生まれてから、ずっと一緒に居てくれた。だから、兄弟ってこんな感じなのかなって程度しか分からないよ」

「そっか…」

「でも、アドリビトムの皆みたいに一緒に過ごしてる人は家族って言って良いんじゃないかな」

「そうだよね。うん、ありがとう」


フィオ自身もよく理解していない事だが、エリーは納得したように頷いた


「…モルモがフィオのお兄ちゃんなら、フィオはあたしのお兄ちゃんだね」

「そう…なるのかな」

「あたしが生まれてから、2人とも居てくれたから…2人はあたしにとってのお兄ちゃんって事じゃないの?」

「そういう事、かな。やっぱりよく分からないな」


ディセンダーである自分にとって、分からない感情はまだまだ多くあると、フィオは実感した



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