フィオは黄泉の門への道を1人で戻っていた
ルビアがニアタが居なくなった事に気付いた為、フィオが探しに戻って来たのだ
「黄泉の門まで戻って来たけど……ニアタ?」
黄泉の門の前に浮かんでいるニアタを見つけた
フィオはそれに近寄ると声を掛けようと思った
「………っ」
フィオは足を止めた。ニアタの向こう側に、見慣れた…懐かしい少女の姿があった
「…カノンノ…?」
フィオは目を見開いた
この世界に来る前まで当たり前のように傍に居てくれた、ニアタの世界─パスカのディセンダー・カノンノ
彼女が今、目の前にいる
「フィオ…、久しぶりだね」
「カノンノ…」
フィオはゆっくりとカノンノに近付いた
海のような場所に立っているカノンノは、動かない
「やっぱり、この世界に来てくれていたんだ」
「やっぱり? じゃあ、僕やモルモを呼んだのは…カノンノなの?」
フィオの問いにカノンノは首を横に振った
「ううん、違う。フィオは気付いてるでしょ? この世界がパスカの子どもだって」
「それはニアタに聞いたよ。この時代にパスカも…テレジアもヤウンも無いって」
フィオはニアタを見た。ニアタは何も言わずに、ただ浮いている
「ねぇ、フィオ。パスカが生まれ変わった時に、私が言った事、覚えてる?」
「え?」
「テレジアのマナが少しだけ混じってるって」
カノンノの表情が変わる。そういえば、あの時もいとおしくマナを抱き締めていた
「そっか…。だからグラニデにもテレジアのマナを感じるのか」
「それだけじゃ無かったの」
「どういう事?」
「パスカのマナに混じっていたのは、テレジアのマナだけじゃなかったの」
「まさか…」
フィオはそれを考えたくなかった。だが、もうそれ以外に考えられる事がない
「…僕のせいで、ギルガリムのマナが、パスカのマナに混じってしまったんだね。それで、グラニデにも現れた…」
「でもフィオには、ギルガリムに対抗出来る力がある。ギルガリムが完全に目覚めれば、この世界は喰い尽くされるわ。フィオ、この世界も、パスカのように救ってあげて」
カノンノは優しく微笑む。フィオには、それが辛かった
「でも、僕は…」
「頼んだから…ね、フィオ」
「カノンノ!」
カノンノの姿が揺らぎ、少しずつ、カノンノが消えていく
「カノンノ!」
咄嗟に伸ばした手は、カノンノに……届かなかった