獄門洞を歩くフィオは隣を浮遊するニアタに目を向けた
今回の仕事は、獄門洞の奥にある黄泉の門にアンテナを設置する事
何故自分にアンテナ設置の仕事が回って来るのか、フィオには分からなかった
「今回もモルモとは別行動なんだな」
フィオの前を歩いていたカイウスが、ふと尋ねた
そういえば、最近一緒に仕事をしていない
「今日は…ティア達と一緒にアニスを迎えに行ったんだ」
フィオは思い出す
カノンノが見つけたアニスの居場所に行くから、モルモも一緒にどうかとティアが声を掛けて来た
フィオも一緒に、ではなくモルモも一緒に、な辺りはティアらしい
珍しくモルモがOKした為、今日はティア達と行ってしまったのだ
「それにしても、門ばっかりね」
ルビアがため息混じりに言った
「本当に門と呼べるのは1つだけだと、セルシウスが言っていた」
「それが異界へと通ずる、黄泉の門。なんですね」
ヴェイグが答えると、フィリアが納得したように頷いた
「黄泉の門、か…」
「どうしたの、ニアタ?」
「いや、何でもない」
考え込んでいる様子のニアタに、フィオはそれ以上言えなかった
*****
真っ直ぐ道なりに進むと、そこに辿り着いた
「なんだ、ここ」
「どうして、洞穴の中に夕陽があるの?」
カイウスとルビアが呟く
大きな門の奥に、夕焼けのようなオレンジ色が広がっている
「あれは異界…か? あそこが、死者の魂が還る場所…なのか」
ヴェイグがポツリと呟く
「あれは…なんでしょうか?」
フィリアが門の下に現れたモノに気がついた
「穢れか…」
ヴェイグが剣を構える
戦うしか、彼らを負から救う事は出来ない
フィオとカイウスもヴェイグに続いた
背後では、フィリアとルビアが詠唱を始める
「崩龍衝裂破!」
「魔皇刃!」
「時雨散花!」
3人の攻撃が魔物に当たるが、効いている様子はない
「ガァッ!」
魔物の術─ネガティブゲイトが発動するが、フィオ達はそれを避ける
「フレアトーネード!」
「インブレイスエンド!」
フィリアとルビアの術により、魔物は姿を消した
その場所に、アンテナを設置する
彼らのような負を、産み出さない為に
「戻るぞ」
来た道を帰るヴェイグに全員が続いた