フィオは走っていた

トライライト・モスの生息地で彼の気配を感じた
それを確かめる為に


「…ギルガリム」


フィオが辿り着いた場所には再びギルガリムが居た

もう一度消す為に近付く


「!!」


突然、剣が飛んで来る
フィオは慌ててそれを避けた


「避けるとは流石だな」


剣を操っていた人物は姿を現した
フィオはその人物を睨んだ


「ウィダーシン…」

「またギルガリムを消すか? 己のマナを消費してまで」


また、とは先程の事だろう
フィオは頷いた


「ああ。それが、僕の役目だから」


例え自分のマナを使い果たす事になっても、それがこの世界に呼ばれた意味なら


「そうか」


ウィダーシンは構える

背後の剣がフィオに向かって飛んで来る


「くっ…」


フィオは剣で受け止める。フィオがウィダーシンの方を見るとそこにウィダーシンは居なかった


「遅い!」

「!?」


ウィダーシンはフィオの後ろに居た
フィオが後ろを見る頃には、ウィダーシンは剣をフィオに振り下ろしていた

「うわっ…」


ギルガリムを消す為に予想以上にマナを消費していたのか、フィオは簡単に飛ばされた


「この程度か? テレジアのディセンダーよ」

「まだまだっ!」


フィオはウィダーシンに向かって行く

だが、あっさりと弾き返された

マナを消費し過ぎた
フィオはそう感じていた


「そろそろ止めを刺してやろう」


ウィダーシンはフィオの足元に数本の剣を出現させた

フィオは動きが鈍くなっている為か、それを避ける事が出来なかった


「うわっ!」



剣が直撃したフィオは地面へと叩き落とされた


「くっ…」

「これで終わりだ!」


ウィダーシンはもう一度手をかざした

動けないフィオは、ただそれを見つめていた


「フィオー!」


ウィダーシンの背後でモルモの声が聞こえた。ユーリとエステルもいる


「…な、んで…」


何故ここに来たのか
フィオはそれを聞きたかったが、うまく声が出なかった

モルモは思いきりウィダーシンを睨んだ


「何でお前が此処にいる!?」

「…ヤウンのディセンダーか。貴様もこの世界に来ていたとは」

「オイラの質問に答えろ!」


モルモは叫ぶが、ウィダーシンは答えない
ユーリ達は武器を構えた


「いいだろう、相手をしてやる」


ウィダーシンは動けないフィオに背を向けて、モルモ達を見た
そして、詠唱を始める

「させるかよ」


ユーリは詠唱を止める為にウィダーシンに向かって走った。エステルは補助魔法を唱えた


「メテオスウォーム!」


ウィダーシンの術が発動する

術はユーリとエステルに直撃したが、2人はかろうじて耐えたようだった

フィオはその間に何とか立ち上がると、剣を握り直してウィダーシンに振り下ろした


「なにっ!?」


フィオに気付かなかったウィダーシンは、背後からフィオに切られた


「はぁっ…はぁ…」


立っている事が精一杯なフィオは、息が荒いままウィダーシンを睨んだ


「やってくれたな。テレジアのディセンダーよ」

「……」


ウィダーシンはフィオを見る
モルモ達も動けないのか、フィオ達を見つめていた


「グアァァァー」

「!?」


突然、ギルガリムが活動を始めた
全員の視線がギルガリムへ行く

ウィダーシンはギルガリムに近付いた


「貴様ら全員、我がギルガリムの贄にしてくれる!」


ウィダーシンがそう言うと、ギルガリムは再び動き始めた

フィオはギルガリムから皆を守るように前に出る。そして、両手をかざした


「フィオ!!」


モルモが叫ぶ

言いたい事は分かっているつもりだ
先程も力を使ったのに、また使うのか

それでも、今ここにいる皆を守りたい
フィオはその思いで力を使った


「なっ…」


フィオが光に包まれた後、ギルガリムは消えていた

そして、ウィダーシンの姿もなかった

フィオはそれを確認すると、その場に倒れてしまった





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