フィオは久しぶりに依頼を受ける為に機関室へと向かった

フィオ自身は気が向かなかったが、モルモが無理矢理行かせたのだ


「ディセンダー!?」


機関室に入るとチャットの声が響いた


「どうしたの?」


モルモが尋ねるとエリーは依頼人らしき少女を指差す


「あの子…アニーがディセンダーを探して欲しいって言ったの」

「ディセンダーって、あのおとぎ話のディセンダー?」


いつの間に来ていたのだろうか。カノンノが驚いた声を上げた


「おとぎ話の勇者でしたら、ボク達ではお役に立てませんよ」


チャットは折角の依頼なのに、と肩を落とした
フィオもモルモも苦笑いをする

そのおとぎ話の勇者が自分達だなんて、言い出せない


「でも、ガレットに住まう精霊が、ディセンダーの出現を察知していました。それで、そのディセンダーを連れてくるように命じられたんです」


茶髪の少女─アニーはチャットをじっと見る
チャットは困惑した表情でどうしようかと悩む


「ねえ、アニー。ガレットの精霊に会えないかな?」


フィオはアニーに頼む

精霊に会えば、色々と分かるかもしれない


「そうね。精霊に直接話を聞いて、その情報を元にディセンダーを探すなら、依頼として成立するんじゃないかしら」


リフィルが提案すると、チャットが大きく頷いた


「それなら構いませんよ」

「では、わたしがガレットまでご案内します」


チャットの了承を得ると、アニーは嬉しそうに笑った




*****

「結構寒いね…」


ガレット村へ行くために、ガレット森林区へ来たフィオ達

雪と氷で覆われている為に、エリーが腕を擦りながら呟いた


「他所から来た人にはそう感じるかもしれませんね」


アニーはお腹を出しているにも関わらず、平気そうだった


「もう少し厚着してきた方が良かったかな?」


カノンノが自分達の格好を見て言った
モルモはジッとアニーを見つめる


「…な、何ですか?」

「い、いや…。アニーは平気なのかなって思って…」

「わたしはここが地元ですから、慣れてます」

「慣れって凄いね…」


モルモは呆れたようにフィオにくっついた


「ねぇ、アニー」

「何ですか、フィオさん」

「どうして精霊はディセンダーが現れた事が分かったの?」


皆が気になっていたであろう事をフィオは聞いた


「それは……」

「アニー!」


アニーが説明をしようと口を開いた瞬間、アニーは名前を呼ばれた

前方を見ると赤い髪の少年─マオと黒豹の男性─ユージーンが立っていた


「アニー、戻ってきたのか!」


ユージーンが心配していたという風に言った
アニーは二人に駆け寄り、これまでの経緯を説明した


「そっか。あのさ、アニー」


言いにくそうにマオが切り出した
アニーは首を傾げる


「セルシウスの様子が急におかしくなっちゃって、クレアを氷漬けにしちゃったんだ」

「えっ?」

「話もすっかり通じなくなってネ…。ヴェイグはセルシウスを追って一人で行っちゃった」


マオはその様子を思い出しているのか、暗い表情となる


「恐らく、セルシウスも負の影響を受けたのだろう。村も魔物が溢れ、もう人が住める場所ではなくなった」

「そんな…」


ユージーンの言葉にアニーは驚いた

自分がいない間に、そんな事になっていたなんて


「とりあえずは村人を避難させるのが先だ。今はその誘導中でな」


ユージーンは歩いている村人達に目をやった


「あの…この先に船があります。そこまで村人を連れて行けますか?」


エリーが話す

きっとバンエルティア号は待機してくれている筈だから


「船…?」

「僕達のギルドです。安全だし、きっと協力してくれます」


補足するようにフィオが言う

ユージーンは感謝する、と頭を下げた


「わたし達はこのままセルシウスの元へ行きます」

「気をつけてネ」


そう言うと、マオとユージーンは村人の後に続いて歩いて行った


「………」

「アニー、早くセルシウスの所へ行こう」

「そうですね」


カノンノに促され、アニーは歩き始めた
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